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佐川急便のSGHD株価の行方 「採算重視」への期待と高値警戒感

   宅配便国内2位の佐川急便を傘下に置くSGホールディングス(HD)の株価は、2021年1月8日の終値で20年末に比べ5.6%(157円)高の2969円をつけた。この間の日経平均株価(2.5%高)やライバルのヤマトホールディングス(HD)(3.0%高)の上昇率を上回り、週明け12日はやや下げたが、20年12月21日以来の3000円台が視野に入る。もともとコロナ禍にあって巣ごもり需要を獲得し株価を上げていたが、改めて採算重視の姿勢などが評価されているようだ。

   SGHDの時価総額は21年1月8日時点で約1兆9000億円に上り、ヤマトHDの1兆円強の2倍近い水準にある。19年春にヤマトHDを追い抜いて以降、差を広げている格好で、その差を生み出しているのが「採算重視」だ。

  • 株価の動向に注目が集まる。
    株価の動向に注目が集まる。
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アマゾンめぐる対応の違い

   両社の2020年9月中間連結決算をみてみると、SGHDは売上高にあたる営業収益が前年同期比8.0%増の6348億円、営業利益は41.1%増の524億円、純利益は69.9%増の372億円だ。これに対しヤマトHDは営業収益が0.7%増の8060億円、営業利益は4.3倍の269億円、純損益は141億円の黒字(前年同期は34億円の赤字)で、売上高こそヤマトHDが上だが、利益の面ではSGHDの後塵を拝している。21年3月期の業績予想についてもSGHDの純利益が前期比42.7%増の675億円と過去最高を更新する見込みであるのに対し、ヤマトHDは56.8%増の350億円と2倍近い開きがある。

   「利益なき繁忙」の象徴とされ、日本経済新聞が人手不足などの現状をキャンペーン「宅配クライシス」で展開した宅配業界。佐川急便はその窮地を脱する手を打ってきている。大きな転換点となったのが、2013年のアマゾンとの取引解消だ。コストがかかるのに配達の価格を安く押さえ込まれる「アマゾン物流」から撤退。一方で、もともと法人顧客を多く抱える佐川は企業間物流により注力していった。ヤマトHDはアマゾン物流界にいなくなった佐川の受け皿となり、取り扱い個数は増えたものの「利益なき繁忙」の度を強めてしまったというのが大きな流れだ。その後ヤマトHDは取り扱い個数の総量を抑制する一方、送料を値上げし利益の出る体質への転換に努めたが、値上げが顧客離れを生むなど新たな問題にも直面してきた。

荷物1個あたりの採算管理を徹底

   佐川はアマゾンとの取引解消を機に荷物1個あたりの採算管理を徹底し、利益を得ないままで取り扱い個数が増えないよう取引先と協議する体制をとっている。2021年1月5日夜、日経新聞電子版にSGHDの荒木秀夫社長のインタビューが掲載されたが、荒木社長は「巣ごもり需要が高まるなかでも採算重視の姿勢は継続する」と改めて強調しており、こうした点を投資家が買い材料としている可能性がある。

   ただ、株価については高値警戒感もある。野村証券が2020年12月に配信したリポートでは「宅配便取り扱い個数は増加基調でコスト管理力も高い点は評価できるがPER(株価が1株当たり純利益の何倍になっているかを示す指標)で見ると割安感に乏しく株式市場での評価はすでに高い」と指摘した。