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小泉純一郎元首相「イラクが査察を認めていれば戦争は起こらなかった」 18年前の「開戦支持」に言及

   小泉純一郎元首相が2021年3月1日に菅直人元首相と一緒に登壇した記者会見は、大半が脱原発に関する話題で占められたが、数少ない例外がイラク戦争に関する問題だ。

   小泉氏は首相在任時の03年、米国の開戦直後に支持を表明。米国は、イラクが大量破壊兵器を隠し持っている「証拠」があるとして開戦に踏み切ったが、イラク戦争後の捜索では大量破壊兵器は発見されなかった。当時の日本の意思決定について現時点での考えを求められた小泉氏は、「イラクが査察を認めていれば戦争は起こらなかった」と主張。日本政府の意思決定への評価は避け、「戦争をいかに回避していくかということは、国際社会、これからも一番大事なことだと思いますけどね」と述べた。

  • 日本外国特派員協会で記者会見する小泉純一郎元首相。イラク戦争についても見解を述べた
    日本外国特派員協会で記者会見する小泉純一郎元首相。イラク戦争についても見解を述べた
  • 日本外国特派員協会で記者会見する小泉純一郎元首相。イラク戦争についても見解を述べた

「イラクが査察を認めていれば戦争は起こらなかったんですよ」

   イラク戦争では、米国が03年3月19日(米東部時間)に英国などとともに「イラクの自由作戦」を開始し、開戦に踏み切った。小泉氏は翌3月20日(日本時間)に記者会見を開き、査察に協力すべきだとする国連決議をイラクが無視したことを指摘し、

「私はこの際、そういう思いから米国の武力行使開始を理解し、支持いたします」

と述べていた。

   今回の特派員協会での記者会見では、大量破壊兵器が発見されなかったことを踏まえて、当時の日本政府の意思決定についての現時点での考えを問う質問が出た。小泉氏は

「一般的にいうと『なんで米国はイラク戦争を始めたんだ』という非難、批判があったのは分かる。しかしね、イラクが査察を認めていれば戦争は起こらなかったんですよ。なんで査察を認めなかったのか。隠してると思ったんだろ、米国は。結果、大量破壊兵器はなかったんだけど。イラクが査察を認めれば、国連でも決議してるんだから、受け入れれば戦争は起こらなかった」

と話し、開戦の責任はイラク側にあると主張。その上で、

「そういうことがあるから、やっぱり色々な事情、考えなきゃいけない。これからの世界をどうやって平和にしていくか。無駄な戦争、無駄でない戦争なんかないと思うけど、戦争をいかに回避していくかということは、国際社会、これからも一番大事なことだと思いますけどね」

と話した。

「当時の日本政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではなく」

   政府が閣議決定した公式見解も、イラクへの武力攻撃は「正当化される」との立場だ。16年8年の逢坂誠二衆院議員の質問主意書に対する答弁では、イラクへの武力行使は、イラクへの査察受け入れや武装解除を求めた国連安保理決議第1441号など、関連する決議を理由に「正当化されると考えている」とした上で、当時の日本政府の判断は妥当だったと主張している。

「イラクは、12年間にわたり、累次の安保理の決議に違反し続け、国際社会が与えた平和的解決の機会をいかそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえようとしなかった。このような認識の下で、我が国は、安保理の決議に基づきアメリカ合衆国、英国等の各国によりとられた行動を支持したものである。こうした当時の日本政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではなく、政府として改めて当該判断について検証を行う考えはない」

   英国ではイラク戦争開戦の経緯について独立調査委員会(チルコット委員会)が16年7月に報告書を公表。報告書では「当時、軍事行動は最終手段ではなかった」として、当時のプレア政権が開戦を決めた判断は誤りだったと指摘している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)