読むべき本、見逃していない?

平昌五輪で浮かれるな!

  • 書名 朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか
  • 監修・編集・著者名五味洋治
  • 出版社名創元社
  • 出版年月日2017年12月20日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数B6判・336ページ
  • ISBN9784422300573

 平昌五輪は事前の大方の予想を超える盛り上がりとなった。もちろん羽生結弦選手ら日本人選手の大活躍もあるが、国際的には北朝鮮側の積極姿勢が注目を集めた。一触即発の緊張状態が続いているはずの朝鮮半島で、対立している北朝鮮と韓国が統一チームまで作り、北のナンバー2といわれる女性が、韓国のトップと握手までしたからだ。

 何となく緊張が緩和した感じを抱いた人が多かったかもしれない。しかしながら朝鮮半島は依然として、単に休戦協定で戦争状態が回避されているにすぎない。本書『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(創元社)は戦争の歴史と内情、今後の展望などをわかりやすくまとめている。

金正男氏を最もよく知る記者

 著者の五味洋治さんは東京新聞の論説委員。ソウル支局や中国の特派員もしてきたマスコミ各社の東アジア通の記者の一人だ。

 五味さんの名をいちやく有名にしたのは、殺された金正男氏との親密な関係だ。長年にわたって多数のメールをやりとりし、実際に何回もインタビューしていた。「金正男を最もよく知る記者」として、マレーシアでの暗殺事件の時は、何かと話題になったから、記憶している人も多いはずだ。

 朝鮮問題ジャーナリストとしてすでに高名な五味さんだが、朝鮮戦争についてはこれまで、ぼんやりした知識しか持っていなかったという。南北の分断が固定化し、戦争のおかげで特需が生まれて日本の経済が生き返ったという程度だったと謙遜する。改めて各種資料や文献を読み直し、ヨーロッパでは約30年前に崩壊した「冷戦構造」が、なぜ東アジアではいまだに続いているのか、日米安全保障との絡みはどうなっているのかなどを解説している。

延坪島砲撃事件はなぜ戦争にならなかったか

 五味さんは、日本では余り知られていない話として、「現在も戦時に韓国軍を指揮する権利(作戦指揮権)は、米軍が持っている」ということを繰り返し強調する。「朝鮮国連軍(国連軍)」の指揮権は、米軍司令官がもっており、国連安保理の許可をいっさい得ることなく、自由に軍事行動を行うことができる。国連軍の司令部はソウルにあり、「後方司令部」は横田基地にある。朝鮮国連軍のトップは在韓米軍司令官。米韓連合司令部のトップも兼ねている。

 ベテラン記者の五味さんが近年、最もヒヤリとしたのは、2010年の延坪島砲撃事件だ。韓国軍海兵隊延坪部隊が月に一度の陸海合同射撃訓練を行っている最中に、朝鮮人民軍が韓国側にある延坪島に砲弾を集中的に浴びせた。民間人にも犠牲者が出て、燃え上がる黒煙がテレビ画面に映し出される。「これは戦争になるかもしれない」と緊張したという。しかし、ならなかった。オバマ大統領ら米国側が韓国を説得、自制を呼びかけたからだという。つまり決定的な理由は「戦時における韓国軍の指揮権が韓国にない」ことによる。

 トランプ大統領はしばしば北朝鮮に対し強硬手段を示唆する。今や両国の関係はチキンレースに近い。軍の指揮権という角度から見ると、米国大統領の決断は極めて重い。

 本書で五味さんは、どうやって朝鮮戦争を終わらせるかについて、いくつかのオプションを示している。対米追従の安倍政権の対応にはもちろん大いに不満だ。

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