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松井珠理奈「卒業シングル」で見せたメンバー愛 表題曲「68人全員参加」で臨んだ理由

【松井珠理奈さん「卒業」1万5000字インタビュー(1)】

   名古屋・栄を拠点に活動するSKE48が2021年2月3日、約1年ぶりのシングル「恋落ちフラグ」を発売した。今では唯一の1期生で、コロナ禍の影響で卒業が延期になっている松井珠理奈さん(23)にとっての「卒業シングル」にあたり、収録曲のなかには珠理奈さんが作詞や振り付け、プロデュースを担当したものもある。

   約12年間にわたってSKE48の顔として活躍してきた珠理奈さん。注目度が高い一方で、風当たりが強い場面もあった。新曲の聞きどころはもちろん、アイドル生活で「つらかったこと」や「うれしかったこと」、今後の目標など幅広く、4回に分けて聞いた。

   初回は、ナゴヤドーム(名古屋市東区、21年から「バンテリンドーム ナゴヤ」)など愛知県内で撮影したミュージックビデオ(MV)にまつわるエピソードや、振り付けに込められた思いについて聞いた。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 工藤博司)

  • SKE48の松井珠理奈さん。自らの「卒業シングル」にかける思いを語ってもらった
    SKE48の松井珠理奈さん。自らの「卒業シングル」にかける思いを語ってもらった
  • SKE48の松井珠理奈さん。自らの「卒業シングル」にかける思いを語ってもらった

表題曲全メンバー参加で「最後に思い出を作ったり、自分の背中を見てもらいたい」

―― 今回発売されるシングルでは、珠理奈さんは3つの楽曲に関わったと聞きました。1曲目が表題曲の「恋落ちフラグ」。従来のシングル表題曲は16人程度の「選抜メンバー」が担当してきましたが、今回の「恋落ちフラグ」は、SKE48としては初めて(すでに卒業発表している人をのぞく)メンバー全員68人が参加しています。

松井: 自分が12年間と長く続けてこられたのは、1人じゃなかったからだな、ということがあります。ファンの方がいたからなのはもちろんですが、周りにメンバーがいてくれたことで、嬉しいこともつらいこともみんなで分かち合うことができたので、みんなに感謝の気持ちを伝えたり、最後に思い出を作ったり、自分の背中を見てもらいたいという気持ちもありました。そこで、皆で歌いたいというお話をさせていただきました。

―― 12年間のアイドル生活はグループ全体で締めくくりたい、ということでしょうか。

松井: 普段は「選抜メンバー」のみで披露することになるので、表題曲を歌う経験のないメンバーの方が、やはり多くなります。多くのメンバーに表題曲を経験してもらって、みんなが「今度は選抜に選ばれたい」という気持ちになってほしいです。

―― 後輩に経験を積んでもらう、という意味もあるんですね。

松井: そうですね。特に(20年7月に劇場デビューしたばかりの)10期生のメンバーは、この曲が初めてのMV撮影でした。10期生のような若手メンバーが自分と同じチームになったり、自分が選抜以外のメンバーと仕事をしたりする機会は少ないので、せっかくなので一緒にやりたいと思っていました。

6チームに分かれて「それぞれが全然イメージが違うダンス」披露

「恋落ちフラグ」では、6チームに分かれてパフォーマンスした (c)Zest,Inc. / AEI
「恋落ちフラグ」では、6チームに分かれてパフォーマンスした (c)Zest,Inc. / AEI

―― 先ほど、MVの撮影風景の動画を少し拝見しました(インタビューは20年12月上旬に収録)。ダンスにも特徴があるそうですね。

松井: メンバー全員で踊る場面もありますが、6つのチームに分かれてそれぞれ違うジャンル、違うイメージのダンスを踊る場面もあります。普段は同じ踊りをみんなでやる、という場面が多いのですが、今回は参加人数が多いからこそできる構成になっています。

―― 6つのグループに分かれる場面は、チームごとに振り付けが違うのですか。

松井: 全然違いますね。私がいるチームはダンスが得意なメンバーが集まっているので、ちょっと男っぽい、かっこいい感じのダンスになっています。他のチームでは、若いメンバーによるかわいい感じのダンス、セクシー系のダンス、柔軟性を生かしたダンス...といった具合です。それぞれが全然イメージが違うダンスになっているので、楽しみ方がいろいろあると思います。過去のSKE48の衣装がたくさん出てきたりもするので、何回も見返してほしいですね。

―― 振り付けは、パフォーマンスチーム「s**t kingz」(シットキングス)のshojiさんが担当しました。振り入れ(振り付けを覚えること)は、いかがでしたか。

松井: 教え方がめちゃくちゃ上手で、明るくて元気で楽しい先生だったので、みんな和気あいあいと、楽しくできました。ただ、やはり10期生はSKE48に加入して日が浅いので、先輩と比べると大変そうでした。撮影まで時間がなかったこともあって、10期生だけ少しだけ振り付けをアレンジして簡単にした方がいいかもしれない、といった心配もしていました。実際には10期生は自主練したりして頑張って完璧に仕上げてくれたので、みんなで本当に一体感がある、揃ったダンスを披露できたと思います。

―― 撮影風景の動画では、ダンスの先生が若手メンバーに対して「ここは大事なところだから頑張らなきゃダメだ」といった具合に、叱咤(しった)激励する場面もありました。そういった期待に若手メンバーも応えたわけですね。

松井: そうですね。それもそうですし、s**t kingzさんがSKE48のダンスを担当するのは今回が初めてだったのですが、昔から見てくださっていたのではないかと思うような言葉をメンバーにかけてくださったおかげで、すごく雰囲気が良くできました。

――  20年10月5日の12周年記念特別公演後の取材では、珠理奈さんは新曲について「『次のセンターは誰だ?』という目で見てくれたらうれしい」と話していました。このことは、どのような形でMVなどに反映されていますか。

松井: 表題曲について言えば、6チームに、それぞれセンターに立つメンバーがいます。立ち位置の面でも、抜擢されているメンバーが分かると思います。改めて詳しくお話ししますが、カップリングの「Change Your World」という楽曲は、私がプロデュースしたユニット「Black Pearl」(ブラックパール)が歌っています。SKE48の未来を感じさせる、これからのSKE48を引っ張って中心的に活躍してほしいと思うメンバーがそろっています。私の「ラスト曲」というよりも、「SKE48の新たな始まり」として受け止めていただけると嬉しいです。

―― 確かに、卒業シングルによくある「湿っぽさ」を感じませんね。むしろ、次につながるような雰囲気を感じます。

松井: MVでも全然泣いていないし、笑顔で楽しく、今までのSKE48らしさを全部出せたと思いますね。

金城ふ頭、ナゴヤドーム、中部国際空港セントレアなどで撮影

「恋落ちフラグ」のMVは、ナゴヤドーム(現「バンテリンドーム ナゴヤ」)など、名古屋市内を中心に撮影された (c)Zest,Inc. / AEI
「恋落ちフラグ」のMVは、ナゴヤドーム(現「バンテリンドーム ナゴヤ」)など、名古屋市内を中心に撮影された (c)Zest,Inc. / AEI

―― MVの撮影は、金城ふ頭(名古屋市港区)、ナゴヤドーム(同東区、現「バンテリンドーム ナゴヤ」)、中部国際空港セントレア(常滑市)など、SKE48が活動拠点にしている名古屋市を中心に愛知県内で行われました。印象深い場所はありましたか。

松井: やはりナゴヤドームはSKE48にとって特別な場所ですね。SKE48として単独でその場所に立ちたいと思ってずっと頑張ってきて、その夢が叶ったときの感動は、今でもすぐに思い出せます(編注:SKE48は14年2月、ナゴヤドームで初の単独コンサートを行っている)。当時を知るメンバーの多くは卒業し、今のメンバーでナゴヤドームに行きたいとずっと思っていました。MVという形ではありますが、みんなでナゴヤドームに立てたのは、うれしかったですね。

NHK紅白歌合戦「パレオはエメラルド」意識した理由

―― ナゴヤドームでは、全員がスカーフを持って踊るシーンがあります。

松井: 2012年に初出場したNHK紅白歌合戦の「パレオはエメラルド」で披露したカノンという振り付けを意識したものです。

―― 当時はNHKホールで取材していましたが、それぞれスカーフを持って1列に並び、最後にステージの中心に集まる一連の振り付けは、リハーサルでは非常に苦労していましたね。

松井: そうですそうです!MVの振り付けでも、その要素を取り入れました。元々なかった振り付けなのですが、「せっかく全員でやるからには、それを入れたら、ファンの人たちは『エモい』ってなるんじゃないか」と監督さんとshojiさんに提案したら、「やりましょう」となって実現しました。

―― 動きをそろえるのが大変なダンスなだけに、そのラストが上手く決まったときは、グループの一体感も高まったのではないですか。

松井: みんなの集中力が素晴らしかったです。紅白に出場した経験があるメンバーが少なくなった中で「当時の振り付けをやろう」となったわけですが、それでも先輩がパフォーマンスに込めた熱が他のメンバーにも伝わって、みんなしっかりやってくれました。それがSKE48らしさだと感じました。

―― MVでは、「パレオはエメラルド」をはじめ、過去の多くの楽曲の衣装を着てパフォーマンスしています。12年間のSKE48の歴史を振り返る意味もあるわけですね。

松井: 「少し懐かしいな」と感じる部分や、「見る人が見れば分かる」部分を感じていただけると思います。

ソロ曲ではプロジェクションマッピングを活用

―― 2曲目が卒業曲のソロ曲「Memories ~いつの日か会えるまで~」。ご自身で作詞されたそうですね。MVではプロジェクションマッピングを随所に活用し、過去のMVが背景や衣装のドレスに映し出されています。

松井: 先ほども話題になりましたが、表題曲は、あまり「卒業」という雰囲気ではありません。その分ソロ曲に関しては、みんなが少ししんみりするというか、「懐かしいな」とか「珠理奈は本当に卒業するのだな」といった実感がわくような内容にしたい、ということは元々考えていました。そこで「昔の映像を出すのはどうか」という話をして、過去のMVを投影してもらうことになりました。

―― 床には、目盛と西暦のようなものが描かれていますね。

松井: MVでは、自分が画面の奥から少しずつ前に進んでいくのですが、デビューした2008年から目盛にしたがって、その当時の映像が流れる仕組みです。

―― 少しずつ時代が過ぎていくわけですね。珠理奈さんが前に進むにつれて、珠理奈さんの歩みを振り返ることができる仕組みになっている。

松井: そうですそうです!歌詞にも「新しい旅に出るの」といったフレーズがあったりします。「無邪気に登ったあの階段」という歌詞は、「大声ダイヤモンド」(編注:08年発売のAKB48のシングル曲。デビュー直後の珠理奈さんが前田敦子さんとのダブルセンターに大抜擢された)のMVにある、階段を上るシーンをイメージしています。

―― 表題曲と対照的な曲調でしょうか。

松井: そうですね。ファンの皆さんに、自分がSKE48を好きになったときのことを思い出してもらって、「あっ俺このMV、この曲のときに好きになったな」とか、いろいろ振り返りながら見ていただけたらと思います。「思い出のアルバム」みたいな感じですね。

(インタビュー第2回に続く。2月7日掲載予定です)


松井珠理奈さん プロフィール
まつい・じゅりな 1997年生まれ、愛知県出身。2008年にSKE48の1期生としてデビュー。直後にAKB48のシングル「大声ダイヤモンド」に前田敦子さん=12年卒業=とともにダブルセンターに抜擢。SKE48でも多くの楽曲でセンターポジションを務め、松井玲奈さん=15年卒業=とともに「W松井」「JRコンビ」と呼ばれ、グループの顔として活躍した。12年から15年にかけてAKB48と兼任。18年に行われた「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」で初めて1位に選ばれた。20年2月にSKE48からの卒業を発表している。