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SNSでバズっても「予約は数件」  Go To停止で集客策練ったのに...宿泊業者が明かす苦境

   西日本を中心に温泉旅館やホテルを展開する湯快リゾート(本社:京都市)は、春の旅行シーズンを前に、「湯桶」を使った巨大プリンを作れる学生向け宿泊プランの予約を開始した。

   宿泊プランはツイッターで話題を呼び、「なにこれ素敵!」「わたしも学生になる」など好意的な反応が広がっている。SNSで注目を集めたことで、予約件数にはどれだけの影響があったのか。湯快リゾートに聞いた。

  • 「湯桶プリン」作れる宿泊プランが話題も…(湯快リゾートのニュースリリースより)
    「湯桶プリン」作れる宿泊プランが話題も…(湯快リゾートのニュースリリースより)
  • 「湯桶プリン」作れる宿泊プランが話題も…(湯快リゾートのニュースリリースより)
  • 「湯桶プリン」にイチゴなどをデコレーションした様子(湯快リゾートのニュースリリースより)

「友達誘って行きたい」「放送大学入ってくる」

   湯快リゾートは2003年に設立。西日本エリアを中心に、これまであった旅館やホテルの施設を改装する手法で規模を拡大してきた。現在はバイキング方式を採用した低価格帯のホテルから、会席が楽しめる温泉旅館まで、幅広いタイプの宿泊施設を展開している。

   そんな同社が21年1月12日に発表した宿泊プランが「世界に一つだけ!湯桶ジャンボプリンをみんなでつくろうプラン」。その名の通り、宿泊者に「湯桶」に入った巨大プリンが提供されるというものだ。対象期間は2月1日~3月31日で、宿泊者全員が学生、かつ一室3名以上の利用が条件となる。グループの24旅館が対象で、料金は一泊一人あたり8780円から。

   1月21日には、ツイッター上でこの宿泊プランを紹介したユーザーの投稿が2万件以上リツイートされるなど話題に。情報を知ったユーザーからは「なにこれ素敵!」「学校の友達誘って行きたい」と好意的な反応が相次ぎ、社会人とみられるユーザーからは「学生じゃなくて悔しい」「ちょっと放送大学入ってくる」という意見も聞かれた。

   J-CASTニュースが1月22日、湯快リゾート担当者に話を聞くと、「湯桶プリン」は学生旅行シーズンを前に、「温泉らしさ」を打ち出したサービスとして考えたものだという。なお、巨大プリン自体は宿側があらかじめ別の容器で作り、それを湯桶に移し替えた状態で提供。宿泊者は湯桶に入ったプリンを皿の上でひっくり返したり、イチゴの盛りつけをしたりして楽しめるとのことだ。

春の旅行シーズン、予約は「例年の1割程度」

   SNS上で話題を呼び、人気に火がついたという商品やサービスは近年枚挙にいとまがない。今回の宿泊プランについて広報担当者は「話題になっているのは嬉しい」としつつ、こんな実情を口にした。

「実際の予約は数件です」

   プランは当初21年1月末までとされていたGoToトラベルキャンペーンが終わった後の宿泊需要を掘り起こす目的で検討していたものだという。そうした中で、GoToの全国一時停止延長や、2度目の緊急事態宣言に直面。春の学生旅行シーズンの予約は現時点で例年の1割程度になる見込みで、担当者は「すごく厳しい状況」だと語る。

   各施設では入館時の検温や受付の飛沫防止シートの設置、レストランの座席での仕切板の設置など「できる限りの感染対策」を実施しているという。しかし、これだけSNS上で「泊まりたい」という声が聞かれていても、時節柄、実際の予約には結びついていないのだと、苦悩を口にする。

   また、コロナの感染拡大に伴い、1月19日から31日まで、一部施設が臨時休館となっている。今後の感染状況に伴う対応については「プラン自体がなくなることはない」としつつ、ホテル・旅館が休館となる可能性はあるとした。

   厳しい状況下だが、広報担当者は前を向く。

「このご時世、宿泊産業的にも元気がなかったところで、温泉旅館が話題になるいいきっかけになったのではないでしょうか。今は緊急事態宣言が出ている地域もありますが、コロナが落ち着き、お客様が安心して来られる状況になれば、ぜひ温泉旅行をしていただければと思います。『湯桶プリンをやってみたい』という方が多ければ、プラン期間の延長も検討して参ります」