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「悪魔」の誘惑に負けないために

書評掲載元:週刊ポスト 8月11日号 書評

悪の正体

 筆者はプロテスタントのキリスト教徒であり、欠かさず聖書を持ち歩き、事あるごとに参照しているという。大学と大学院で神学を学び、これまでに「4万冊近くの本に目を通し、思考を続け、行動につなげてきた」と述べる。そうした個人的背景と経験から、現代社会を生き抜くためには「悪」や「悪魔」の存在に敏感にならなければならないと考えている。

 「悪には、『アダムとエバ』の物語から、現代の私たちの生活に根差す個人的なものや、テロ・国際紛争など世界情勢をめぐる国家レベルのものまで時間軸と空間軸を超えて見出すことができます。すなわち人間の持つ『負の側面』全般にわたり根源をなすのが『悪』の概念です」としたうえ、悪に鈍感であってはならない、悪の正体を見極めろ、少しでも悪なるものを遠ざけろ、危ない場所には絶対に近寄るな――と説く。

 「一方、状況によっては悪と正面から対峙することも大切です」とも。

 それでは、周囲からしばしば「悪」が誘うようにささやくなかで暮らす私たちは、どうすればよいのか。著者は、ロシアでの勤務を含む外務省時代の経験や、歴史上のできごと、専門の聖書や神学書、さらには「闇金ウシジマくん」などの漫画などからも、悪に敏感になるための例を取りだし紹介する。

 評者の精神科医、香山リカさんは、自らの仕事である「病」に陥った人に対する治療と対比させ「著者は人間から取り除くことが困難な『悪』の働きを少しでも抑えるためにはどうすればよいのか、というきわめて本質的な問題に生真面目に取り組もうとしている」と述べている。

  • 書名 悪の正体
  • サブタイトル修羅場からのサバイバル護身術
  • 監修・編集・著者名佐藤 優 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2017年6月 9日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書・251ページ
  • ISBN9784022737212

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