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水産庁「飯テロ」ブログが反響 攻めた企画、背景にコロナ禍の消費減...農水省YouTubeから刺激も

「ほんと飯テロだわ」
「許すまじ水産庁! 海鮮食べたい!!」

   2021年10月、SNS上ではこんな叫びが連日飛び交っている。水産庁公式サイトのコンテンツ「1か月毎日海鮮丼チャレンジ」に掲載されている、おいしそうな海鮮丼を見たユーザーたちの反応だ。

   昨年8月には霞が関初のVTuberを誕生させた水産庁。「攻めた」コンテンツを続ける背景には、同庁を外局として置く農水省からの「刺激」があった。

  • 水産庁公式サイトの海鮮丼チャレンジが「飯テロ」と話題に(画像は水産庁公式サイトより)
    水産庁公式サイトの海鮮丼チャレンジが「飯テロ」と話題に(画像は水産庁公式サイトより)
  • 水産庁公式サイトの海鮮丼チャレンジが「飯テロ」と話題に(画像は水産庁公式サイトより)

「凝りすぎず、簡単に作れる」海鮮丼を毎日投稿

「休暇を利用して、房総に釣りに行ってきました!良型イサキをゲット!船上で丁寧に神経締めしたイサキの上品な甘みは絶品そのもの!たくさん釣れたので熟成して、毎日味の変化を楽しみます!」(11日目 釣りイサキ丼)
「スーパーでキレイなコハダを発見!身側を骨切りして、塩して酢締めに。間違いないですね!!!」(14日目 コハダ丼)

   水産庁公式サイト内のブログ「アワビのステーキ食べてみたいよね」で10月1日から更新されている「1か月毎日海鮮丼チャレンジ」。親しみやすい語り口の解説文とともに、彩り豊かな海鮮丼の写真が毎日掲載される。

釣りイサキ丼(左)とコハダ丼(右)(水産庁公式サイトより)
釣りイサキ丼(左)とコハダ丼(右)(水産庁公式サイトより)

   コロナ禍による飲食店での魚の消費減少を受け、家庭でもっと魚を食べてほしいという思いから始めた。海鮮丼は「魚」を使っていればなんでもOK。「ヒラメ漬け丼」(8日目)、「カツオのタタキ丼」(9日目)、「イズカサゴとウッカリカサゴの唐揚丼」(23日目)など調理法も様々だ。

   連日投稿されるおいしそうな海鮮丼の写真に、SNS上では「ほんと飯テロだわ」「許すまじ水産庁! 海鮮食べたい!!」と話題に。10月25日、J-CASTニュースが水産庁の広報担当者に取材すると「海鮮丼を作りましたよ、と写真を寄せてくれた方もいる。それを見ると非常にうれしい気持ちになります」と反響への喜びを語った。

   水産庁の職員たちがスーパーや鮮魚店、釣りなどを通じて魚を調達。そこから自らの手でさばき、海鮮丼を作っている。大事にしているのは「凝りすぎず、簡単に作れる」ことだ。「魚を載せるだけのものや、あるいは少しだけ味付けをしたり。薬味も(しょうがなどの)チューブや、手に入りやすい大葉を使っています。普段通りの調理で、おいしそうな海鮮丼を作ることを心がけています」(広報担当者)

   そんな担当者が語る「一番の丼」は、19日目に掲載した「ごまあじ丼」。一尾170円のアジを、すりごま、醤油だれに漬け込んで「ごまアジ」にした。最初はそのまま、途中から「お茶漬け」として食べた。「一匹買うことで二回も楽しめる。安い中で満足感も味わえる、思い入れのある丼です」(広報担当者)

お茶漬けにして食べた「ごまあじ丼」(水産庁公式サイトより)
お茶漬けにして食べた「ごまあじ丼」(水産庁公式サイトより)

「佃煮百景」「霞が関初のVTuber」...攻めた取り組み連発

   実は水産庁、「1か月毎日海鮮丼チャレンジ」の他にも、数々のユニークな企画にチャレンジしている。

   例えば、公式ブログ「アワビのステーキ食べてみたいよね」では、「佃煮の世界」というコンテンツを展開。水産庁の職員が「佃煮エージェントK」に扮し、佃煮のディープな魅力を伝えるというものだ。

   佃煮の歴史、作り方、佃煮料理のレシピなどが掲載されている中、異彩を放つのは「佃煮百景」という特集。琵琶湖の淡水魚「ビワヨシノボリ」を使った「さんしょうごり」や、茨城・霞ケ浦で採れる「子持ちはぜ」の佃煮など、全国各地の佃煮をご飯の上に載せて、連日写真で紹介している。「海鮮丼チャレンジ」とは別の意味で、インパクトのある光景だ。

日本全国の佃煮を紹介する「佃煮百景」(水産庁公式サイトより)
日本全国の佃煮を紹介する「佃煮百景」(水産庁公式サイトより)

   昨年8月には「霞が関初」となるVTuber「デジモちゃん」が始動した。デジモちゃんを起用した広報動画「魚が君に届くまで」では、視聴者と一緒に魚や海、水産の魅力をストーリー形式で学んでいく。これまで5話が投稿されている。

霞が関初のVtuber「デジモちゃん」を起用した広報動画「魚が君に届くまで」(農水省公式YouTube「maffchannel」より)
霞が関初のVtuber「デジモちゃん」を起用した広報動画「魚が君に届くまで」(農水省公式YouTube「maffchannel」より)

   「攻め」の姿勢の背景には、水産庁を外局として置く農水省の存在がある。同省は昨年1月にYouTubeチャンネル「ばずまふ(BUZZ MAFF)」を開設。「農水省あるある」を歌った動画や、若手官僚の暮らしぶりを映した動画など、コミカルで親しみやすいコンテンツが注目を浴び、多くのメディアに取り上げられた。29日時点で12.2万人の登録者を抱えている。

   水産庁の担当者も、農水省の活動には「刺激を受けている」と話す。

「独自の発信をしていけば、(官公庁のコンテンツも)しっかり見てもらえる。水産庁としても独自に企画を考えてやっていこうということになりました。今回の『1か月毎日海鮮丼チャレンジ』もその一つです」
「今後もFacebookやブログなどを通じ、『魚を食べたい』『魚って面白いんだな』と思う企画を出来ればと思います。(農水省に)負けないよう、しっかりやっていきたいですね」

(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)