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「味だけで勝負して結果を出してやる」 バイトAKB出身24歳店主・梅澤愛優香が突き進むラーメン道

   アルバイト契約でアイドルグループ「AKB48」として活動していた「バイトAKB」出身で、古都・鎌倉につけ麺店をオープンさせた女性が、ツイッターで話題になっている。

   24歳にして、手がけるラーメン店は、現在3店舗というから驚きだ。元アイドルとして運営する中で、誹謗中傷に晒されたこともあったという。

  • インタビューに応じる梅澤愛優香さん
    インタビューに応じる梅澤愛優香さん
  • インタビューに応じる梅澤愛優香さん
  • 「中華蕎麦 沙羅善(さらぜん)」のつけ麺
  • 「中華蕎麦 沙羅善(さらぜん)」の店構え
  • 梅澤愛優香さんは店主をつとめる
  • アイドル時代の梅澤愛優香さん

今までにないラーメン店を作りたくて

   梅雨の晴れ間も出た2021年6月18日午後、高級感ある重厚な御屋敷のような店の暖簾をくぐると、すぐに帳場にいる割烹着姿の女性と目が合った。

   すぐにこの人が、つけ麺店「中華蕎麦 沙羅善(さらぜん)」店主の梅澤愛優香(まゆか)さんだと分かった。瞳が輝いており、優美なオーラを感じたからだ。一見華やかそうで明るい感じの印象を受けたが、物静かでおしとやかな感じもした。

   店は、JR北鎌倉駅から南へ歩いて10分ほどの古刹・建長寺の門前にある。凝った和づくりの店で、「濃厚豚骨魚介つけめん」が税込1200円から。早速、自慢のつけ麺を出してもらうと、今まで味わったことがない創作料理風の味に驚く。

   千葉県松戸市内にあるつけ麺の有名店「中華蕎麦 とみ田」に触発されたといい、似ている部分もあるが、食べた瞬間に梅澤さんならではのものだと感じた。食後に、梅澤さんにラーメンへの思いなどを聞いた。

――梅澤さんは、ご著書『ラーメン女王への道』(さくら舎)の中で、料理好きの母親の影響を受けて、小さいころから台所で様々なものを調理してきたと書いていましたが、なぜ20歳の頃にラーメン店を始めようと思ったのかお聞かせ下さい。

梅澤:食べ物の中でも、小さい頃からラーメンが大好きで、自分で作ってみたらどうなるんだろうという興味本位から家で作り始めて、いつしか自分で作ったラーメンを食べてほしいと思ったのがお店をやりたいというきっかけでした。
高校2年からアイドル時代も掛け持ちで惣菜屋さんでアルバイトをしていましたが、初めの店を4年前に20歳で始めるまで、毎日のように料理の勉強も兼ねて働いていました。
徐々にエスカレートしていくラーメン作りが家のキッチンでは収まらなくなってきたので、高校卒業から一年半年後に「いっそのこと店を借りて開業しちゃおう!」と決め、地元の神奈川県大和市の高座渋谷で物件探しを始めていました。一店舗目は好きな味噌ラーメンを看板とした「麺匠 八雲(めんしょうやぐも)」というお店を開店させました。それから1年後には東京葛飾区堀切に二店舗目となる「麺匠 八雲(めんしょうやぐも)」 を開店、本店開店からさらに2年後には、今までにない感動を生むラーメン店を作ろうと鎌倉に「中華蕎麦 沙羅善」を開店させました。

先の長さを考えてアイドルよりラーメンを取った

――ラーメン店をしていますが、なぜアイドルを続けようと思わなかったのですか?
またAKB48の姉妹グループでアルバイト求人サイトとのコラボ企画だったバイトAKBに応募した動機をお聞かせください。

梅澤:どんな女の子でも一度はアイドルに憧れると思うんですけど、私もそのうちの1人だっただけで、私の中学生ぐらいのとき、テレビを点ければ出ていたのがAKB48で、そのきらびやかな姿を見て「私もこうなりたいな」という気持ちはずっとありました。高校3年生のときに「バイトAKB募集します」という斬新なCMが流れていたのをたまたま見て、私と一緒に見ていた姉も、「応募してみたら?」と背中を押してくれて、それがきっかけでした。その応募が最初で最後ですね。

――バイトAKBは、運営側の事情もあって、半年ほどの期間で終わったそうですが、なぜその後もアイドルを続けなかったのですか?

梅澤:メンバーが50人ぐらいいたんですけど、半分ぐらいは10代前半ぐらいの若い子たちでした。とにかく若い子が多かったのもあって、私の中ではアイドルって20歳ぐらいで卒業とか引退を考える年だと思っていたんです。私も当時は18歳だったので、先を見たときに長く続けられるかどうかなっていうのを疑問に思って、先が長いのはどっちかなと考えたときに、小さい頃から好きだったラーメンを職にしたいと思い、大変だとはわかっていましたが、ラーメンの道に行くと決心しました。

――アイドル時代は、チームでやることの大切さや空間のトータルプロデュースを学んだそうですが、それもラーメン作りに生きているわけですね。

梅澤: そうですね、私を支えてくださってる社員さんと、ラーメンを食べに来てくださるお客様があって今の自分がいてなおかつ輝けてると思っていますので社員さんとお客様には心から感謝しています。アイドルというと、スタッフさんはじめ、ステージと照明と席など全部が揃ってライブが成り立つのと一緒で、どんぶり、カウンター、食材、什器などがあって、やっと1つの料理でありアイドルでいうステージだと思っています。またお客様の五感で非日常感を味わっていただきたいので、ラーメンのみならず、空間の目に見えるものから見えないものまで細部にもこだわることも味を感じる一つの大事な食材だと思って気を抜かずに徹底しています。

最初は「本人が作っていない」と誹謗中傷を受けていた

――バイトAKBには、応援ツイッターを作ってくれたファンもおられたとのことですが、今でも当時のファンが店に来たり握手したりするんですか?

梅澤:アイドル時代からのファンの方は、今は1割ぐらいで、後の9割ぐらいは、ラーメンが好きで来て下さっている方です。交流と言っても、今はアイドルではなく、1ラーメン店主としてやっているので、写真や握手は全てお断りしています。ただ、お会計のときに、お話しできる時間があるので、そのときに世間話などしています。お店を出してすぐぐらいの時は、ファンの出待ちやストーカー行為などがありました。またゴミ箱漁りもあったり大変でしたが、今では全店舗に防犯カメラを中と外に付けたりして防犯対策も徹底しています。

――注目される店主ともあって色々な誹謗中傷や嘘の風評被害がきっかけで、弁護士に相談するようになったそうですね。発信者情報開示請求を通じて複数の相手を特定したそうですが、今後、法的手段とかは取るのでしょうか?

梅澤:最初は「本人が作っていないんじゃないか」という誹謗中傷が多いなかで、ゴミ箱を営業時間外に見に来て、「スープをお店で焚いていないんじゃないか」という一般常識のない人もいました。また中傷者特定後に調べたところ、同じ人がネット掲示板でわざわざ文章の特徴を変えてまで書き込んでいたりと、特定の小人数の人があちこちで誹謗中傷していました。また2年ぐらい前に、お店を始めてから知った人がネット上で私や店を中傷し、それが名誉毀損や信用毀損にあたる行為であったので刑事告訴もしました。現在はまだ捜査中のようで、警察も色々なタイミングを見ているんじゃないかと思います。

――誹謗中傷に徹底対抗するため、2年前に梅澤さんの名前を隠して横浜で「味のとらや」を1年限定でオープンし、ネットで美味しいとの声が多いのを確かめられたそうですね。それからは、あまり気にならなくなったということですか?

梅澤:元アイドルがやってるラーメン屋という先入観を持って来る方が、最初はとにかく多く、それだけで「女の作るラーメンは美味しくない」など言われ続けてきたのもあり、だったら味だけで勝負して結果を出してやると決めて、そのお店では私が運営していることを隠し、さらに全く同じ味で「味のとらや」というお店を一年間限定で出店しました。それから一年間ずっと黒字で経営し、さらには私が運営していると公表しているお店では「そこそこだった」と、SNSで上げておきながら「味のとらや」では「美味しい!」と真逆なことを言っている人の様を見続けた結果、私のなかで様々なことが解決され、さらには心に引っかかっていた葛藤を晴らせました。それ以降は小さな事には全く気にならないようになりました。そのお店を出した経験によって、なおさら自分の作る味や、やることに自信を持てましたね。

一度決めると突き進んじゃうタイプなんです

――コロナ禍で飲食店は大変だと思います。2020年8月、鎌倉につけ麺店「中華蕎麦 沙羅善(さらぜん)」をオープンした際、SNSに宣伝をしたら「鎌倉に人を呼ぶな」と言われたそうですが、様々なお客さんへの対応に苦労もされておられるのですか?

梅澤: 経営する3店は、コロナ禍でも休業はしておらず、国の要請に従って時間短縮やアルコールの提供などにも徹底して営業を続けています。お客様や色々な方々からのお声についても真摯にお答えするようにしております。また鎌倉のお店については物件が決まっていたのはコロナ発生より前でしたので、私も決めたからには、新しい鎌倉の名物にしたいという気持ちがあり開店に向かって突き進みました。

――業界では、「ラーメンの鬼」と知られた支那そばやの店主、故・佐野実さんの妻しおりさん、とみ田店主や、芸能界では、YOSHIKIさんや篠田麻里子さん、と知己も多いようですが、今後人脈を生かすなどして、こんなラーメンや店を作りたいなどはありますか?

梅澤:もしそういう方々とやりたいことが共鳴したり、タイミングが合ったりすれば、ぜひ一緒に何かできたらともちろん思っております。YOSHIKIさんについては、フランスの有名な醸造家の方とワインのプロデュースをしており、そのワインをお店でお出ししています。お店の展望については、今ある3店舗をずっと愛されるように根付かせていくことを考えていますので、大きな事業展開は考えておりませんが、近日で言えば、8月には「中華蕎麦 沙羅善」の奥に客席スペースがあるので、そこで新しくお蕎麦を提供しようと思っています。鎌倉という地に合わせたお蕎麦を作りたいと思っています。一度決めると突き進んじゃうタイプなんですが慎重でもあるのでしっかり、ゆっくりと自分の身の丈に合う進み方をしていきたいと思っています。

――最後に皆様にメッセージはありますか?

梅澤:皆様、いつも応援ありがとうございます。私は日々お客様に喜んで頂くためにラーメンと向き合い味作りに精進しております。お店の近くへお越しの際には是非ともお立ち寄りくださいませ。

梅澤愛優香さん プロフィール
うめざわ・まゆか ラーメン店主。1996年、神奈川県大和市生まれ。藤沢市内の高校3年のときに、250倍のオーディションを突破し、バイトAKBのアイドルとして活動。その傍ら、総菜調理のアルバイトをしながら、独学でラーメン作りに励み、高校卒業後は、元アイドルの友達を社員として招き開業準備を進めた。20歳になった2017年9月、バイトなどで得た330万円の自己資金を元に、地元で現在の「麺匠 八雲」大和店をスタート。18年10月には、東京都葛飾区内で「麺匠 八雲」本店をオープンさせた。20年8月には、北鎌倉につけ麺店「中華蕎麦 沙羅善」を出し、現在は3店を経営している。趣味は、食べ歩きに旅行やディズニーリゾート巡り。