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宝塚トップスター2人の対照的な「退団後」 明日海りお&柚希礼音に象徴されるキャリアの多様化

   宝塚歌劇団に各組1人しかいない男役トップスター。5組5人の中でも特に卓越した人気や存在感を示したトップスターは「トップオブトップ」ともファンから呼ばれる。近年では明日海りおさん(2019年退団)と柚希礼音さん(2015年退団)が該当するだろう。2人の退団年には4年の開きがあるが、退団後のキャリアを比較すると対照的な選択をしているかのようで、そこには2人に限らないキャリアの「多様化」を見て取れる。

  • 退団後の道も多様化か(画像は宝塚大劇場)
    退団後の道も多様化か(画像は宝塚大劇場)
  • 退団後の道も多様化か(画像は宝塚大劇場)

「ZIP!」にドラマ...TVで活躍目立つ明日海りお

   朝の情報番組「ZIP!」(日本テレビ系)6月金曜日のパーソナリティーを担当していた明日海りおさんは、6月25日放送回で番組を卒業した。この日は花組時代にトップコンビを組んだ元トップ娘役の花乃まりあさんがサプライズで登場し、1日早く明日海さんの誕生日(6月26日)を祝う。視聴者からのリクエストに応えて番組エンディングで「いってらっしゃい。早く帰ってこいよ」と茶の間へ男役ボイスでささやいてみせ、総合司会の水卜麻美アナも始終「明日海ロス」におちいっているかのようだった。

   宝塚時代は2014年から19年まで5年間花組トップスターに在任、演技面が特に評価が高く、ひとたび舞台上で役に入り込むと「カリスマ」とも評された明日海さんだが、「ZIP!」で好きな「猫」にまつわるグッズをリポートしたりしている快活な姿は新鮮で、宝塚時代の舞台姿とのギャップが昔からのファンには絶妙にたまらない。

   このように退団後の明日海さんは映像メディアでの仕事が目立つ。初仕事は米ディズニー制作の実写映画「ムーラン」の主人公・ムーランの吹き替えで、20年度下半期のNHK連続テレビ小説「おちょやん」では女優・高峰ルリ子役で出演、21年冬クールのドラマ「青のSP―学校内警察・嶋田隆平―」(フジテレビ系)で小川香里役を演じる。これらが地上波ドラマ初出演になる。

   21年5月23日には「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)に初出演し、宝塚時代から好きだったというお笑いコンビ・ジョイマンのネタにも挑戦してみせた。5月には動画配信サービス「HuHu」で冠番組「明日海りおのアトリエ」も始まっている。

   一方退団後の舞台出演は21年6月までに「ポーの一族」「エリザベート ガラコンサート」の2作で、いずれも宝塚時代の当たり役を活かしたものだった。舞台以上に映像メディアでの表現追求に積極的な姿勢がうかがえる。

屈指のダンサー・柚希礼音は「マタ・ハリ」に出演中

   明日海さんより前に長期在任し、やはりトップオブトップとも呼ばれたのは元星組トップスターの柚希礼音さんだ。長身と男役らしさを体現したようなたたずまい、卓越したダンステクニックが持ち味だった柚希さんは2009年に星組トップスターに就任すると2015年の退団まで約6年、合計11作で大劇場公演の主演を務め、2014年には日本武道館で単独コンサートも行った。

   柚希さんは退団後も舞台、それも得意のダンスを活かす公演での活躍が目立つ。退団後の初出演はミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」(2015年)で、以後も様々なジャンルのミュージカル・演劇に出演、21年6月の今はミュージカル「マタ・ハリ」で主演舞台に出演している(愛希れいかさんとのダブルキャスト)。ミュージカル「バイオハザード」(2016年)のように、男役経験を活かした中性的な役柄を演じることもある。

   中性的で歌唱・演技にたけた明日海さんと、長身で体格に恵まれた柚希さんは男役としての持ち味は大きく異なる上、所属事務所も研音(明日海さん)、アミューズ(柚希さん)と異なっている。退団後のキャリアが異なるのも当然ではあるが、元トップスターに限らずタカラジェンヌの退団後の選択肢は近年多様化している。

   声優業や音楽活動に進出している七海ひろきさんや「サラリーマンたそ」のツイッターネームを持ってマルチな分野で活動している天真みちるさん、その他YouTuber・コスプレイヤー・2.5次元舞台などエンタメ各分野に進出しているタカラヅカOGがおり、舞台俳優にとどまらない。また男役といえども退団後は女性役を演じることがほとんどであり、そこでのギャップに直面する人もいる。

   宝塚時代に培ったスター性そのままに舞台出演を続ける柚希さんと、自由に活動を模索する明日海さんだが、2人の違いはタカラジェンヌの「卒業後」の多様化を反映しているかのようだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)