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「水ダウ」抗議の日本吃音協会、HP「生まれてこなければよかった」に批判→削除 「極めて不適切だった」と理由説明

   「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の番組内容に関し、NPO法人日本吃音協会がTBSに抗議文を送った件をめぐり、SNS上で賛否の声が上がった。この話題を発端に、協会の公式サイトに書かれていた、日本に120万人いるという吃音者が一度は「生まれてこなければよかった」と思ったことがあるという趣旨の表現に批判が相次ぎ、2022年8月3日までに削除された。

   協会は5日、J-CASTニュースの取材に対し、削除した理由について「極めて不適切だと思いました」と述べている。

  • 2022年8月5日現在、掲載されている「活動理念」(日本吃音協会公式サイトより)
    2022年8月5日現在、掲載されている「活動理念」(日本吃音協会公式サイトより)
  • 2022年8月5日現在、掲載されている「活動理念」(日本吃音協会公式サイトより)
  • 一部表現が削除される前の「活動理念」(日本吃音協会公式サイトより)

「吃音だけど吃音だから生まれてこなければよかったとは思ってない」

   7月6日放送の「水曜日のダウンタウン」では、「説教中の『帰れ!』額面通り受け取るわけにはいかない説」と題した企画内で、お笑い芸人・チャンス大城さんが、後輩芸人のインタレスティングたけしさんを叱って帰宅させるというドッキリを仕掛けた。たけしさんが言葉を詰まらせる様子について、SNS上では「後輩芸人、もしかしたら吃音なんじゃないかな」といった指摘が一部で上がっていた。

   同番組の放送内容を受け、日本吃音協会は8月1日、TBSに対して抗議文を送ったとツイッターで報告。「件の放送内容は、吃音者に対する差別と偏見を助長するものであり、再発防止と番組制作の基準・指針の見直しを要求しました」と説明した。

   しかし協会の抗議に対して、SNS上では賛否の声が上がった。「確かに傷つく当事者の方はいると思う」と同意する声があった一方で、「この一件で吃音=触れちゃいけないみたいな風潮になるのだけは本当にやめてほしい」といった否定的な声も上がった。番組に出演していたたけしさんは2日、協会の1日の投稿に対し「またテレビジョン出たい!!」と引用リプライを送っている。

   また協会の抗議を発端に、協会の公式サイトに書かれた「活動理念」の一部表現に対して批判が相次いだ。公式サイトでは次のように書かれていた。

「120万人。この数字は日本人の吃音当事者のおおよその総数です。
『生まれてこなければよかった。』この言葉は120万人の人が一度は思った言葉です。」

   この表現に対し、吃音があるというツイッターユーザーらから「吃音だけど吃音だから生まれてこなければよかったとは思ってない」といった声が上がった。上記の表現は3日までに削除されている。

「すべての吃音当事者の共通認識であるかのように協会の公式サイトに記載してしまった」

   協会は4日、取材に対し、「TBSに対して抗議文を送ったことに関して、たくさんのコメントをいただきました。多くは『番組側に悪意は感じない』『抗議するほどのことではない』といったご意見です」と明かした。続けて「私たちも番組に悪意があったとは考えていません。しかし私たち吃音当事者の多くは日常の中でまさにその悪意のない嘲笑に深く傷つき、『大袈裟だ』『考えすぎでは』などの理解の無い言葉に心を痛めているのです」と説明した。

   たけしさんの気持ちを汲んでいないのではないかという指摘もあるが、協会は「私たちは吃音がある芸人さんを殊更に擁護したいと考えたわけではありません」と前置きした上で、「どもりながら話している人を馬鹿にしてる様子を放送したことに対して抗議をしているのです」と述べた。「インタレスティングたけしさんは大好きなお笑い芸人さんのうちの一人ですしとても応援しています」としている。

   協会は同日、ツイッターを更新し、「数多くの、応援や賛同のコメントと、一方では様々なご批判やご意見を頂いております中、いくつかの誤った情報に基づく誤解が生まれている面もあろうかと思い、日本吃音協会としての考えを改めてお伝えします」とした上で、今回の抗議に対する一部の指摘について、上記回答の一部と同様の見解を示した。また「放送を見た子供達が吃音がある人を同じように嘲り笑う様になる事を恐れているのです。様々な考えがあると思います。しかし私たちはそれを容認する社会を認めることは出来ません」と協会の立場を表明している。

   一方、公式サイトにある「『生まれてこなければよかった。』この言葉は120万人の人が一度は思った言葉です」などとする表現への批判について、協会は4日の取材に対し「ツイッターをはじめSNS上には様々な意見や考え方がありますが、その1つ1つに協会として対応をしたり、反論、もしくは否定したりする考えはありません」と見解を示し、「私たちのビジョンである『心からどもれる街と人と社会づくり』の実現をめざしてまいります」と答えた。

   こうした表現をサイトから削除した理由については5日、取材に「私たち協会メンバーの中には、吃音による幼少期のいじめ・からかいでのつらい経験を有する者が複数おり、その中で『生まれてこなければよかった』という個人的に持ちえた感情や言葉を、すべての吃音当事者の共通認識であるかのように協会の公式サイトに記載してしまったことについて、極めて不適切だと思いましたので、訂正/削除をしました」と説明している。