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客席からヤジ続々と... マヂカルラブリー主催「寄席」が異例の大ヒット、専門家は「配信ライブの新たな可能性を示した」

   年明け早々の大ヒットに、お笑い界が沸いた。

   2020年のM-1グランプリ覇者・マヂカルラブリー(野田クリスタルさん、村上さん)は、21年1月1日にコンビ主催のお笑いライブを配信した。新型コロナウイルス対策のため無観客で行われたライブでは、客席の芸人がネタを披露する芸人に向けて「ヤジ」を飛ばし、その都度笑いが起きるという流れが発生。この様子がツイッター上のお笑い好きに刺さり、口コミで評判が広がっていった。

   野田さんのツイートによれば、チケットの売上は1万7000枚超。オンラインのお笑いライブとしては異例ともいえる数字で、野田さんも「(よしもとの)オンライン配信歴代売り上げ枚数1位となったそうです」と伝えている。

   お笑い評論家のラリー遠田さんは、J-CASTニュースの取材に「配信ライブの新たな可能性を示した」と語る。

  • 「マヂカルラブリーno寄席」が異例の大ヒット(野田クリスタルさんツイッターより)
    「マヂカルラブリーno寄席」が異例の大ヒット(野田クリスタルさんツイッターより)
  • 「マヂカルラブリーno寄席」が異例の大ヒット(野田クリスタルさんツイッターより)

野田クリスタル「ヤジを言い出したら、もう止まらなくなっちゃって」

「要はバズっているっていうことですね。大バズり」(野田クリスタルさん)
「楽しみですよ、これ。(チケットの売り上げが)何枚行くのか」(村上さん)

   M-1優勝後、多忙を極めていたマヂカルラブリーの2人は、2021年1月4日深夜放送のラジオ番組『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送、以下:ANN)で嬉しそうに振り返った。2人が語っていたのは、21年元日にヨシモト∞ホール(東京都渋谷区)から生配信されたお笑いライブ『マヂカルラブリーno寄席』(以下、寄席)だ。

   寄席に出演したのは、マヂカルラブリー、ランジャタイ(伊藤幸司さん、国崎和也さん)、ザ・ギース(高佐一慈さん、尾関高文さん)、脳みそ夫さん、モダンタイムス(としみつさん、川崎誠さん)、永野さんの6組(出演順)。賞レースの決勝進出者やバラエティーで活躍する実力派芸人たちが名を連ねたが、村上さんはANNで「元々、地下の地下の(舞台に居た)人たち」と評していた。

   「事件」が起こったのは、2組目のランジャタイが漫才を披露している最中だ。自身の出番を終え、客席で舞台を見届けていた野田さんが、なかなか「展開」を見せないランジャタイの漫才に対して「ヤジ」を飛ばした。すると、ほかの芸人もそれに呼応するようかのように「ヤジ」を飛ばしはじめ、観客がいない会場はいつしか大きな笑いに包まれていた。

   野田さんはANNで「『全然ヤジを入れていいんですよ』っていうノリで最初にヤジを言い出したら、もう止まらなくなっちゃって、みんな」と振り返る。客席の芸人から「ヤジ」が入って笑いが起きるという流れは、最後の永野さんまで続くこととなった。

日を追うごとにチケットが売れ...

   生配信終了後、この「ヤジまみれ」の寄席がツイッター上のお笑い好きの間で「腹筋が引き裂かれるかと思った」「芸人のガヤがあるとこんなに面白くなるんだ」と話題に。配信は当初1月3日まで視聴可能だったが、好評を受け1月10日まで期間が延長となった。

   野田さんは3日、自身のツイッターで「なんと7300枚も売れたそうです 面白かったらみんな見るという当たり前の事を思い知りました」とチケットの売れ行きに驚いていたが、4日には「10000枚突破したそうです もういくとこまでいってほしいです」、5日には「12000枚まで来たそうです。やば」と興奮気味に伝えた。

   そして7日には「14000枚を超えて(よしもとの)オンライン配信歴代売り上げ枚数1位となったそうです 伝説のライブとなりました」と報告。最終的には「17483枚売れた」(9日のツイート)とした。これは日本武道館の収容人数(1万4471人)をも上回る数だ。なお、チケットの価格は1枚960円(税込み)だった。

   異例とも言える「寄席」の大ヒット。著書『教養としての平成お笑い史』(19年、ディスカヴァー携書)などで知られるお笑い評論家のラリー遠田さんは6日、J-CASTニュースの取材に対し、ヒットの理由を以下のように分析した。

「単純にライブの内容が面白かったので、ネット上の口コミで評判が広がっていったのだと思います。もともとこのライブ配信を見ていた人が多かったのは、『M-1グランプリ』で優勝したばかりで注目度が高まっているマヂカルラブリーが主催するライブだったからでしょう。しかも、メンバーがランジャタイ、永野さん、脳みそ夫さん、モダンタイムスなど、『地下芸人』さのある芸人が多かったため、何が起こるかわからないという期待が大きかったのだと思います」

「出演者が人気者ばかりではなくても...」

   寄席の出演6組の中でもとりわけ注目を集めたのが、最初にヤジを飛ばされたランジャタイの漫才だ。ランジャタイは07年結成のコンビで、サンドウィッチマン(伊達みきおさん、富澤たけしさん)や永野さんらが在籍するグレープカンパニーに所属。17年と20年のM-1では準決勝に進出した「実力派」だ。

   ラリーさんによれば「ボケ担当の国崎和也さんの個人的な妄想をそのまま具現化したような奇抜な漫才」が特徴で、業界では「密かに注目されていた」というランジャタイ。今回の寄席では、その「奇抜な漫才」に客席の芸人から容赦なく「ヤジ」が入れられたことで、「面白さが倍増していたように見えた」とラリーさんは語る。ランジャタイの2人も4日、YouTubeチャンネルの配信で「本当にマヂラブさんのおかげ。奇跡のドミノが積み重なった」(国崎さん)「俺らなんか雑魚ですから」(伊藤さん)と、主催したマヂカルラブリーに対する感謝の思いを寄せた。

   2度目の緊急事態宣言が出されたことで、予定していたライブイベントの中止や延期が相次いでいる。無観客配信に切り替える動きも出ている中、ラリーさんは今回の「寄席」のヒットが与えたお笑い界へのインパクトについて、こう語った。

「ライブの内容が面白ければ、出演者が人気者ばかりではなくてもチケットは売れる、ということを証明したのではないかと思います。配信があるライブの場合、ライブ終了後にもチケットの販売が続いていることがあるため、ネット上での評判を見てからチケットを買ってライブを見ることもできます。配信ライブの新たな可能性を示したと言えるでしょう」