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JR函館線「コロナ運休」が深刻化した背景 ローカル線の苦境が原因?識者の見解は

   JR北海道の函館線で、社員の新型コロナウイルス感染により列車の大規模運休が発生している。

   保線担当社員の感染確認をきっかけに、通常ダイヤの半数以下の運行本数しか確保できないエリアが生じた。鉄道職員のコロナ感染はあっても、これほどの運休に至ったケースは初めてだが、なぜ大規模運休にまで至ってしまったのか。

  • ローカル区間であるが、大半の列車が運休に(画像はイメージ)
    ローカル区間であるが、大半の列車が運休に(画像はイメージ)
  • ローカル区間であるが、大半の列車が運休に(画像はイメージ)

15時以降は「全列車運休」

   JR北海道の発表によれば、2月25日と28日に倶知安保線管理室(虻田郡倶知安町)に勤務する保線担当社員の感染が確認された。この社員と休憩場所や宿泊施設を共用していた運転士ら多数の社員がPCR検査を受ける必要が生じたために、函館線の小樽~長万部間で2月28日から列車の運休が発生した。倶知安は折り返し列車なども設定される同区間の拠点である。

   この小樽~長万部間は列車本数の少ないローカル区間であるが、3月1日は上下とも午前中の約半数の列車が運休、15時以降の時間帯は全便が運休という異例の事態になった。また3月2日は、低気圧接近の影響で当該区間の終日運休が発表されている。

   3月1日にJ-CASTニュースがJR北海道に取材したところ、運休の原因は検査対象者が多く発生したこと、また検査対象の社員は陰性が確認され次第復帰するが、業務への復帰時期や通常ダイヤに戻る目途については不明とのことだった。

   同社鉄道部門において新型コロナ感染者が発生したのはこれが初めてではなく、札幌都市圏などで乗務員が罹患する事例があったが、大規模な運休には至らなかった。今回生じた函館線の事例は感染社員が他部門と施設を共用していたため、乗務員にも検査対象者が多く出てしまったことが不運になった。

   背景には、限られた人員と施設で運行を維持しなければならないローカル線区特有の事情が考えられる。

都市部と地方の違いも影響?

「都市部の大手鉄道会社では部門ごとに施設や動線は分かれていて、違う部門の社員が接触することは少ないですが、地方では広い線区を少ない拠点で管理していて、同じ施設を共用していたり、乗務員の予備人員も少なかったりするために大規模運休という事態になってしまったのではないでしょうか」

とJ-CASTニュースの取材に推測するのは、自身も鉄道会社勤務経験がある鉄道ライターの枝久保達也さんである。

   東京でも都営地下鉄大江戸線の運転士に新型コロナ感染者が相次いだために、20年12月27日から21年1月11日まで通常の7割程度の本数に減便されたことがあった。鉄道各社では、新型インフルエンザ等の感染症で多くの社員が出勤できなくなった場合に備えたシミュレーションを策定している。

   枝久保さんによれば「具体的な内容は事業者によって異なりますが、例えばもし現場社員の4割が出勤できなくなれば、ラッシュ時の運行本数を通常に2割から5割程度に削減、といったプランを策定しています」とのことである。