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「タイパ」使う人なぜ増えた? 元の言葉は連想しづらいが...「今年の新語」選考委員が解説した背景

   大手出版社「三省堂」が2015年から主催する「今年の新語」の選考発表会が、2022年11月30日に東京都内で開かれた。

   同賞は同社が出版する複数の国語辞典のそれぞれの編纂者4名が選考委員を務め、その年に誕生した新語の中から世相を表す言葉上位10個を一般公募から選出。その影響力の大きさに応じて1位(大賞)から10位までランク付けし、発表するイベントだ。賞の特徴としては、「大賞に選ばれた言葉以外にも順位付けをする」「受賞するのは言葉自体であって受賞者はいない」「発表は表彰式形式ではなく、選考委員による座談会形式で行われる」といった点が挙げられる。

   選考発表会では10位から1位までの新語がトークセッションの中で発表されていったが、その軽やかなトークが観覧者や取材に訪れたメディアを魅了した。

  • 「今年の新語 2022」選考発表会に出席した選考委員4人は、右端から順に飯間浩明氏、小野正弘氏、山本康一氏、荻野真友子氏
    「今年の新語 2022」選考発表会に出席した選考委員4人は、右端から順に飯間浩明氏、小野正弘氏、山本康一氏、荻野真友子氏
  • 「今年の新語 2022」選考発表会に出席した選考委員4人は、右端から順に飯間浩明氏、小野正弘氏、山本康一氏、荻野真友子氏
  • 10語の一覧(三省堂提供)

大賞を受賞したのは「タイパ」

   今回選出されたのは、1位に「タイパ」(大賞)、2位に「○○構文」、3位に「きまず」、4位に「メタバース」、5位に「○○くない」、6位に「ガクチカ」、7位に「一生」、8位に「酷暑日」、9位に「闇落ち」、10位に「リスキリング」の10語で、発表は10位から1位に向けて行われた。

   選考委員として登場したのは、「三省堂国語辞典」の編纂者・飯間浩明氏、「三省堂現代新国語辞典」の編纂者・小野正弘氏、「大辞林」編集部で編集長を務める山本康一氏、「新明解国語辞典」の編集部員を務める荻野真友子氏の4人で、司会者1人を交えて座談会は進行した。

   大賞に選ばれた「タイパ」は「タイムパフォーマンス」の略語で、かけた時間に対する成果や実績という効率を表わす言葉として数年前から見られるようになり、特に今年になってから用例が多く見られるようになったと紹介された。映画やドラマなどの「倍速視聴」や、近年問題になっている「ファスト映画」など、時間をかけずに内容を把握しようとする風潮の中で、新語として誕生したとされた。

「タイパ」は不透明な言葉!?

   大賞に関しては選考委員全員が「タイパ」への選評を述べたが、この中で、「タイパ」のユニークな点は何かと飯間氏に聞かれた小野氏は、学術用語を交えつつ解説した。

   小野氏いわく、「タイパ」という言葉は「タイ」から「タイム」を連想することはもちろん、「パ」から「パフォーマンス」を連想することはそれほど簡単ではないと説明。そして、これら「音や文字からの連想しづらさ」を言語学では「不透明性」と言うと明かしつつ、「タイパ」は不透明性が高い単語であると指摘した。

   音からは意味を捉えづらい「タイパ」がなぜ世の中で頻繁に使われるようになったかについて、小野氏は「タイパ」よりも前から存在していた「コストパフォーマンス」が「コスパ」と略されたことが前例になり、「パ」が「パフォーマンス」という言葉を想起することを助けていると指摘。その結果、何とか意味をつかむことが出来るため、不透明性が高いにもかかわらず使う人が増えたのではないかと分析した。加え、「パフォーマンス」以外に「パ」だけで意味を持つ略語の例としてはプロ野球の「パシフィック・リーグ」を表わす「パ」が挙げられるとしつつ、「ここまで大胆に略された『パ』は『パシフィック・リーグ』以来かも」と笑顔を見せた。

   選考発表会では大賞の「タイパ」以外の入選語についても、カジュアルなトークが展開され、観覧席はその都度笑いに包まれたほか、納得のうなり声が上がるなどした。

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)