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「鶏のレア唐揚げ」本当に大丈夫? 番組紹介でネット騒然も...店主「食中毒一度もない」

   大阪・朝日放送のバラエティー番組で紹介された「鶏のレア唐揚げ」について、肉の中心部が生っぽく見えるとして、食中毒の恐れがあるのではとツイッターで指摘が相次いでいる。

   唐揚げを出す店では、「基準はクリアしている」と取材に説明するが、大阪市では、「加熱が不十分だと危険はある」としている。朝日放送は、「規制などを調べて、問題はないと判断した」と説明した。

  • レア唐揚げを紹介した朝日放送番組のサイト
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  • WA鶏BARのインスタグラムでも紹介

芸人の1人は、「めちゃくちゃ新鮮な鶏使っている」と紹介

   「分かる、レア。こら凄いなあ~」。朝日放送で2021年8月30日深夜に放送された「なるみ・岡村の過ぎるTV」では、スタジオに届けられた揚げたての唐揚げを食べ、出演者の1人がこんな感想をもらした。

   この日は、お笑い芸人4人が「関西のウマ過ぎる唐揚げベスト20」を報告し、大阪・心斎橋に本店がある「WA鶏BAR」が提供する、中心部がレア状態の「ムネポン唐揚げ」が1位に選ばれた。

   芸人の1人は、「めちゃくちゃ新鮮な鶏使っている」と紹介し、別の出演者は、「う~ん、おいしい」と感想を話していた。

   鶏肉については、鶏刺しなどの生や加熱不十分な料理を食べると、下痢、腹痛などを起こすカンピロバクター食中毒になると、厚労省がツイッター上などで注意を呼びかけている。抵抗力の弱い人なら重症化する危険性もあり、感染の数週間後には、手足がまひしたりするギラン・バレー症候群を発症するケースも報告されているそうだ。

   食中毒を予防するためには、中心部を75度以上で1分間以上加熱することが重要だとしている。

   それだけに、放送後からツイッター上などでは、レア唐揚げについて、「それ大丈夫??」「腹下すぞ」「ちょっと怖い」などと懸念する声が次々に書き込まれている。

   WA鶏BARの公式サイトなどでは、2011年9月に創業してから、このムネポン唐揚げを提供し続けているとし、中心部がレア状態の写真も大きく出している。食中毒の恐れがないのかについて、店のオーナーは21年9月1日、J-CASTニュースの取材に次のように説明した。

店側「当店は、加熱の基準をクリアしている」と説明

「保健所から示された以前のルールで、油の温度が90度以上で1分間以上が必要だと言われています。当店は、その基準をクリアしています。生食の提供ではなく、火を入れて油で揚げていますので、問題ないとの認識で10年間やっています。保健所が過去に衛生管理チェックに来ていましたが、『これなら問題ない』と言っていました」

   鶏肉の中心部を75度以上で1分間以上加熱しているかについては、こう話した。

「全部の温度を測っているわけではないので、75度以上あるか分からない部分もあります。食べログで有名な関東の焼き鳥屋も、肝を焼くときに中をレアにするだけの技術を持っていました。当店も、独自の調理法でやっており、店として食中毒対策をしています。また、スーパーに売っている鶏肉ではなく、特別なルートで市場から食材を調達しています」

   この10年間で食中毒が出ていないのかについては、こう答えた。

「食べた翌日になって、『胃が痛くなった』と連絡してきたお客様はおられましたが、その方だけで他のお客様からは連絡がありませんでした。鶏肉ですので、体調不良を訴えた方が1人もいなかったわけではありませんが、病院や保健所でも、レアが原因ではないとの判断でした。食中毒が確定したことは一度もありません。食中毒になるかは、食べた方の体調によりますので、気にするお客様にはお勧めしていません」

   朝日放送に紹介された経緯については、次のように明かした。

「こういう唐揚げですから、色々なご意見があると思いまして、オファーが来たときに、『問題がないか、調べていただくようお願いします』と伝えました。朝日放送さんからは、しばらくして、調べた結果で問題ないとの判断になったと聞きましたので、今回お受けしました」

   レア唐揚げを店で提供し続けていることについて、大阪市の生活衛生課は9月1日、取材にこう答えた。

大阪市は「新鮮な鶏肉ほど菌が着いている」と警告したが...

「鶏肉に関して、法的に規制するものはありません。こちらとしては、中心部を完全に加熱して提供してほしいと、食品衛生法における食の安全の意義に基づいて、機会あるごとに様々な店に指導しています。ただ、指導に応じない店はゼロではありません。客などから届け出があれば、保健所が調査を行い、食中毒があったと断定されれば、営業停止などの処分をしています。このお店は、食中毒があったと断定したことはありません」

   過去に、油の温度が90度以上で1分間以上が必要としていたかについては、「そうした話をしたのかは分かりませんが、レア状態であるのが事実であるならば、中心部まで加熱してほしいと指導することになります」と話した。保健所がこの店について問題ないとの見解を示したかについては、「事実関係は定かではありませんが、食中毒が多発している状況ですので、そう言うことはないはずだと思います」と説明した。

   鶏肉が新鮮であればいいのかについては、「新鮮だと提供されている店も多いようですが、カンピロバクター菌は、生きている家畜にいますので、新鮮な鶏肉ほど菌が着いていることになります」と否定した。

   レア唐揚げを番組で紹介したことについて、朝日放送の広報部は9月1日、取材にこう見解を明かした。

「制作現場に確認しましたところ、放送で紹介していいいか、食品衛生法上などの規制を調べた結果、問題ないと判断したということです。放送では、鶏肉全般についていいと言っているわけではなく、その店を紹介していいかを考えました。お店にも確かめて、もともとお刺身で食べられる生食用を唐揚げにしているとのことでした。十分新鮮な鶏肉を使用しているとのことでしたので、提供後にすぐに食べていただくのならよく、衛生上の問題はないと判断しました」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)