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大阪「なにわ筋線」完成したらどうなる? 計画図に見る「懸念」と開通のメリット

   大阪・梅田エリアから関西国際空港へのアクセスを強化する新線として期待されるなにわ筋線は2031年の開業を目指して、21年度中の工事着工を見込む。

   ミナミからキタまで地下で貫通する同線がどんな構造で建設されるか、建設主体の関西高速鉄道が公開しているルート断面図でうかがうことができるが、それをもとになにわ筋線の完成後を予想した。

  • なにわ筋線には南海とJR西日本が乗り入れる
    なにわ筋線には南海とJR西日本が乗り入れる
  • なにわ筋線には南海とJR西日本が乗り入れる
  • なにわ筋線の路線図

関西一深い鉄道に

   なにわ筋線にはJR西日本と南海電鉄が乗り入れ、難波エリアから大阪駅地下の北梅田駅に直通する。同線には北梅田駅・中之島駅・西本町駅・南海の新難波駅(いずれも仮称)が設けられ、南海新今宮駅で既存の南海線路に接続する計画だ。先行して2023年に開業する北梅田駅には新大阪方面からの線路がつながり、新大阪・京都方面に直通が可能な構造になる。

   4駅7.2キロの路線だが、大阪市中心部を通るために既存の地下構造物を避けねばならないハードルがある。「深さ」と「勾配」である。

   計画案による駅の深度は中之島駅40メートル、西本町駅30メートル、新難波駅40メートルと深い駅が続く。大阪メトロで最も深い駅が長堀鶴見緑地線大阪ビジネスパーク駅であるから、なにわ筋線は関西一深い鉄道になり、空港から行き来してキャリーバッグを抱える乗客にはハンデになりうる。

   他方、南海新難波駅の予定地は既存の南海難波駅の北西で、近鉄大阪難波駅・大阪メトロ四つ橋線難波駅に近い。近鉄と阪神の直通により大阪難波駅は阪神沿線へのアクセス性もよいので、近鉄・阪神沿線への乗り換えでは新駅の方がメリットを発揮できる可能性がある。

新今宮手前の勾配と平面交差

   なにわ筋線は新難波駅の南方から地上に出て、新今宮駅手前で南海本線と接続させる計画だが、新難波~新今宮間の勾配がかなり急で、計画では44‰(パーミル)で建設される。高野山に登る南海高野線の50‰並みの急勾配であり、平地を走る南海本線の車両が乗り入れるには編成組替えあるいは勾配に対応した新形式の導入が必要と考えられ、実際南海電鉄はなにわ筋線用に新型特急車両の導入を検討している。

   もう一つ、なにわ筋線活性化のネックは、なにわ筋線と南海本線の合流が「平面交差」で計画されていることだ。線路を平面でクロスさせる平面交差の場合、列車が分岐する時に反対側の線路も支障するので過密なダイヤを組みにくくなる。計画段階であって立体交差になる可能性もあるが、平面交差では南海からの乗り入れ本数は限定的なものとなるかもしれない。

   南海本線の優等列車は所定では日中1時間あたり和歌山方面への特急「サザン」が2本、関西空港方面の特急「ラピート」が2本、空港急行が4本運行されている。17年9月に大阪市都市計画局が定めたなにわ筋線の整備計画では運行本数は1時間あたり南海が特急2本と急行4本、JRが特急3本と快速4本を想定しているが、平面交差で南海から毎時6本の乗り入れはダイヤ設定が煩雑となり、特にダイヤ乱れ発生時には混乱が長引く恐れがある。

   他社を見ると、平面交差で有楽町線と副都心線の列車をさばいていた東京メトロ小竹向原駅は定時性確保のために線路を増設して平面交差を解消する工事を行い、阪急京都線と千里線の乗換駅で平面交差構造の阪急淡路駅も高架化工事が進行中だ。

   南海にとってなにわ筋線は乗り換えなしで梅田に乗り入れられる大きなアドバンテージをもたらす路線だが、JR西日本と共用であることや以上の条件から本数が限られてしまっては、アドバンテージを十分に生かせなくなる。

JRにとってのメリットは?

   一方、既存のJR難波駅から乗り入れるJR西日本にとっての同線のメリットは、現在大阪環状線の西側を経由する特急「はるか」や関空快速を乗り入れさせれば、大阪環状線の線路容量にも余裕が生じることだ。「はるか」のなにわ筋線乗り入れは確実だが、関空快速や大和路線の列車を乗り入れさせたいとの可能性も広がる。

   JR・南海ともに大きなメリットが見込めるなにわ筋線だが、ポテンシャルを十二分に活かせるか、ダイヤ設定での両社の「綱引き」や路線の構造が同線の効果を左右しそうだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)