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清張作品すべての「点と線」を乗り鉄が制覇

清張鉄道1万3500キロ

 著者は「乗り鉄」を自称する鉄道マニアの元新聞記者。しかも4年前の2013年にJR全線乗破を果たした筋金入りだ。朝日新聞を退職する09年まで「45%ほど」を制し、その後の「思う存分鉄路旅ができる日々」をフルに使って残りの55%を4年間で完乗した。一方で、小学4年の時に初めてその作品に接して以来の松本清張マニア。ふたつのマニアが著者のなかで融合して産まれたのが本書。清張作品に描かれるすべての鉄路をたどった記録だ。

「西郷札」から「犯罪の回送」まで320編を検証

 「清張世界を読む乗り鉄」への挑戦は、著者がJR全線乗破を果たしたあとから始めた。著者はこれを「研究」と呼ぶが、旅情ミステリーの元祖ともいえる清張の作品の数々から「乗り鉄場面」を拾い出し、その"既乗"路線に実際に乗って検証した成果を報告している本書は、読み応えのある"論文"に仕上がっている。

 本書は、北北九州市立松本清張記念館が毎年公募している「松本清張研究奨励事業」の第17回(2014年度募集)入選作品に加筆したもの。

 対象の作品は、時代物や評伝、ノンフィクションを除く、デビュー作の「西郷札」から死去後に刊行された「犯罪の回送」まで320編。それらを通じて、最初に乗った線区である「初乗り」の路線や区間を発見し、それらを繋ぎ合わせて日本列島に「清張鉄道」の路線図をつくりあげた。

 「清張鉄道」を経年の観点からみてみると、自身が福岡出身だけにまずは九州が舞台となる頻度が高く、次第に東上が進む。清張ファンには該当作品が思い当たるだろうが、早い時期に信州のほぼ全線が描かれており、東北や北海道にも足を伸ばしている。

「あさかぜ」の東京駅15番線

 松本清張が人気作家になったのは、作品の社会性だけではなく、映像化されたものが多かったことが示すように、トリックや風景描写が、よりビジュアル的だったこともあげられる。著者は、清張作品との出会いは小学4年のときの「点と線」だったと述べているが、それは小説ではなく、映画だったという。

 同作品は、鉄道ダイヤが絡んだアリバイをめぐるミステリ―で知られ、旅行雑誌「旅」の1957年2月号から連載され、58年2月に単行本になって刊行された。

<東京駅15番線から福岡・博多に向かう寝台特急「あさかぜ」に乗り込む男女2人を、西隣のホームの13番線から男女のうちの女性の同僚らが目撃していた。しかし時刻表でつぶさに確認すると両線の間にある14番線に列車が不在で、13番線から15番線を見通せるのは1日のうちわずか4分間しかない...。目撃は仕組まれたものではないのか...>

 「小学校4年生の私に筋はほとんど分からなかった」と著者。だが「タイトル部分で、特急「あさかぜ」が走る東海道、山陽、鹿児島の各線と停車駅が文字通り、点と線になった表されてることに感動した」。本書では「東京駅15番線」として1章が割かれ、その感動が反映されている。

  • 書名 清張鉄道1万3500キロ
  • 監修・編集・著者名赤塚隆二 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2017年11月10日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・320ページ
  • ISBN9784163907239

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