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飛行機「搭乗前PCR」の使い勝手は? 国交省が実証実験、記者も実際にやってみた

   国土交通省が、乗客が飛行機に乗る前にPCR検査を受けてもらう実証実験を国内線で進めている。

   2021年3月18日~21日にかけて、羽田空港から日本航空(JAL)か全日空(ANA)で北海道、九州、沖縄方面に向かう乗客を対象に、無料で検査を受けられるモニターを募集。搭乗後にアンケートに答えてもらう。航空会社がPCR検査を行う業者と提供してサービスを提供するケースも増えていることから、搭乗前に検査することの効果や課題を探ることが目的だ。

   たまたま飛行機に乗る予定がある記者のもとにも、モニター募集のメールが届いた。実際に使い勝手を試してみた。

  • 搭乗前のPCR検査は広がるか(写真はイメージ)
    搭乗前のPCR検査は広がるか(写真はイメージ)
  • 搭乗前のPCR検査は広がるか(写真はイメージ)
  • 記者の検査結果。検体採取・発送の翌日には結果が出た(画像は一部加工しています)

「いかにして安心して利用してもらえるか」模索しながら需要の下支え目指す

   航空各社の取り組みが進んだことで、乗客がPCR検査を受けるハードルは下がってきた。例えば全日空(ANA)は21年2月から、飛行機での移動と宿泊をセットにした「ダイナミックパッケージ」のオプションとして、2500円でPCR検査を提供している。JALも20年10月から1万円で同様のサービスを提供してきた。21年3月15日搭乗分からは、ダイナミックパッケージを利用しなくても、国内線に搭乗するマイレージ会員が搭乗1週間前まで申し込めば、2000円で利用できるようになっている。

   こういった取り組みが進んだことで、国交省としては、実証実験で今後期待される効果や課題を探りたい考えだ。

「事前にPCR検査を受けて飛行機に乗るということで安心感が得られる一方で、負担感やコストの問題もある。今回の実証実験を通じて、どのような効果や課題があるかを把握したい」(航空局航空事業課)

   搭乗前のPCR検査を通じて「いかにして安心して利用してもらえるか」を模索し、航空需要の下支えも目指す。

通常は5500円で提供される検査パッケージが届く

   実証実験のモニターは、航空会社が対象便の予約を持つ人にメールを送って募集した。記者のもとには、3月8日に

「国土交通省から航空機搭乗前におけるPCR検査実施モニターの募集について(検査費無料)」

のタイトルでメールが届いた。

   郵送検査や来店検査など、検査方法が異なる5つのPCR検査会社から選んで登録する仕組みで、記者は比較的知名度が高いと思われた「SB新型コロナウィルス検査センター」を選択。3月9日に登録を完了すると、11日に、ソフトバンク系のオンライン健康医療相談サービス「HELPO」(ヘルポ)の検査パッケージが送られてきた。一般向けには5500円(検査代2000円、配送・梱包資材費3500円)で提供されるパッケージで、大まかに言えば「専用アプリをダウンロードして、検体採取予定日を登録→専用容器に唾液を入れる→梱包→郵便局に集荷依頼して発送」といった流れだ。三重の包装が必要なのが若干複雑で手間だが、マニュアルには手順を説明した動画へのQRコードが載っている。それに従えば特に問題は起きなかった。

検体採取・発送のタイミングが悩ましい

   記者が唾液を採取して発送したのは3月14日の正午過ぎ。翌15日夜には結果が出たという連絡がショートメールで届き、アプリを開くと「陰性(ウイルス検出限度以下)」の結果が表示された。

   悩ましいのが検体採取・発送のタイミングだ。モニター募集サイトには

「郵送検査の場合、搭乗日の2日前までに、検体が検査会社へ到着するようご返送ください」
「来店検査の場合、搭乗日の2日前までに、検査会社まで来店し検体を採取してください」

というただし書きがあり、早めの対応を求めている。ただ、あまり早く検体を送ってしまうと、検査結果が出てから搭乗までに時間が空き、その間に感染するリスクもある。

   国交省によると、モニターには1000人以上登録し、すでに締め切った。搭乗後にウェブアンケートに回答することが応募の条件で、回答すると1000円分のクオカードがもらえる。

   実証実験は国際線でも行われた。3月8日~14日にかけて成田空港と羽田空港に到着した便が対象で、事前に航空会社を通じてメールで呼びかけたほか、到着ロビーでチラシを配って宣伝した。到着ロビーで手続きをした人に対して、後に検査キットが送られる仕組みで、250人ほどが検査を受けた。国内線とは違ってフライト後の検査だが、国交省では

「『ここが負担だ』といった点を把握し、安心して利用してもらうための政策立案に向けたデータ収集を行いたい」(航空局国際航空課)

としている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)