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誤飲防止「開かない」ボタン電池に称賛 導入めぐり社内で賛否...パナソニック明かす開発秘話

   パナソニックがボタン電池に導入している「子どもを守る誤飲対策パッケージ」が、企業努力を感じさせるとしてツイッターで注目されている。大人でも素手では容易に開封できない仕様に「よく出来てる」などと称賛が集まっている。

   誤飲対策パッケージについて、同社に詳しい話を聞いた。

  • パナソニックのボタン電池(写真提供:パナソニック)
    パナソニックのボタン電池(写真提供:パナソニック)
  • パナソニックのボタン電池(写真提供:パナソニック)
  • 誤飲対策パッケージの開け方(写真提供:パナソニック)

「子どもを守るためのあえての『不便』」に称賛

   話題の発端になったのは、パナソニック製アルカリボタン電池「LR44」の購入者が体験談を伝えた2022年9月24日のツイートだ。

   同製品のパッケージは電池の周囲に堀をめぐらすような形状をしたプラスチックで出来ているうえ、開封を容易にするような加工が施されていない。子どもが素手で電池を取り出せない「誤飲対策パッケージ」で、開封にはハサミなどを用いる必要がある。

   投稿者はハサミの持ち合わせがなく、素手で10分ほど開封を試みたが全く開けられなかったというものの、パッケージの意図をくみ取り、企業努力に感心していた。

   投稿は2万7000件以上のリツイートや15万3000件超の「いいね」を集め、「これホント素手では開かないですよね!」などと同様の経験者からの声が多く寄せられている。

   ほかに「これ硬いですよね、確かによく出来てる」「『開かない』ことにとても大きな意味がありますね」「子どもを守るためのあえての『不便』」「安全に優るものは無いですからね」「素晴らしい技術」と称賛する声が寄せられた。

   誤飲対策パッケージについてパナソニック広報は27日、導入にあたっては「社内でも賛否両論がありました」とJ-CASTニュースの取材に明かす。

   これまで「開けやすさ」「捨てやすさ=分別しやすさ」「省資源=ゴミの削減」を重要視してきた同社の電池パッケージ開発において、真逆を行く活動になるためだと理由を説明する。

   しかし、同社によれば、近年は機器の小型化により家庭内でもコイン形リチウム一次電池を取り扱う機会が増えている状況で、乳幼児の誤飲事故も増加傾向。誤って電池を飲み込んでしまうと化学やけどや粘膜組織の貫通、最悪の場合は死に至る可能性があることから、「乳幼児の生命を守ること」を最優先とした。

コイン電池から順次導入してきた

   パナソニックホールディングスが属する一般社団法人・電池工業会は、乳幼児が素手で開封できないことを目的とする誤飲対策パッケージのガイドラインを16年10月に発行している(改定を経て現在はJISに反映された)。

   その対象となるコイン形リチウム一次電池について、サイズにかかわらず全ての品番に対して、17年4月から誤飲対策パッケージを順次導入してきたとパナソニック広報は伝える。

   完成まで約1年を要したという新しいパッケージでは、開封用のミシン目を廃止。一方で、ハサミで切断した際に隙間が生まれて指で開けやすいよう構造を工夫した。

   パッケージ強度はガイドラインに則り、曲げ試験50回、捻り試験50回、引き裂き試験1回、捻り試験50回、曲げ試験50回、引き裂き試験1回、押出し試験1回の手順をとって判断基準を満たしたという。

   さらに、より電圧が低く直径も小さいボタン形電池に対しても、幼児の誤飲を社会から完全に撲滅するという思いで、19年4月から誤飲対策パッケージを取り入れた。導入にあたっては下記のように周知してきた。

「外出時等の開封にあたってはハサミ等を携帯していないお客様へ大変なご不便をお掛けしてしまうことから、子供の誤飲事故の撲滅の啓蒙と併せ開封にはハサミが必要なことをパッケージにはもちろん一部の店頭においてはPOPでもお知らせさせて頂いております」

   ツイッター上の反響には「弊社の誤飲対策パッケージについて好意的に取り上げていただき感謝申し上げます」と喜び、次のように今後の意気込みを見せた。

「これからも便利なだけでなく、思わぬ事故の発生を防止すべくお客様の安全に配慮した商品の開発に取り組んでいく所存です」