睡眠中の「夢」は、わたしたちに共通する不思議体験。中世の人たちは神仏からとどけられるメッセージと考えていたという。現代でも、夢でみたシーンが現実に起こる「デジャブ」の経験談が聞かれることがある。本書では、さまざまな文書や記録、物語や絵画などから日本人と夢とのかかわりを追い「もう一つの日本史」を描き出している。
広く知られている「わらしべ長者」の物語。その始まりは夢からだった。身寄りもない貧しい男が京から大和国長谷寺に参詣。「何かお与えくださるなら夢でお知らせください」とひれ伏す。寺でしばらく過ごした最後の夜に僧が夢に現れ秘策を授け、それに応じて手にしたワラで人生が開けていく。
しかし江戸時代ともなると、夢を神仏のメッセージととらえる理解は後退する。「なぜ夢を見るのか」と問われた僧は「熟睡すれば見ない」などと、健康との関連を強調するのだった。
夢はでたらめだったり奇想天外だったりストーリーであることがしばしばだが、それは、記憶の整理にかかわる作業のためという。ならば、過去の時代の夢の記録はその時代のことをとどめているに違いない。評者の日本史学者、清水克行さんは、本書により「夢を切り口に、日本人の精神の歩みが明らかにされる」と述べている。
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