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赤ちゃん連れ去り阻止したのは、ボクシングミドル級王者の妻だった 緊迫の一部始終を自ら報告、夫は「誰も真似しないで」

   東京都足立区内でベビーカーから1歳男児が連れ去られそうになった事件で、それを阻止したというボクサーの妻が、報道を受けて自らの思いをツイッターにつづった。

   投稿したのは、東洋太平洋ミドル級チャンピオンの竹迫司登さん(31)の妻、麻裕さんだ。

  • もし連れ去りに直面したら…(写真はイメージ)
    もし連れ去りに直面したら…(写真はイメージ)
  • もし連れ去りに直面したら…(写真はイメージ)

護身術を使って男を引き離し、両手を脇の下に入れて押さえ付けた

   報道によると、この事件では、2022年9月21日午前11時30分ごろ、足立区内の歩道で30代の母親がベビーカーを押していたところ、40代の男が突然、ベビーカーから男児を抱きかかえて連れ出そうとした。しかし、ベビーカーのベルトが引っかかって持ち上がらず、母親が男児に覆いかぶさって抵抗し、110番通報で駆け付けた警察官が、未成年者略取未遂の現行犯で男を逮捕した。

   警視庁竹の塚署の調べに対し、男は、「自分の子どもがほしかった」などと供述しているという。

   連れ去りを阻止したという麻裕さんは21日、近くにいた男性2人が男を取り押さえ、別の女性が110番通報したとするフジテレビの記事をツイッターで引用し、実際は、麻裕さんが男を引き離して地面で押さえ付け、周囲にいた人たちに110番や援軍を依頼したと説明した。

   フジテレビ系の情報番組「めざまし8」が22日、麻裕さんとみられる女性の話や入手した防犯カメラの映像を紹介している。

   映像などによると、容疑者の男が歩く数十メートル後ろで母親がベビーカーを押しており、交差点で信号待ちをしていると、男と母親の間でトラブルになった。麻裕さんらしき女性も、交差点でベビーカーを押して横断歩道を渡り、途中でトラブルに気が付いて、ベビーカーを押したまま引き返していた。

   最初は夫婦ゲンカだと思ったというが、母親が「助けて!」と震えた声で何度も訴えたため、引き返したという。護身術の知識を駆使して男を引き離し、後ろから両手を男の脇の下に入れるように押さえ付けた。自転車で通りがかった男性やそばの美容院にいた男性客も駆け付けて、男を取り押さえてくれたとしている。

「もし男が刃物を持っていたら、結末は違った」

   連れ去り阻止について、麻裕さんはツイッターで、さらに詳しく状況を説明した。

   母親の助けを求める声を受けて、自分のベビーカーを美容院前の安全なところに止め、全力で走って男に向かい、男を引き離して自分も一緒に転んだという。そのまま、男をうつ伏せに押さえ付けたが、自分の体重だけでは無理なため、周りの人に援軍を頼んだとしている。

   麻裕さんは、自分は普通の女性で、格闘家の妻だから強いということはなく、もし男が刃物を持っていたら、結末は違ったと振り返った。「怖くて動けなかった人は何も悪くない」としながらも、110番などせずに写真を撮っていた人がたくさんいたとし、「この人を押さえるのを手伝って」と言ってやっと周りの人に伝わったと明かした。

「もし何か事件に遭遇したら好奇心よりも保護救助につとめてほしい。自分でどうにかできなくとも、警察を呼んだり何か手立てがないかを探してほしい。勿論証拠も大切だけど、命には変えられない」

   また、幼い子供がいる母親たちには、気をつけてほしいことがあるとした。

「ベビーカーのベルトの肩部分は必ずはめてください、嫌がるから外して足だけつけてるなんて事はないように。転倒とは別に、お母さん達ならわかると思いますが、肩ベルトは外すのに手間取ります」
「連れ去られそうになった場合肩ベルトを外すのに犯人は顔を下げてくると思うので、近くにある固いもので下から上に顎を撃ち抜いてください。顎は人間の急所なので効くとしばらく動けません」

夫「周りに協力を仰ぎ、大勢で対処できる方向で動いて」

   麻裕さんは、護身術のサイトも紹介しており、「夫から言われてなかったら護身術なんて考えてないので、皆さんも今回を機に護身術を絶対心に入れておいて下さい」と訴えた。ただ、護身術を使うのは危険もあるとして、「行動する事が正義でも行動する事が正しい事ではありません。みんなきちんとまずは自分を守る事が大切で、それで何かできるか?だと思います」とも付け加えた。

   夫の司登さんも9月22日、麻裕さんの投稿をツイッターで引用し、「一児の父として被害に遭われた方はもちろん助けられた事は本当に良かったと思います。妻の取った行動は誇りにおもいます」としたうえで、次のように複雑な思いを打ち明けた。

「正直無事助けられた事は結果論に過ぎなく護身術として伝えていた事を護身の為に使うのではなく、まさか人を助ける事に使うなんて思いもしなかったです。誰も真似しないでください」
「この事件直後に電話をもらいましたが、ものすごく震えた声で話すので何か娘や妻にあったのではないかと強く不安になりながら話を聞きました。あの時のあの現状は、しかたなかったし命には変えられないと言われました。本当にそうだと思いますが夫である私からすると妻と娘の命が1番です」

   容疑者の男が武器を持っていたり武術経験者だったりする可能性があるとして、「次から周りに協力を仰ぎ助けを呼ぶなどをし、大勢で対処できる方向で動いて欲しいなと強く思います」との思いも吐露した。そして、「妻はものすごく怖い思いをしたので、皆さんに知っていただき気をつけていただきたいという思いだけで書いているので、リスクはあるのですが、妻の気持ちが強くTwitterしたそうで、きちんと伝わると嬉しいです」と結んでいる。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)