焼きそばの作り方にもいろいろあるんだ

もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら

　久しぶりに笑った。カップ焼きそばの作り方の説明である。村上春樹をはじめとした作家のみならず、「週刊文春」「読売新聞コラム『編集手帳』」「ビジネスメール」なんてものもある。文体模写の芸をたっぷりと味わった。

　たとえば......。「完璧な湯切りは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」これは村上春樹の項の結びの一文だ。それらしいではないか。

　中原中也の項はこうだ。「カップ焼きそばを作ってゐる/かやくとソースを取り出して/沸騰した湯をかけてゐた/五分間を待ちながら/どしやぶりの湯が捨てられて/黒いソースがかけられ混ぜられてしまひ　あゝ食欲の数だけ/食べられてしまった......」

　評者の成毛眞氏（HONZ代表）は相田みつをの項を引用している。

　「湯をいれる/五分まつ/湯切りをする　これだけなのに/むずかしい/すぐに食べたい/人間のわたし」

　「本好きにしか判らない楽しい一冊だ」と本書を勧めている。

　

• 書名: もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら
• 監修・編集・著者名: 神田桂一、菊池良 著
• 出版社名: 宝島社
• 出版年月日: 2017年6月21日
• 定価: 本体980円＋税
• 判型・ページ数: 四六判・190ページ
• ISBN: 9784800271105