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「わざわざ持ち歩けない」懸念の声 自転車ヘルメット努力義務化、シェアサイクル大手の対応は?

   全ての自転車利用者のヘルメット着用を努力義務とする改正道路交通法を2023年4月1日から施行することが、22年12月20日に閣議決定された。

   ネット上では、外出先で気軽に自転車に乗れる「シェアサイクル」への影響を懸念する声が目立ち、「わざわざヘルメットなんか持ち歩けない」「ヘルメットも一緒に貸し出せばいいのでは?」という意見も聞かれる。シェアサイクル大手2社は、今回の法改正にどう対応するのだろうか。

  • ヘルメット着用努力義務化、シェアサイクル大手はどう対応?(画像はイメージ)
    ヘルメット着用努力義務化、シェアサイクル大手はどう対応?(画像はイメージ)
  • ヘルメット着用努力義務化、シェアサイクル大手はどう対応?(画像はイメージ)
  • オージーケーカブトの帽子型ヘルメット「LIBERO」(ニュースリリースより)

「帽子型」も登場...おしゃれヘルメットに注目集まる

   改正道路交通法はことし4月に成立。これまで同法では13歳未満の児童・幼児を自転車に乗せる場合のヘルメット着用を努力義務としていたが、来年4月の改正からは年齢問わず全ての自転車利用者に努力義務が課せられる。ただ、努力義務のため罰則はない。

   警察庁は17年~21年に起きた自転車乗用中の事故について、ヘルメット未着用の状況では着用時と比べて致死率が約2.2倍になったとしている。また、自転車乗車時のヘルメット着用を推進する「自転車ヘルメット委員会」の20年の調査によると、努力義務がある13歳未満の自転車乗車時のヘルメット着用率は63.1%で、13~89歳の着用率は7.2%だった。

   改正法施行日の決定を受けて、注目が集まっているのはヘルメット市場だ。自転車用ヘルメットなどを製造・販売するオージーケーカブト(大阪府東大阪市)は、ヘルメットにキャップ型のカバーをかぶせた「LIBERO」など、デザイン性を重視したヘルメットを取り扱っている。同社の21日のニュースリリースでは、改正法施行日の閣議決定後に「ホームページにも多くのアクセスが寄せられている」とした。

ドコモ・バイクシェアは「ヘルメット貸出サービス」検討

   一方で、今回の法改正の影響が及ぶとみられているのが、シェアサイクル業界だ。シェアサイクルは、同一事業者のポート(駐輪場)間を自由に移動できるサービス。国土交通省の21年1月の資料によると、全国のシェアサイクルのポート数は13年には474か所だったのが19年には2425か所まで増加。東京都内では、スーツ姿のサラリーマンや飲食デリバリーの配達員が利用する姿を日常的に見かけるようになった。

   ビジネスや買い物、観光など外出先で気軽に利用できることが魅力のシェアサイクル。それだけに、今回の「ヘルメット着用義務化」を受け、ネット上のユーザーからは「かさばるヘルメットを持ち歩くのは不便」「わざわざヘルメットなんか持ち歩けない」と懸念の声が続出。また「ヘルメットも一緒にレンタルできないのかしら?」「ヘルメットも一緒に貸し出せばいいのでは?」などの意見も相次いだ。

   シェアサイクル事業者は今回の法改正に、どう対応するのだろうか。J-CASTニュースは12月23日、国内シェアサイクル大手のドコモ・バイクシェア(東京都港区)とOpenStreet(同)の2社に見解を聞いた。ドコモ・バイクシェアは赤い車体のシェアサイクル、OpenStreetは白い車体が特徴の「ハローサイクリング」を手がける。

   ドコモ・バイクシェアの広報担当者は「基本的にヘルメットはご利用者様でご準備いただくものと考えており、ヘルメットの着用が促進されるための啓発活動をアプリ等を通じて行ってまいります」と説明。一方で、ヘルメット着用の促進に向け「窓口があるエリアにおいては、ヘルメットの貸出サービスを検討いたします」とした。

OpenStreetはヘルメット持参が「衛生・安全の両面で望ましい」

   一方でOpenSteetの広報担当者は、これまでもヘルメット着用の努力義務を条例で定めた自治体でサービスを展開していたことから、「ヘルメットの着用を含めた交通安全の啓蒙活動」をアプリ・ウェブサイトで行ってきたと説明。今後も同様の活動を継続するとした。

   ただ、ドコモ・バイクシェアが検討するとしていた「ヘルメットの貸し出し」については様々な課題があると回答。利用者がヘルメットを持参することが「望ましい」との見解を示す。

「ヘルメットをシェア用の乗り物に備え付けすると、衛生面の課題、サイズ不一致による安全性の課題に加え、利用者も積極的に使用しない傾向にあることがこれまでの取り組みで判明しております。貸し出しや持ち運びに適したヘルメットはどのようなものであるかの検討は継続的に行なっておりますが、利用者が自身の体に合ったヘルメットを持参して着用することが衛生・安全の両面で望ましいです」

   同社は「(ヘルメットの持参・着用は)あくまで努力義務の範囲であり、強制することはできない」としつつも、利用者のヘルメット着用を文化として定着させる必要があるとする。

「本質的には、シェアサイクルに限らず全ての自転車を利用する際はヘルメットを着用することが常態化することが肝要と考えています。これは文化の定着が必要であり、即時に実現できるものではなく、継続的な取り組みが必要です。例えば、ロードバイクタイプの自転車利用者はヘルメット着用が常識として定着しています。感染症の拡大により場面に応じたマスク着用が常識化したように、安全に自転車を利用するためにヘルメットを着用することが文化として根付くように、啓蒙活動を継続的に行なっていきます」

   全てのシェアサイクル利用者がヘルメットを着用する日はやって来るのだろうか。