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「感銘を受けた」カズレーザーも驚き 持続可能な「ミドリムシ燃料」でフライト成功...課題は価格

   政府が2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」の目標を掲げるなか、航空業界でも二酸化炭素(CO2)の排出量削減に向けた動きが進む。そのひとつがバイオ燃料をはじめとする「持続可能な燃料」(SAF、Sustainable Aviation Fuel)の活用だ。

   2021年6月29日には国産SAFを混ぜた燃料を積んだプライベートジェットのフライトが成功。21年秋には、プライベートジェットをチャーターする際、燃料としてSAFを選べる仕組みもスタートする。現段階で国産SAFは割高だが、資金力のあるアーリーアダプター(初期採用層)の利用を促すことで、大量生産によるコスト減につなげたい考えだ。

  • 緑のスーツに身を包んでホンダジェットから降り立ったカズレーザーさん。ミドリムシから製造するバイオ燃料をPRした
    緑のスーツに身を包んでホンダジェットから降り立ったカズレーザーさん。ミドリムシから製造するバイオ燃料をPRした
  • 緑のスーツに身を包んでホンダジェットから降り立ったカズレーザーさん。ミドリムシから製造するバイオ燃料をPRした

緑藻、木くずを使った定期便のフライトも

   国際民間航空機関(ICAO)は、航空会社に対して(1)燃料効率を毎年2%改善すること(2)2020年以降、二酸化炭素(CO2)の総排出量を増加させないこと、を航空会社に求める方針を13年に採択している。このことが、SAFの採用を後押ししている。

   6月4日には、国土交通省航空局の飛行検査機が、ベンチャー企業「ユーグレナ」がミドリムシ由来の油脂と使用済み食用油から製造した国産ジェット燃料を使って飛行。ミドリムシは育つときに光合成をしてCO2を吸収するため、石油よりもCO2排出を大幅に減らせる。

   国内では国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)がSAFの技術開発に乗り出しており、大手航空会社のフライトでも国産SAFを使った取り組みが進んでいる。

   全日空(ANA)は6月17日、緑藻の一種、ボツリオコッカスを利用してIHIが製造した燃料を国内線の定期便(羽田発伊丹行き、NH31便)に積んで飛行。日本航空(JAL)も同じ日、IHI製に加えて、三菱パワー、東洋エンジニアリング、JERAの3社が木くずを原料に製造したSAFの2種類を積んで国内線をフライトした(羽田発新千歳行き、JL515便)。

   6月29日には、投資家の千葉功太郎さんらが所有する小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」初号機が、ユーグレナ社製のSAFを積んで羽田空港に到着。お笑いタレントの「メイプル超合金」カズレーザーさん(36)を招いてPRイベントも行われた。カズレーザーさんは、トレードマークの赤ではなく、ミドリムシにちなんだ緑のスーツで登場。「勝負服は緑にしてもいいのでは。それくらい、今回は感銘を受けました」と、フライトの成功に驚嘆していた。

「タニマチ、支援してくれる人が、必ずテクノロジーのイノベーションには必要」

   ユーグレナ社によると、SAFによるフライト実績は全世界で34万回を超えるが、国産SAFによる民間フライトは今回が5例目。この事例の少なさがコスト高にもつながっている。

   フィンランドのネステ社のプラントでは廃油を原料に年に240万キロリットルのバイオ燃料を製造でき、販売価格は1リットル200キロ以下。これに対して、ユーグレナ社が横浜市内に持つ実証プラントでは年に125キロリットルしか製造できず、製造コストは1リットル1万円だ。

   ユーグレナ社の出雲充社長は、

「これを1000~2000倍大きい工場にしたら、必ず価格は1リットル100円とか200円とか、今皆さんが使っているのと同じような、常識的な価格にできる」

と話す。「そのために必要な技術が一気通貫で出来上がった」として、「これを安くすることは、本当に、そんなに難しくないので、自信がある」と意気込んだ。

   千葉さんらが所有するホンダジェットは、21年秋に一般向けのチャーターフライトのサービスを始める。その際に、これまでの燃料とユーグレナ社製の燃料を選べるようになる。千葉さんは

「どの製品でも大量生産したら安くなる。でも、少量は高い。でも、少量で高いところで買ってくれるユーザーがいるから大量生産に結びつく」
「(開発段階から事業化段階の間にある)『死の谷』を越えるためには、最初に製品を買って、ある意味のタニマチ、支援してくれる人が、必ずテクノロジーのイノベーションには必要だ」

などと話し、「ファーストペンギン」と呼ばれる、最初にリスクを取る人への期待を寄せた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)