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高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
東京五輪さなかの「都新規感染者3000人超え」はどう考えればよいか

   東京都は2021年7月28日、都内で新型コロナウイルスの感染が確認された人は初めて3000人を超えて3177人だったと発表した。これをどう考えたらいいのだろうか。

   東京五輪については、始まる直前まで、マスコミは反対報道が多かった。しかし、五輪が始まり、日本選手の活躍が続くと、手のひらを返したように、メダルラッシュなどと報道した。特に、テレビのワイドショーでは、コメンテーターが五輪以前の五輪反対を節操なく変え、五輪応援になった変節ぶりは酷かった。

   今の新規感染者数の急増をみていると、まさかありえないが、ワイドショーは再び手のひら返しをして、五輪批判に転じるのではないかとさえ思えてしまう。

  • 国立競技場
    国立競技場
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新規感染者数の急増がマスコミで強調されているが...

   ちなみに、2ヶ月前に筆者は感染予測をしているが、五輪時に「もし新たな波が来ても、100万人当たり25~38人程度(全国で3000~4500人程度)だろう」と書いている。厚生労働省によれば、開会式の7月23日の新規感染者は4204人、7日間移動平均で3935人なので、筆者の予測はいちおう許容範囲内だ。

   しかも、予測された波の内訳を見ると、過去と比べて顕著な差がある。つまり、新規感染者増のほとんどが若い人によるもので、ワクチン接種が高齢者にはかなり行き渡るので高齢者ではそれほど増加しないとも予測した。

   厚労省の発表によれば、7月27日の全国の新規感染者数は7000人を超えているが、移動平均では6000人程度だ。新規感染者数は急増しており、これがマスコミ報道で強調されている。しかし、より重要な重症者数、死亡者数はそれぞれ500人、10人程度であり、これは過去の1月の3波や5月の4波のピークの半分以下の水準だ。

   なお、人口あたりの新規感染者数と新規死亡者数、それに、100人当たりのワクチン接種状況のG7における国際比較をみると、いずれも日本はG7の中では優等生である。

新規感染者数が急増しているのに、重症者数が増えない理由は

   なぜ、新規感染者数が急増しているのに、重症者数が増えない理由は簡単で、2ヶ月前にも予想したとおり、ワクチンが順調に接種され、新規感染者のほとんどはリスクの低い若者で、リスクの高い高齢者はそれほど多くないからだ。

   ちなみに、東京都でみると、28日の新規感染者は3177人(移動平均では1954人)だが、そのうち60才以上は172人(移動平均では98人)で、1月の第3波の三分の一程度だ。

   重症者数や死者数が著しく多いと医療逼迫やひいては医療崩壊をもたらすので大変だが、ワクチン接種のおかげで、それらのリスクの高い高齢者の感染が抑えられているので、すぐには大事に至りにくいと、筆者は2ヶ月前から思っていた。それは今も同じだ。

   7月27日、東京都福祉保健局の吉村憲彦局長は、重症化のリスクの高い高齢者の割合は少なくなり、病床の確保も進んでいるとして、「年明けの第3波のときとは本質的に異なっているので、医療に与える圧迫は変わっている。いたずらに不安をあおることはしていただきたくない」と述べている。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。