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JR西日本「ローカル線見直し」の対象は? 鉄道路線の「通信簿」通過人員で考えると...

   JR西日本が、廃止も含めたローカル線の見直しを行うことを明らかにした。

   長谷川一明社長は2021年2月18日の記者会見で、新型コロナウイルスによる社会情勢の変化により、鉄道の利用客が大きく落ち込んでいることに言及。鉄道利用がコロナ前の9割しか戻らなくても柔軟に対応できるよう、構造改革を進める方針を示した。

   その一例として挙げられたのが、利用客が少ないローカル線の見直しだった。

  • 発車を待つ紀南方面行き特急「くろしお」
    発車を待つ紀南方面行き特急「くろしお」
  • 発車を待つ紀南方面行き特急「くろしお」
  • 地方ローカル線の運命はどうなるのだろうか(岡山駅で発車を待つ吉備線の列車)

見直しが行われるローカル線はどこだ?

   長谷川社長が示したJR西日本の方針は、ローカル線を抱える沿線自治体を中心に大きな話題となっている。2月19日、島根県の丸山達也知事は長谷川社長の発言を受け「鉄道網の脆弱な島根県にとって非常に大きな問題だ」と述べた。

   今回の記者会見では具体的な線名については言及しなかったものの、2018年には三次(広島県三次市)~江津(島根県江津市)間の三江線が廃止されている。一般的に鉄道事業者は鉄道利用の通信簿として平均通過人員を参考にすることが多い。

   平均通過人員は利用者の1日1キロメートルあたりの人数を表したものだ。参考までにJR西日本が発表している2019年度の平均通過人員を確認してみよう。

   平均通過人員(人/日)が500人/日を割っているJR西日本の路線・区間は以下のとおりだ。

大糸線(南小谷~糸魚川):102
越美北線(越前花堂~九頭竜湖): 399
姫新線(上月~津山):413
(中国勝山~新見):306
因美線(東津山~智頭):179
福塩線(府中~塩町):162
芸備線(備中神代~東城):81
   (東城~備後落合):11
   (備後落合~三次):215
木次線(備後落合~宍道):190
山陰本線(益田~長門市):271
    (長門市~小串、長門市~仙崎):351
小野田線(小野田~居能、雀田~長門本山):444
美祢線(厚狭~長門市):478

「いきなり廃止」の可能性は低いが...

   参考までに、2018年に廃止された三江線の平均通過人員は58人/日(2015年度)だった。

   とはいえ、利用客が少ないからと言って「いきなり廃止」とはならないだろう。ただ地元自治体に鉄道施設への負担をお願いする「上下分離方式」や利用客増加への施策が難航した場合は廃止の議論も取りざたされるだろう。

   また富山市を走っていた富山港線のように、別会社の運営によるLRT(次世代型路面電車システム)への転換も考えられる。いずれにせよ、JR西日本内のローカル線をめぐる議論が進むことは確実だ。

(フリーライター 新田浩之)