読むべき本、見逃していない?

原田康子や三浦綾子を超えるか

  • 書名 砂上
  • 監修・編集・著者名桜木紫乃 著
  • 出版社名KADOKAWA
  • 出版年月日2017年9月29日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・220ページ
  • ISBN9784041046005
BOOKウォッチ編集部コメント
 

 本書『砂上』の著者桜木紫乃は、直木賞受賞作『ホテルローヤル』ほか釧路など北海道を舞台にした作品が多い。作家デビュー10周年記念として刊行された本書も、札幌郊外の江別に住む母子3代の物語である。

 

 ヒロインの柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の収入と、元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。作家になる夢を抱きながらも女性雑誌のエッセイ賞に応募、優秀賞の知らせを受けた令央のもとを、女性編集者の小川乙三が訪ねる。開口一番、「主体性のなさって、文章に出ますよね」と小川は切り出した。やがて「読んだ人が『本当かもしれない』と思う嘘をつけ」という言葉を頼りに、小説を書きはじめる。しかし、元夫は送金の減額を切り出し、生活のため執筆の時間は減る。

 

 確かな嘘をつくために、母ミオ、娘美利との本当の関係を探ろうとするが、母はすでに亡くなっており、真実はなかなか分からない。

 

 300枚の原稿は完成したが、小川はしつように書き直しを求めた。娘は妹として育てたが、娘は出自を知っていた。また令央自身の出生の秘密もやがて明らかになる。「赤裸々とリアルは似て非なるものです」という小川のアドバイスを受け、現実と虚構が交錯し、作品はさらに変容してゆく。そうした日々を重ね、4年後に令央のデビュー作『砂上』は刊行された。

作家と編集者の関係は

 

 女性の生き方がメインのテーマだとすれば、作家と編集者の関係がサブテーマとなっている。鬼のように厳しいダメ出しをする小川とそれに答えた令央。次作は「男の書き手を騙す女性編集者の話なんて、どうでしょうか」と令央は切りかえした。

 

 著者が住む北海道の冷涼な気候、風土が作品に血肉化している。寒い冬にこそ、スルメをさかなに焼酎のお湯割りでも飲みながら本書を読むと、ぐっと登場人物たちが身近に思えるだろう。

 

 著者は本作について「書けても恥、書けなくても恥でした」と書いている。作家の覚悟がにじんだ作品といえよう。

 北海道の女性作家では原田康子や三浦綾子が有名だが、桜木も今のところ、北海道に住み続けているようだ。文章もうまく、まだ若いので、これからさらに期待できる作家だと思う。(BOOKウォッチ編集部)

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