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作者に無断でセリフ改変、時代劇漫画誌が謝罪 「またやられてた!」告発ツイートで発覚

   漫画家の楠桂(くすのき・けい)さんが、前任の担当編集者に漫画のセリフを無断改変されていたとツイッターで告発し、物議を醸している。

    楠さんが改変を指摘したのは、リイド社の時代劇漫画誌「コミック乱ツインズ」で連載されていた「鬼切丸伝」。作者からの告発を受け、同誌の公式ツイッターには2021年3月17日、編集長名義の謝罪文が掲載された。

  • 漫画家の楠桂さんが、前任の担当編集者に漫画のセリフを無断改変されていたとツイッターで告発した
    漫画家の楠桂さんが、前任の担当編集者に漫画のセリフを無断改変されていたとツイッターで告発した
  • 漫画家の楠桂さんが、前任の担当編集者に漫画のセリフを無断改変されていたとツイッターで告発した

「鬼切丸伝をよい作品にしたいという熱意は確かでした」

   楠さんは3月9日、「うっわ!またやられてた!勝手に台詞変えられてた!なんの相談もなく」と、自身の漫画の台詞が相談無く変更されていたとツイッター上で告発した。

   問題となったのは、「鬼切丸伝」5巻の180ページの台詞。「まるで自刃を思わせる壮絶な最期だったという―」という箇所が、「利家は自らの刃で、壮絶な最期を迎えた。」に変更されていた。楠さんは「前田利家は自刃なんかしてないのに!病死なのに!」と、事実誤認を指摘する。

   J-CASTニュースの取材に対し、楠さんは無断でのセリフ変更は幾度もあったと話す。

「幾度となくありました。きちんとネーム(本原稿に入る前の仮漫画)で打ち合わせして完成させたものなので、まさか台詞変更されているとは夢にも思わずそのためわたしの確認も甘く、いつもコミックスになってから気づいていました」

   絵に関する最終確認は行っていたものの、台詞が変更されているとは思わなかったという。

   楠さんはこの件について当時の担当編集に相談したが、解決できなかった。楠さんはその理由を「悪気はまるでなくどちらかといえば善意で読者にわかりやすくしてあげたという意識が高くて解決できなかったように思います」などと考察する。

   また、この担当編集者はすでに退職しているとして、

「彼に悪気は本当になくむしろ鬼切丸伝をよい作品にしたいという熱意は確かでした」

と振り返った。楠さんは「前任担当編集者が連載やりましょうと楠に声をかけてくれなければ実現しなかった作品」だと強調し、編集部を責める意図はないという。現在の担当編集者からは、セリフなど変更がある場合は事前に連絡があると話した。

   楠さんの告発は、17日昼までに8000件のリツイートを集めるなど大きな反響があった。今回の騒動を見守った読者には「今回お騒がせしましたが皆様に鬼切丸伝を知っていただくきっかけになってくれればまだ救われます。どうぞよろしくお願いいたします」とした。

「編集者倫理教育をより一層徹底し、再発防止に努めて参る所存です」

   J-CASTニュースは15日、リイド社に(1)セリフの変更はなぜ、どのような経緯で行われていたのか(2)再発防止などの取り組みは行っているのか(3)単行本の交換対応などは行うのかなどを取材で尋ねた。

   こうした質問に対し、同社の「コミック乱ツインズ」の佐藤真吾編集長は17日午前、こうメールで回答した。

「『鬼切丸伝』の件についてですが、これは当時、掲載誌であった月刊コミック誌『コミック乱ツインズ』で発生しました。楠桂先生のTwitter発信を確認後、早急に社内調査を行い 現時点でお答えできることはコミック乱ツインズ公式Twitter(@ComicRanTwins)にて 発信しておりますので、そちらをもってご返答とさせていただきます」

   コミック乱ツインズ公式ツイッター上に公開された「SNS上での楠桂先生の『鬼切丸伝』 セリフ無断改変に関する発信についての読者の皆さまへのお詫び」と題した文書では事の経緯を説明したうえで、

「弊社編集部では、セリフ変更に際して、都度、著者へ相談し、著者合意の上で変更することを徹底しておりますが、本件に関し、雑誌掲載時および単行本化の際に、著者である楠桂先生への相談を怠り、楠桂先生並びに読者の皆様へご迷惑をおかけしましたこと、ここに深謝いたします 今後、弊社では編集者倫理教育をより一層徹底し、再発防止に努めて参る所存です。皆様には重ねてお詫び申し上げます」

と謝罪した。

   そのうえで楠さんに対しては経緯説明と謝罪を行い、今後は追加調査を共同で行いながら、今後の対応について協議していくという。