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どうなる「紀州のドン・ファン」13億遺産の行方 元妻逮捕の影響は?親族側弁護士に聞いた

   「紀州のドン・ファン」こと和歌山県田辺市内の実業家、野崎幸助さんが急性覚せい剤中毒で77歳で亡くなった事件で、元妻(25)が殺人の疑いで県警に逮捕され、13億円強とされる野崎さんの遺産の行方に関心が集まっている。

   この事件では、田辺市に全額寄付するという遺言書が見つかったとされ、市は遺産を受け取る方針だが、野崎さんの兄ら親族が遺言書の無効を求めて提訴している。元妻の逮捕で、何か影響が出るのか、親族側の弁護士に聞いた。

  • 「紀州のドン・ファン」を自称していた野崎さんの著書
    「紀州のドン・ファン」を自称していた野崎さんの著書
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田辺市に寄付でも、元妻は、約5億円を相続できる計算だった

「ようやく逮捕に至ったか」「ドラマのような展開だった」「色々な人が疑われていたけどこれで一段落でしょうか」...

   元妻の逮捕が2021年4月28日朝に報じられ、うつむいたまま連行される元妻の映像がテレビで流れると、ネットニュースのコメント欄などでは、こんな声が次々に書き込まれた。

   各メディアの報道によると、元妻は18年5月24日夜、野崎さんに何らかの方法で覚せい剤を摂取させて殺害した疑いが持たれている。県警は、元妻の認否を明らかにしていないという。今後は、元妻が覚せい剤を入手したルートなどを調べるとされている。

   野崎さんの遺産を巡っては、その死後、「全財産を田辺市にキフする」と手書きされた13年2月8日付の遺言書を託されていたと野崎さんの知人が明かした。和歌山家裁田辺支部が18年9月に形式的要件を満たしていると判断し、市は19年9月に遺産を受け取る方針を明らかにしていた。

   民法では、配偶者は、法定相続人として4分の3を相続でき、遺言が有効でも、遺留分としてその半分までを相続できる。逮捕された元妻は、遺言が無効なら約10億円を、有効でも約5億円を相続できる計算だ。

「訴訟への影響はなく、寄付の無効を求めて争っていく」

   報道によると、逮捕された元妻からは、自らの遺留分を求める申請が出たため、田辺市では、遺産総額が確定した段階で元妻側と遺産の分割協議に入る見込みだったと報じられている。確定するまでの不動産鑑定などの手続き費用は、約1億8000万円とされ、その一部を市がすでに予算化している。

   市は、土地や建物などの所有権を市に移す手続きを進めていたが、野崎さんの兄ら親族4人が20年4月、遺言執行者の弁護士を相手取り、遺言書の無効確認を求めて和歌山地裁に提訴した。遺言書が無効となり、かつ元妻への相続が行われた場合、配偶者への相続分を除いた全体の4分の1を親族で分け合うこととなる。

   裁判では、親族側は、遺言書について、コピー用紙1枚に赤ペンで走り書きされていて、野崎さんの意思で書かれたとはみなせず、野崎さん自身にも、市に寄付する合理的動機が見当たらないなどと主張。野崎さん以外が遺言書を作成した可能性が高いとして無効だとしたが、相手側の弁護士は、請求を棄却するよう求めている。

   もし元妻が刑に処せられた場合、野崎さんの遺産を相続できなくなるが、今後どのような影響が出るのだろうか。

   親族側の代理人をしている渥美陽子弁護士は4月28日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。

「訴訟への影響は、ないですね。遺言が有効か無効かを争っており、妻の方は訴訟相手にはなっておらず、争点とは関係ないからです。今後も、裁判を淡々と進めていくだけだと思っています」

   裁判の結果、もし遺言が有効とされた場合、元妻が相続できなくなっても、兄ら親族には遺留分はなく、田辺市が遺産全額を相続するという。

   次回は、6月2日に行われる第7回口頭弁論で、結審の見通しについては何とも言えないとしている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)