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「異常な高値」電力ショックで消費者悲鳴 「市場連動型」のデメリット直撃、事業者も苦慮「数千万円の赤字」

   日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格の高騰により、「市場連動プラン」と呼ばれる電気料金プランを契約する消費者から悲鳴が相次いでいる。

   契約件数は80万件にのぼるといわれ、関連事業者は相談窓口の設置や救済措置に乗り出している。

  • 消費者、事業者ともに大打撃
    消費者、事業者ともに大打撃
  • 消費者、事業者ともに大打撃
  • 20年12月~21年1月上旬の市場価格の推移(ハチドリ電力公式サイトより)

「例年と比べて約10倍近い異常な高値」

   大手電力会社で作る「電気事業連合会」は2021年1月10日、全国的な寒さや、悪天候による太陽光発電などの発電量低下を背景に、電力需給がひっ迫していると発表した。「1月8日には、西日本を中心に全国7エリアで最大需要が 10 年に1度程度と想定される規模を上回りました」と報告し、節電を呼びかけている。

   梶山弘志経済産業相は12日の記者会見で、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)の在庫不足も、電力不足の要因との見方を示している。

   そのあおりを受けたのが、電気料金が市場価格に応じて変動する「市場連動型プラン」を契約する消費者だ。

   同プランは、いわゆる「新電力」と呼ばれる、電力小売り自由化以降の新規参入事業者を中心に提供される。発電所を持たない場合、JEPXから電力調達するケースが多い。電力比較サイトを運営するエネチェンジは、市場連動型プランの契約件数は80万件にのぼると試算している。

   JEPXでのスポット価格は12月後半から高騰を続け、「12月中旬まで10円/kWh前後であった電力卸売価格が、年末から急高騰しここ数日(1/8時点)では100円/kWh前後となっております。つまり、電気の取引価格が先月や例年と比べて約10倍近い異常な高値になっている状況です」(電力サービス「ハチドリ電気」を提供するボーダレス・ジャパン)

   市場連動型プランではJEPXでの価格高騰が末端価格にも転嫁されるため、SNS上では契約者とみられる人からの阿鼻叫喚が広がっている。

数千万円の赤字を見込む

   市場連動型プランを販売する電力事業者は対応に追われている。

   「自然電力のでんき」を提供する自然電力グループは、12月26日~1月末までの事業運営費(人件費などの諸経費)を請求しないと発表し、1月~2月の請求については「お住まいの地域の大手電力会社の電気料金を基準として、それを超える分の電気料金につきまして、30,000円を上限として電気料金より値引きさせていただきます」とした。

   エルピオ電気のエルピオは、「弊社市場連動プラン申込時に、高騰リスクもご許容いただいて、お申込みをいただいておりますが、今回お客様のデメリットが大きいことから、(1/12-3/31のお申し出に限り)市場連動プランから他のプランへ、緊急のプラン変更を受付させていただきます」との対応を取る。

   ボーダレス・ジャパンは12月26日~2月28日の期間、「お住まいの地域の大手電力会社(東京電力など)の従来プランを基準とし、それを超える電気料金分はすべてハチドリ電力が負担いたします」とした。同社は負担により、数千万円の赤字を見込んでいるという。3月以降は、市場価格の高騰でも消費者への影響が少ないプランの展開を検討している。

   テラエナジーでんきのテラエネルギーは「皆さまのご負担を少しでも軽減できるよう、協力各社との調整を進めています」と自社努力を約束するとともに、「可能な範囲で節電にご協力をいただけますと、少しでも電気代をおさえることにつながります」と節電への協力を呼びかけている。

   電力事業各社は上記の対応により、経営の悪化が懸念される。太陽光発電事業などを手がけるLooopは8日、事業譲渡や事業継続などを検討する新電力向けの相談窓口を設置した。

   エネチェンジも12日、同様の窓口の設置を発表した。併せて、市場連動型プランの解約などを考えている消費者の相談窓口を設置した。

   同社の電力比較サイト上では当面の間、市場連動型プランの契約をできなくする。広報担当者によれば、消費者保護の観点からだとした。