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CFに1.9億円!戦艦大和の主砲作った「旋盤」移設保存へ支援続々 所有会社「由緒ある機械」

   史上最大の主砲を装備した旧日本海軍の戦艦「大和」の主砲砲身を製作した旋盤、それが2021年も現存していた。この旋盤をゆかりの地に戻すためのクラウドファンディング(CF)が8月3日に始まるや、目標額を軽々と突破し支援総額は1億円以上に達している。

  • 砲身工場にて(資料提供:大和ミュージアム)
    砲身工場にて(資料提供:大和ミュージアム)
  • 砲身工場にて(資料提供:大和ミュージアム)
  • きしろ社に現存する15299機(資料提供:大和ミュージアム)

製造から80年超の大型旋盤

   このプロジェクトは、「大和」の主砲身を製作した旋盤「15299機」を「大和」生誕の地・広島県呉市の大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)に移設保存する費用を募るものである。大和ミュージアムが企画したこのCF、最初の目標額は4800万円だったが、募集開始1日で目標額を突破し第3目標の1億円をも突破、8月19日時点で1億9000万円を超えている。

   CFの支援者からは「21世紀まで稼働していたことに驚きました。是非とも貴重な資料として保存に尽力いただければと思います」「旋盤も一度失われるともう二度と戻ってきません。末永く大切に保存されてほしいです」といった応援コメントも投稿されている。

   「大和」は戦艦史上最大の口径である46センチ3連装主砲を3基装備。1937年に起工し1941年12月に呉海軍工廠で竣工した。この巨大主砲の砲身を製作した旋盤「15299機」が兵庫県明石市の機械部品製造会社「きしろ」に現存していた。

   15299機はドイツの機械メーカー・ワグナー社から1938年に輸入され、呉海軍工廠で用いられた。戦時中は同型機を含め2機が稼働していたといわれるが、1機が終戦後に破壊され、残る15299機が神戸製鋼所高砂製作所に払い下げられ、工作機械として使われ続けた。

   15299機は船舶用エンジンのクランクシャフト旋削に用いられていたが、2013年に設備更新に伴って退役、きしろ社播磨工場に保存されていた。

スクラップを免れた機械遺産

   きしろ社と大和ミュージアムの間で移設保存の合意がなされていたものの、博物館の入場者減少や、呉市の新型コロナウイルス対策費捻出のために移設費の捻出が難しくなり、CFにより支援を募ることになった。

   戦艦という艦種そのものが21世紀には消失し、大口径の砲を製造する技術自体が失われた「ロスト・テクノロジー」となっている。15299機は当時の技術をとどめる機械遺産としての価値を持っている。

   J-CASTニュースの取材に応じた、きしろ社で15299機の保存に携わっていた担当者によると、大和ミュージアムからの譲渡の打診は稼働していた当時からなされていた。社員教育等の用途に使いつつ、退役後も「由緒ある機械でスクラップするのも申し訳ないですから保存していて大和ミュージアムへの寄付の協議を進めていたところでした」と話した。CFは9月30日まで募集予定で、15299機の移設作業はその後に始まる計画である。