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「やはり兼務は無理があった」 全柔連パワハラ問題が浮き彫りにした、JOC山下会長の「力量」

   日本オリンピック委員会(JOC)会長で全日本柔道連盟(全柔連)の会長を務める山下泰裕氏(63)が2021年2月26日、全柔連会長職を辞任する可能性を示唆した。

   山下会長はこの日、全柔連の前事務局長によるパワーハラスメント疑惑を受けて都内で会見を行い、事態を把握しきれなかったとして自身の責任問題について言及した。

  • 山下泰裕会長(2019年撮影)
    山下泰裕会長(2019年撮影)
  • 山下泰裕会長(2019年撮影)

複数の職員からパワハラを訴える声が

   今回問題視されているのは、全柔連の前事務局長によるパワハラ疑惑だ。スポーツ紙などの報道によると、前事務局長は複数の職員に対して威圧的な言動を繰り返すなどパワハラが疑われる行為があったという。前事務局長は昨年12月以降、連絡が取れない状態で今年1月に自己都合により退職したという。

   前事務局長によるパワハラ疑惑は、昨春に事務局内で発生した新型コロナウイルスの集団感染の経緯を調べていた過程で浮上したもので、複数の職員からパワハラを訴える声が上がったという。これを受けて全柔連のコンプライアンス委員会が調査を実施し、委員会がまとめた調査報告書は山下会長に提出されていた。

   今回の騒動を受け、山下会長は全柔連の会長としての職責を果たしていなかったと自ら語っている。山下会長は2013年に全柔連の副会長に就任し、17年に会長職に就いた。19年には全柔連の会長と兼任する形でJOCの会長に就任。山下会長は五輪ホスト国の会長を任されたことで、五輪に全精力を傾けなければならない状況にあったという。

「軸足がオリンピックに傾くのは仕方がない」

   山下会長がJOC会長に就任した当初から全柔連会長との兼務ついて関係者から不安視する向きもあった。ただでさえ激務とされる五輪ホスト国のJOC会長と全柔連会長が同時に務まるのか。周囲ではこのような声がささやかれていたが、図らずも今回のパワハラ騒動によって山下会長の「力量」が浮き彫りになった。

   柔道界では2013年、当時女子の日本代表を指導していた監督、コーチらによる暴力的指導、パワハラ問題が発覚。五輪出場経験を持つ選手を含む国内のトップ15選手が、JOCに文章で告発し実態が明らかになった。当時、全柔連の理事だった山下会長は「暴力根絶宣言」の責任者として改革を推し進め、その後、全柔連のトップに上り詰めた。

   今回の一連の騒動を受けJOC関係者は「やはりJOC会長との兼務は無理があったと思う。軸足がオリンピックに傾くのは仕方がない。それにしても森さんの一件で山下さんのリーダーシップが問われている状況でもあるので今回の騒動はイメージ的に良くない。JOC会長としてここは踏ん張りどころでしょう」と指摘した。