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世界各地の「シンデレラ物語」を追う

書評掲載元:週刊ポスト(2017年7月14日号)書評

シンデレラの謎

 シンデレラといえば、東京ディズニーランドなど世界のディズニーパークでシンデレラ城がランドマーク的存在でもあり、ディズニーのオリジナルキャラクターと思われがちだ。ええっ、違うの!? と、ドキッとした人たちは、古代エジプトがその起源らしいと聞けば、こんどは、うっそお、と背をむけるのか、なお身を乗り出してくるのか。

 評者のノンフィクションライター、与那原恵さんは「ヨーロッパのどこかの国の民話をもとにしたのだと思い込んでいた」と、不意をつかれたことで興味をそそられたらしい。

 著者は、ドイツ文化論や比較文化論が専門の関西大学名誉教授。本書ではシンデレラのストーリーの伝播プロセスをたどりながら人類の大移動に注目したという。資料で分かる最も古い「シンデレラ」は、エジプトの「ロドピスの靴」で、紀元前6世紀ごろまでさかのぼる。

 与那原さんは「世界各地のシンデレラ譚が紹介されていて、そのどれもが実に面白い。困難な局面に遭遇するものの、最後に幸福をつかむという物語の構造は類似しているが、伝播した土地の文化や倫理観、社会規範を取り込んで変形していったことがよくわかる」と評した。

 日本でシンデレラに似た物語といえば「落窪物語」があげられる。作者は不明で10世紀末の平安時代中期に成立したとみられている。母と死別した姫が継母と暮らすことになり冷遇され、畳が落ち窪んだ部屋での暮らしを強いられるなどのいじめにあうが最後には貴公子が現れる。

 本書によると、日本各地にはほかにもシンデレラのストーリーが伝播したと考えられるものがあるという。「靴」は大陸から伝わったことがあるものの、その後すたれて、その部分は欠落したという。

 映画などに登場する「かぼちゃの馬車」や「ガラスの靴」は仏文学者、シャルル・ペローが加えたものとされている。

  • 書名 シンデレラの謎
  • サブタイトルなぜ時代を超えて世界中に拡がったのか
  • 監修・編集・著者名浜本隆志著
  • 出版社名河出書房新社
  • 出版年月日2017年6月13日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数B6・240ページ
  • ISBN9784309625058

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