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東京-札幌で往復600万円! コロナで活況のプライベートジェット、使うのはどんな人?

   コロナ禍で航空業界が厳しい状況におかれるなかで、異色の動きを見せているのが、少人数で貸し切って運航するプライベートジェット(ビジネスジェット)だ。「コロナ前」よりも引き合いが増えている上、その活用法も大きく変化している。

   「コロナ前」は、時間当たりの単価が高い大企業幹部による利用が目立ったが、「コロナ後」は、感染対策としての側面にも注目が集まりつつある。一度は操業を止めた国外の工場を再開するために技術者を送り込んだり、国外から羽田空港や成田空港に帰国した人が地方都市に戻るために利用したりするケースだ。プライベートジェットを手配する会社では、「感染リスクの低減ということで、マーケットの拡大は十分にあり得るのではないか」とみている。

  • 報道陣には大型プライベートジェット機のボンバルディア・グローバル7500型機も公開された。最大で19人が乗れ、会議をしながら米東海岸に向かうこともできる
    報道陣には大型プライベートジェット機のボンバルディア・グローバル7500型機も公開された。最大で19人が乗れ、会議をしながら米東海岸に向かうこともできる
  • 報道陣には大型プライベートジェット機のボンバルディア・グローバル7500型機も公開された。最大で19人が乗れ、会議をしながら米東海岸に向かうこともできる
  • ボンバルディア・グローバル7500型機の航続距離は1万4260キロにおよび、米西海岸にノンストップで行くこともできる(c)双日

コロナ前と比べて「問い合わせは3割近く増えているのでは」

   活況ぶりを明かしたのは、プライベートジェットによるフライトの手配を手がける、ANAホールディングス(HD)と大手商社の双日による合弁企業「ANAビジネスジェット」。会社設立は2018年7月で、代表取締役の片桐純氏が21年4月9日の記者会見で明かしたところによると、19年度決算で単年度黒字を計上したのに続いてコロナ禍の20年度も増益だった。

   片桐氏によると、コロナ後とコロナ前を比較すると「成約件数で言えば1割強、問い合わせは3割近く増えているのではないか」。毎月20件近くの問い合わせが寄せられるという。プライベートジェットの使い道も大きく変わった。

   利用の形態には大きく3つある。ひとつが、定期便で国外の空港に移動し、そこからプライベートジェットを使う「エリアチャーター」と呼ばれる形態。例えば経営者が定期便で東京からロサンゼルスに飛び、プライベートジェットに乗り換えて米国内の都市を転々とする、というイメージだ。コストと時間効率の両方の利点を生かした利用法だ。二つ目が、日本から海外の目的地に直接飛ぶ「グローバルチャーター」。三つ目が、国内線で利用する「国内チャーター」だ。

   コロナ前は「エリアチャーター」が60%を占め、「グローバルチャーター」が30%、「国内チャーター」が10%だった。時間短縮やスケジュールを組みやすいという利点を生かして企業幹部が利用することが多かった。

気になる運航費用は...

   コロナ後は、経営者の海外渡航が激減。そのため、「エリアチャーター」の割合も25%に減少した。逆に「グローバルチャーター」は50%、「国内チャーター」が25%に増えた。具体的な利用実績としては(1)国外の工場を再開するために技術者を派遣(2)定期便が少ない国、特に発展途上国に駐在する人の帰国便(3)帰国者は公共交通機関で移動できないため、羽田や成田から地方空港への移動手段(4)富裕層の国内旅行、などだ。

   気になる運航費用は、国際線で13人程度が乗れる大型機で往復した場合、東京から北京が約1500万円、ハノイが約2000万円、ニューヨークが約3900万円、といった具合。国内線では、下地島(宮古島)まで8席の中型機で往復して約1200万円、4~5席の小型機だと700万円。札幌まで往復すると、中型機で約600万円、小型機で約300万円だ。

   片桐氏は、空港では専用動線で第三者との接触が減らせる上、関係者のみで搭乗するというプライベートジェットの特徴が感染対策にも生かせるとみており、

「サラリーマンにおいては、ちょっと考えられないような金額感だが、そういうお客さまは潜在需要があると、すごく確信した」

などと期待を寄せていた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)