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松平定信は「牛車マニア」だった

書評掲載元:朝日新聞 8月27日付 書評

牛車で行こう!

 

 牛車は平安時代の中流以上の貴族だけが乗ることを許された乗り物だそうだ。素材、形状によって身分規制があり、最高級の唐車は、天皇・皇后、摂政・関白しか使用できなかったという。本書は、さまざまな歴史史料のほか、物語、絵巻物などを活用して、当時の人々がどのように牛車を利用したか、または利用しなかったかを詳細に分析したものである。著者は乗り物好きを自認しており、章立ても「ドライブ前の点検、車を選ぼう、車を走らせよう」など、実用書風を装っている。

 

 評者の宮田珠己氏(エッセイスト)は「あえてランクの低い車に乗って身を隠したり、同車(同乗)したり貸し借りすることで政治的に利用されたりもしたらしい」と牛車をめぐる知略や駆け引きに注目している。

 

 本書の魅力は、モノクロだが、牛車のさまざまな復元図や絵巻の図が掲載されていることだ。江戸時代の松平定信による『輿車図考』という優れた研究書の成果が紹介されている。定信は江戸幕府の老中で寛政の改革で知られるが、老中を退いた後に、こうした研究者、文化人として活動したという。著者以上の相当な「牛車」マニアだったと想像される。

  • 書名 牛車で行こう!
  • サブタイトル平安貴族と乗り物文化
  • 監修・編集・著者名京樂真帆子 著
  • 出版社名吉川弘文館
  • 出版年月日2017年7月10日
  • 定価本体1900円+税
  • 判型・ページ数四六判・164ページ
  • ISBN9784642083188

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