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「まるで女性専用車」不適切投稿なぜ連発? 尾瀬ガイド協会、「5000字の反省」で示した4つの原因

「アフガニスタンやミャンマー、ロヒンギャに比べれば幸せ」
「現在、たくさんのお花が開花中!まるで、女性専用車です」

   2021年8月、新潟、群馬、福島の3県にまたがる「尾瀬」のガイド協会による複数のツイートが波紋を呼んだ。差別的な内容が問題視され、その後の謝罪投稿にも批判が集まった。

   なぜ「不適切投稿」の連鎖は起きてしまったのか。9月2日、協会は5000字を超える文書を通じ「反省」を示した。

  • 「まるで女性専用車」不適切投稿なぜ連発?
    「まるで女性専用車」不適切投稿なぜ連発?
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「なぜ、『ベラルーシは美人が多いのか?』」過去ツイートにも批判

   尾瀬は日本百景にも選定されている高層湿原。関東でも有数の人気観光地として知られる。協会は尾瀬のガイド認定制度運用のために設立された団体で、ツイッターでは尾瀬に関する情報の発信を行っていた。

   協会ツイッターは8月21日、尾瀬の写真とともにこんなツイートを投稿した。

「例え、都市部がほぼほぼロックダウン状態になったとしても、貴方の心と尾瀬の湿原は広大です。アフガニスタンやミャンマー、ロヒンギャに比べれば幸せです」

   紛争で政情不安定な国々を引き合いに出したこのツイートは、SNS上で「不適切」だとして多くの批判を集めた。同時に、協会が投稿していた過去のツイートも問題視された。

「現在、たくさんのお花が開花中!まるで、女性専用車です たくさんの『とってもいい香り』思わず、息を吸い込みます」(21年7月14日)
「貴方だけにこっそりお伝えします ベラルーシの女性の平均身長は 166cmです。ベラルーシはロシアやウクライナ、ポーランド、リトアニアに囲まれた国です。このあたりは美人が多い国で有名です」(21年8月11日)
「貴方だけにこっそりお伝えします なぜ、『ベラルーシは美人が多いのか?』お母さんもお父さんも美人(イケメン)が多いからです」(21年8月12日)

「謝罪します もう仕分けありませんでした」

   批判を受け、協会は8月21日にツイッターを更新。次のような文章を投稿し、謝罪した。

「謝罪します もう仕分けありませんでした」

   翌22日、ツイッターには再度謝罪文が投稿された。

「このたびは不適切な表現で皆様に不快な思いをおかけし大変もう仕分けございません 深く反省しております。再度、謝罪いたします。しばらくツイートを控えます 今後とも尾瀬をよろしくお願いします」

   2つのツイートはいずれも「申し訳」が「もう仕分け」と誤記されていた。ツイッター上では「何の謝罪だ」「本当に反省してるんだろうか」と厳しい指摘が相次いだ。

   そうした中、公益財団法人「尾瀬保護財団」は23日、一連のツイートを受け、ガイド協会に抗議文を送付したと公表。「セクシャルハラスメント、容姿による差別(ルッキズム)、女性差別、民族差別、人種差別など、看過することができない人権侵害であると同時に、ガイドの利用に当たって特定の方々に強い不安を与えてしまう」と問題視した。

   23日、協会はツイッターアカウントを停止。公式サイト上には石塚照久会長による文書が掲載された。石塚会長は「多くの方に不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。

   「セクシャルハラスメント、人種差別など、人権侵害に受け取られかねない表現を含む不適切な内容であり、結果的に尾瀬のイメージを毀損することにもつながってしまいました。また、それらの発信を防ぐ体制が無いことにも問題がありました」と投稿内容とともにガバナンス体制にも問題があったとし、「SNSの適正な運用が図れるよう、組織体制を見直し、再発防止に努めます」と今後について伝えていた。

   なお、文中の「人権侵害に受け取られかねない表現」という箇所は、24日になり「人権侵害の表現」へ変更されている。

不適切投稿をもたらした「4つの問題点」

   9月2日、協会は公式サイト上に「当協会公式アカウントによるTwitterにおける多数の差別的投稿に関して」と題した文書を公開した。5000字を超える文書の中には、一連の不適切投稿について、弁護士関与のもとで調査した結果が記されていた。

   協会は今回の問題を引き起こした原因が4つあるとした。1つ目は「投稿者はもちろん、当協会の役員も、人権感覚や差別に関する意識が低かったこと」。協会は「投稿者自身に人権感覚や差別に関する意識が低かったことはいうまでもありません」としつつ、それを管理する役員の「人権感覚」にも問題があったとした。

「本件各投稿の問題点が指摘された後、当協会専務理事が担当者にそのまま謝罪文を書かせたこと、その謝罪文の内容もチェックしていなかったこと、同役員がホームページ上に掲載した謝罪文の内容も不十分なものであったこと、身内をかばうような投稿を行ってしまったこと等からすれば、当協会の役員自体、豊かな人権感覚を有していたとは到底いえるものではありませんでした」

   2つ目は「SNSの運用を担当者のみに任せ、他の者のチェックがなかったこと」。協会は「投稿内容については、しかるべき立場の複数名で慎重に精査する必要がありました」としつつ、「これを怠り、一人の人間が、何のチェックも受けずに自由に投稿させていた」と協会内の体制を問題視した。

「信頼回復への道のりは極めて厳しい」

   3つ目は「SNSの影響等の知識が乏しかったこと」。各企業や団体はSNS運用のため研鑽を積んだり、研修を行ったりする一方、協会では「自らと同じ価値観を持った仲間うちでの閉鎖的な会話」と同じように投稿を行っていたとした。

   そして4つ目は「協会としての危機管理が準備できていなかったこと」。謝罪ツイートを何度も投稿するなど、対応が二転三転したことは、結果的に「当協会の信用を大いに失墜させ、傷ついた方々をさらに苦しめることになってしまいました」と振り返る。また、今回のような「緊急事態」で「それぞれの役員が場当たり的に動いた」ことが、「尾瀬を毀損し、人々をさらに苦しめ」たとした。

   今回の問題を受け、協会構成員による人権意識向上のための講習会・勉強会を開催するほか、SNS・ホームページでの複数名チェック体制の構築、専門研修などを行うとした。

   そして、ツイート投稿者の会員資格はく奪と理事・広報委員長の解任、会長の辞任、今回の問題で「身内をかばうかのような謝罪文を作成・掲載した」専務理事の辞職など、厳しい処分が下ることになった。

   協会は文書の最後を、次のように締めている。

「当協会は、今回の不祥事により、たくさんの方々を傷付け、ご迷惑をおかけしてしまいました。当協会として、できる限りの取り組みを行ってまいりますが、失われた信頼・信用は一朝一夕で戻るものではありません。ゼロからではなくマイナスからのスタートであること、信頼回復への道のりは極めて厳しいものであることを当協会全体として重く受け止め、信頼回復に努める所存です。このたびは本当に申し訳ございませんでした」