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インスタ映えで始まった第2の人生

セカンドライフ、はじめてみました

 「少子高齢化」の副産物といえる「終活」が、新語・流行語大賞にノミネートされたのは2010年。同じころから「断捨離」という言葉が知られるようになり、熟年世代ばかりか40~50代のライフスタイルにも変化をもたらしている。

 このほど刊行された『セカンドライフ、はじめてみました』(大和書房)は、ともに60代の夫婦が思い切って始めた新生活についてつづったもの。「終の棲家」で始めた新しい暮らしは、エンディングを楽しむことを提案している。

60代夫妻のリンクコーデが評判に

 夫は「bon(ボン)」、妻は「pon(ポン)」と称し、著者名は「bonpon(ボンポン)」。2人は17年4月に、bonさんが定年になったのをきっかけに、それまで長年住んでいた秋田市の一戸建てから仙台市のマンションに引っ越した。家具など身の回りのものを10分の1にダウンサイズして始めた新しい暮らし。bonさんは秋田で勤めていた広告代理店で続けて働く選択肢もあったが「夫婦で過ごす時間を大切にしたい」とセカンドライフを選んだものだ。bonさんの現役時代は仕事ばかりの毎日でふたりの時間はほとんどなかったという。

 夫妻で楽しむセカンドライフは仙台に引っ越す前から始まっていた。bonさんの定年少し前からふたりで始めたインスタグラム。娘さんにすすめられてユーザーになったのだが、一種のペアルック「リンクコーデ」と呼ばれるテイストをそろえたファッションが評判となって国内外でフォロワーがどんどん増えた。18年1月時点でその数は63万人という。

 服が好きなふたりはともに頭髪に白髪が多く、年齢とともに目立つようになってきたことからそれに合うファッションを模索。娘さんがコーディネーターとなってあれこれ試すうちに独特のリンクコーデが生まれたという。「いいね」は海外からも数多く寄せられ、その人気ぶりにメディアでも取り上げられるようになり、台湾やシンガポールなどからも取材がくるようになった。本書にも数々の写真が紹介されている。

田舎の一軒家から都会のマンションへ

 「セカンドライフ」を選んだのは、夫婦の時間のほか、老後のことを考えたのも大きな理由。現役時代に住んでいた秋田では「雪かきに、車の運転、どれも生活に必要なことですが、将来を思うと不安になります。ふたりとも元気な今はよくても、体力が衰えた10年後や20年後に今と同じ暮らしができるとは思えませんでした。母親が年をとるにつれ、できることがだんだん減っていったのを、一緒に暮らしてみて来たからこそ、実感する将来への不安でした」という。

 北日本では例年より雪が多かった今冬、高齢者の割合が高くなった地域では雪かきがままならず生活に深刻な影響があることがしばしば報じられた。

 「終の棲家」の候補地には、2人が若いころに住んだことがあり今は娘がいる東京、ponの故郷で妹がいる千葉、bonの姉がいてしばしば訪れている仙台――の3か所をリスト。続けていたネット検索で絶好の物件が見つかったこともあり、お墓のある秋田と娘らがいる東京や千葉とも新幹線で行き来できる仙台に決めた。

 新居は、駅に近い築30年のマンションの一室。リビングの横にある和室をフローリングの洋室にするなどリフォームしたほか、ベッドを小さいものにするなど家具はダウンサイズして一部をそろえなおし、モノが増えないよう収納も増やさないようにした。秋田の家は「先代の先代から継がれてきたような物が大量に詰まっていた」という大きな一軒家。さらにbonさんが趣味で集めたミニカーが300台とか、チェストいっぱいに詰め込まれていたponさんの手芸用の布...。それらを目の前に整理を考えると気が遠くなりそうだ。

 大量に詰まっていた物を、モノによって半分、あるいはまるごと処分。家具、食器まで、すべてのものを10分の1の量までしぼったという。その「断舎離」ぶりは細かく報告すれば、それをテーマにしたもう一冊ができそうだ。本書には、秋田の大きな家の写真と間取り図、仙台のマンションの間取り図が掲載されているが、それらを見比べるだけで減量ぶりがうかがわれる。

 新居選び、モノの減量、引っ越しをなんとか終え仙台に落ち着いた2人は、おしゃれを楽しみ、シンプルな食事を味わい、家族の一員である猫を交えた会話に癒されながら時間を過ごす。時にはシニア割を利用した映画に出かけ、美術館にも行く。少子高齢化対策として議論されている「働き方改革」では、就業年齢を上方に幅を広げた「エイジレス社会」などが考えられているようだが、人によってはセカンドライフも有力な選択肢の一つだろう。40代、50代の夫婦がさらに参考にするために、5年後、10年後のbonponさんの報告があればいい。

  • 書名 セカンドライフ、はじめてみました
  • 監修・編集・著者名bonpon
  • 出版社名大和書房
  • 出版年月日2018年2月22日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数B6判・221ページ
  • ISBN9784479784142
 

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