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「シェアサイクル」帰宅難民の「救いの足」に 東京で震度5強地震、公共交通ストップで利用急増

   2021年10月7日夜、千葉県を震源に発生した地震の影響で、首都圏の鉄道路線では運転の見合わせが発生した。帰宅困難者が続出する中、力を発揮したのが「シェアサイクル」だった。

   大手シェアサイクル事業者では、地震発生直後から都心部のポートにおける利用数が急上昇。公共交通網が麻痺する中、家路へ着くための手段として活用された。

  • ドコモバイクシェアの自転車
    ドコモバイクシェアの自転車
  • ドコモバイクシェアの自転車
  • 東京都心部におけるドコモバイクシェアのポート状況の変化。数字は貸し出し可能な自転車の台数を指している(編集部作成)

都心部のポートから自転車が消える

   7日22時41分頃、千葉県北西部を震源に、東京や埼玉で最大震度5強を観測する地震が発生した。地震の影響で首都圏の鉄道路線は軒並み運転を見合わせ。運転再開が日付を跨ぐ路線も多かった。帰宅困難者も出ることになり、テレビ中継では駅前でタクシーを待つ人々の列がたびたび映された。

   そうした中、帰宅手段として活用されたのがシェアサイクルだった。指定ポート間で自転車の貸し借りが可能なシェアサイクルは、本来鉄道やバスなど公共交通が手の届かない、ちょっとした距離の移動時に重宝される存在。赤い自転車の「ドコモ・バイクシェア」、白い自転車の「ハローサイクリング」が知られるところだ。

   ツイッター上では7日深夜、東京都心部にあるシェアサイクルのポートが軒並み「空っぽ」になっていると話題になった。記者が8日1時30分頃、「ドコモ・バイクシェア」のアプリでポートの貸し出し状況を確認したところ、都心部では皇居の周りに円を描くように、貸し出し可能な自転車がないことを指す「0」の表示が並んでいた。

   ドコモ・バイクシェア(東京都港区)の広報担当者は8日、J-CASTニュースの取材に対し、地震発生後に同社の自転車を使って帰宅した人が多かったと説明。具体的には港区から大田区へ向かうように、都心部から周辺のエリアへ移動する動きが目立ったとした。今回のように都心部から一斉に自転車が消えるケースは、今までなかったという。

   ハローサイクリングを展開するOpenStreet(東京都港区)の広報担当者も取材に対し、地震発生後、首都圏では通常と比較して約3倍の利用があったと説明した。

大震災時には未普及だったシェアサイクル

   一夜明けた8日朝も、シェアサイクルが力を発揮した。地震の影響を受け、鉄道路線ではダイヤの遅れや駅への入場規制が発生。「いつも通りの通勤」が難しい中、今度は住宅地から都心へと自転車を走らせる動きがみられた。

   OpenStreetの担当者によると、8日朝は通常と比較して約1.5倍の利用があったという。また、7日夜には「空っぽ」だったドコモ・バイクシェアの都心部のポートは、8日10時30分頃には多くのポートで貸し出し可能に。担当者によると、自転車の偏りをなくす再配置や、元からの通勤需要の影響もあったというが、電車の代替手段として使われた可能性もあるとした。

   東京都内で震度5強の地震を観測したのは、11年3月11日の東日本大震災以来のこと。当時も公共交通網が寸断され、帰宅困難者が続出した。その1か月後、11年4月から横浜市で実証実験を開始したのがドコモだった。12年から東京都区部でも導入され、15年からは現在のドコモバイクシェアが運営。21年現在では都内の至る所で赤い自転車を目にするまでになった。

   ドコモ・バイクシェアの担当者によると、災害時には道路状況の悪化などが懸念されることから、今回のような緊急利用は想定していなかったという。利用者には「状況を見ながら使っていただきたい」とした。

   なお、ドコモ・バイクシェアでは今回の地震発生後に都内などで自転車を利用したユーザーに向けて、利用料金の減免措置をおこなっている。

(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)