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日米は「犯罪的なマフィア集団」 処理水問題で荒ぶる中国メディア、米国務長官への罵倒ツイートも

   東京電力福島第1原発の処理水を2年後に海洋放出する方針を政府が決めたことを受け、周辺諸国が強く反発している。

   特に中国に至っては、日本側の対応を評価する米国務長官のツイートに返信したり、引用したりする形で、米国が日本に対応を求めないことを非難。悪化する米中関係を背景に、処理水問題でも「空中戦」が展開されている。

  • 東京電力福島第1原発の処理水扱いで周辺諸国が反発している(写真は東京電力撮影)
    東京電力福島第1原発の処理水扱いで周辺諸国が反発している(写真は東京電力撮影)
  • 東京電力福島第1原発の処理水扱いで周辺諸国が反発している(写真は東京電力撮影)

朝鮮日報「透明なモニタリングの仕組みを提示できなかった」

   韓国では、早くもトップにあたる文在寅大統領本人が日本政府の決定に反発している。大統領府(青瓦台)の康珉碩(カン・ミンソク)報道官の発表によると、文氏は4月14日に相星孝一・駐韓日本大使から信任状を受け取った際、

「韓日両国は地理的にも文化的に最も近い隣人であり、友人であり、北東アジアと世界の平和繁栄のために協力しなければなら非常に重要なパートナー」

だとして「東京五輪の成功を祈る」と述べる一方で

「福島原発汚染水放流決定の韓国政府の懸念を伝えた」

という。

   韓国メディアも日本の決定に批判的な論調が多く、朝鮮日報は、4月14日の社説で、処理水からトリチウム以外の放射性物質を除去したり海水で薄めたりするという日本政府の説明を前提に、「隣接国の不安を払拭できる透明なモニタリングの仕組みを提示できなかった」と主張。原発の敷地外にタンクを増設するなどして放出を先送りしなかったことを非難した。

NHK記者の指摘に中国外務省報道官は...?

   中国では、外務省の定例会見で激しいやり取りが展開された。趙立堅報道官は4月13日の記者会見で、

「隣人、利害関係者として、深い懸念を表明する」

など処理水問題に言及し、日本政府を非難。さらに、NHKの記者の質問に答える形で、日本側の説明を前提にしたとしても、日本側に問題があると主張した。

   NHK記者は、福島第1原発から放出される処理水は、トリチウム以外の放射性物質を除去したもので、海洋放出前に世界保健機関(WHO)が示している基準の7分の1に海水で薄める方針を日本政府が示していることや、中国、韓国、欧州、米国原発でもトリチウムを放出していることを指定した上で、

「そのため、日本での反対運動も、健康への影響についてではなく、放出による経済的損失の懸念に関するものが大半を占めている。 この問題は、科学的かつ客観的に判断する必要があるのではないか」

などと中国側の認識をただした。これに対して趙氏は、

「国際原子力機関(IAEA)の専門家チームによる報告書では、トリチウムを含む廃水を海洋放出した場合、周辺国の海洋環境や人々の健康に影響を与え、既存の処理済み廃水にはまだ他の放射性核種が含まれているため、さらに浄化が必要だと指摘されている」

といった事例に始まり、放出から57日以内に放射性物質が太平洋の大部分に拡散する可能性があるとするドイツの研究期間による試算や、廃水に含まれる「炭素14」の量は数千年にわたって危険な水準が続き、遺伝子にダメージを与える可能性があるという、環境保護団体・グリーンピースの原子力専門家の主張を列挙。

「日本は、これらの権威ある機関や専門家の見解に対して『聞かないふり』をするのではなく、誠実に対応すべきだ」

などと主張した。

   メディアも足並みをそろえた。共産党傘下の英字紙「チャイナ・デイリー」は4月13日付の社説で、

「日本政府は完全に自国民の人権と、アジア太平洋地域の周辺国の利益を無視した」
「西側の政治家やメディアが日本の決定に対して一様に寛容であることは、彼らのダブルスタンダードを露呈している」

などと批判した。

米国務長官に「罵倒ツイート」するチャイナ・デイリー支局長

   米国は日本政府の対応を支持している。中国政府は、その米国の立場をツイッターで非難するという珍しい形で、「空中戦」を展開している。米国のブリンケン国務長官が

「福島第1原発の処理水の処理をめぐる決定について、日本の透明性ある取り組みに感謝する。日本政府が引き続き、IAEAと連携することを期待する」

とツイートすると、中国外務省報道官のアカウントがそれを引用し、

「米国は常に環境問題を重要視している。この問題については客観的であってほしいし、そうでなければ環境保護への取り組みに疑問符がつくかもしれない」

とけん制。

   チャイナ・デイリーEU支局長の陳衛華氏は、ブリンケン氏のツイートに返信する形で、日米を「犯罪的なマフィア集団」呼ばわりして罵倒した。

「米国のトップ外交官が、こんなに温かい言葉を贈るということは、日本政府は水を(海洋放出の)代わりにホワイトハウスと国務省に送るかもしれない。頭が良くなる水(IQ Boost water)だ」
「このブリンケン氏のツイートは、いわゆる『同盟国』がマフィアやギャングのような存在かもしれないことを人々に伝えている。 同盟国が何らかの犯罪行為をしていても、米国はそれに関係なく後ろ盾になる。 このような犯罪的なマフィア集団がいなければ、世界はより良くなるだろう」

   中国でも処理水問題への感心は高い。そのひとつが、復興庁がトリチウムを「ゆるキャラ」のように描いて波紋を広げた件だ。

   香港・フェニックステレビのリー・ミャオ東京支局長は、「本当にびっくり...」という驚きの言葉とともに、この件を微博(ウェイボー、Weibo)に投稿したところ、3000万回以上読まれて約20万件の「いいね!」がついた。4月14日午前には「トレンド」の7位に入るほど注目された。なお、トレンド1位だったのは麻生太郎財務相兼副首相の「あの水飲んでも、なんてことないそうですから」発言だ。こういった注目度の高さも、中国政府やメディアの対日批判の激しさにつながっている可能性がある。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)