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農産物は「福島の名前で売るのやめた方がいい」 波紋広げるひろゆき発言、福島県の見解を聞いた

   2ちゃんねる(現5ちゃんねる)開設者で実業家の「ひろゆき」こと西村博之氏の福島県産農産物への持論が、インターネット上で議論を呼んでいる。

   ひろゆき氏は2021年9月24日放送のAbemaTVのニュース番組「ABEMA Prime」で、福島という名前を使うことを止めた方がいい、などと主張。「福島って名前のついている農作物を食べないって僕は当たり前だと思うんです」ともコメントした。

   番組で伝えられたこうした発言内容について、生産者からは反発も広がっている。福島県はどう考えるのか。県庁の風評・風化戦略室に聞いた。

  • 西村博之氏
    西村博之氏
  • 西村博之氏

ひろゆき「もう違う名前にした方がよくないですか」関係者は反発

   9月21日に米国の輸入規制が撤廃され、日本から福島県産の食品も対米輸出が可能になり、またEUも10月10日から輸入規制を一部緩和する意向である。

   この話題を取り上げた9月24日放送のABEMA Primeでは、福島の生産者・専門家らが出演したが、ひろゆき氏は冒頭、「例えばチェルノブイリ産の米とか積極的に買う人っていないと思うんですね。福島って名前のついている農作物を食べないって僕は当たり前だと思うんです」と口火を切る。その後も

「米は福島産以外にもおいしい米がいっぱいあるわけだから、『じゃあ、他のでいいです』ってなるのは当然の感覚だと思うんです。その当然の感覚を理解しないで、『安全です』っていうのをウリにしている限り無理」
「綺麗事として『福島』という名前で売るのをやめたほうがいいと思うんですよね。実際10年経っても解決しなかったわけじゃないですか。多分、15年経ってもマイナスのイメージは変わらないと思うんですよ。福島っていう名前じゃなくて郡山とか別の名前で売った方がまだ売れると思う」
「福島っていう名前を使わなければみんな幸せになるなら、もう違う名前にした方がよくないですか」

といった主張を続けた。

「実情を知らない」福島の農業関係者は反発も

   番組を見た福島県の農業関係者からは反発も出ている。

   福島県在住で震災後に東北の農産物のブランディングに携わり、現在は福島県浜通りのまちづくりもサポートしている一般社団法人NoMAラボ代表理事の高橋大就氏は26日、「笑いながら、私の福島の大切な生産者仲間に対してこの言い草」とツイッター上でひろゆき氏の態度を批判した。

   福島県西郷村在住で地域振興イベントなどを主宰する菊池奈穂さんも27日、「ひろゆき氏の『福島って表示をなくす』という内容の動画が物議をかもしておりますが、やんや言う人に限って実情を知らないし、食べたこともないし、『風評被害が~』という風評加害をするだけして いいことやった気になってるんだろうな」とツイートしている。

   ひろゆき氏はABEMA Primeでの発言後も、前述のような持論を崩しておらず、9月27日にもツイッターで、上述の高橋氏のツイートに反応する形で、

「チェルノブイリ産の小麦を積極的に食べてる日本人が少ないように『FUKUSHIMA』という名前で海外で農産物を売るのは難しいという話です」

と投稿。また、ひろゆき氏の日常を描いたマンガ「だんな様はひろゆき」作画担当のわこ氏が、番組での発言を批判するツイートをしたことに対しても、

「海外の人が "FUKUSHIMA"の農産物に忌避感を持つという事実を伝えると、なぜ怒られるのかわかってないおいらです」
「福島の事故から10年経っても福島の農産物は、他の産地よりも安く買い叩かれてるわけで、やり方変えないと農家は辛いままでは無いですか」

と発信している。

福島県の見解は

   J-CASTニュースは、ひろゆき氏の前出のような発言に対する見解と、現在行っている取り組みを福島県に聞いた。

   福島という名前の使用を止めるべきだ、などというひろゆき氏の発言をどのように受け止めるか、福島県風評・風化戦略室に聞いたところ、

「徹底した食品の検査とその発信、認証GAP取得の積極的な推進など、安全・安心の取組を継続していくことはもとより、品質の向上、産地の競争力強化を一層進め、生産者の誇り『ふくしまプライド。』が詰まった福島県産農産物の販売の更なる促進に取り組んでまいります」

と答えた。「認証GAP」とは、放射性物質のモニタリング検査・拡散抑制対策を農産物の生産工程に盛り込んでいることの認証システムのことだ。

   そのほかにも風評・風化戦略室は、消費者庁の調査を引用する形で、食品中の放射性物質を気にする顧客へのアンケートで、「福島県産品の購入をためらう」と回答した人の割合は2014年10月時点の調査では19.6%だったが、2021年2月時点では8.1%となっているとして、

「環境回復や徹底した食品の検査とその発信、安全・安心の確保に向け、継続して全力で取り組んできた成果であると考えています」

と答え、成果を強調した。

   海外に向けても、GAP認証取得の成果や、県や農水省を通じてのモニタリング検査結果の公表や安全性の発信を続けているとして、「安全・安心を確保する取組を進めるとともに、正確な情報発信や県産農林水産物の魅力の発信を強化する」ことを推進してきたという。