読むべき本、見逃していない?

偏差値で「10」の差がついた

  • 書名 スマホが学力を破壊する
  • 監修・編集・著者名川島隆太 著
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2018年3月16日
  • 定価本体740円+税
  • 判型・ページ数新書・224ページ
  • ISBN9784087210248
BOOKウォッチ編集部コメント

 「脳トレ」などであまりにも有名な川島隆太・東北大学加齢医学研究所所長による近著である。何しろタイトルがセンセーショナルだ。『スマホが学力を破壊する』 (集英社新書)。本当なら大変だ...。

 先生には悪いが、どうせウケを狙って人騒がせなタイトルをつけただろうと半信半疑だった。しかし、読んでみると、なかなか深刻だ。これは見過ごせない。

小中学校生約7万人を5年間追跡調査

 何か適当なデータをもとに、大胆なことを言っているのではないかと踏んでいた。しかしながら、川島先生は真剣だった。「流行っているものを叩くことで自分が浮かび上がろうとする卑しい意図は・・・全くありません」。こちらの疑念はお見通しなのだ。

 「社会全体の潮流を鑑みるにドン・キホーテになってしまうことは自明なのですが、それでも知ってしまったものの務めとして、国立大学法人教授という、ある意味、公職に就くものの務めとして、できる限りの大きな声をあげたいと思います」。

 驚いたのは、仙台市立の小中学校生約7万人を5年間追跡調査した結果に基づいての分析だということだった。

 初期の調査ですぐに分かったのは、スマホを1時間以上使うと、使った時間の長さに応じて成績が低下していることだった。さらに詳しく調べるために子供たちの追跡調査に取りかかる。個人情報を秘匿しつつ、すべての生徒に背番号をつけて生活習慣と学力の経年変化を調べることにしたのだ。これは確かに画期的な手法と言える。スマホの使用時間や家庭学習時間だけでなく、LINEやゲーム、テレビの視聴時間、睡眠時間なども合わせて調べた。

恐るべしLINE

 その結果、スマホを使用することで成績が下がり、止めると、成績が上がることが分かった。スマホと学力の関係が、経年変化で裏付けられたのだ。自宅での学習時間が同じの場合、スマホの使用時間が短い子の方が、成績が良かった。川島先生は「おそらく脳に何かの変化が生じ、学力低下が生じるのだと思います」と推理する。LINEについても深刻で、「全く使わない」グループの4教科の平均偏差値が50.8だったのに対し、2~3時間のグループは45.1、4時間以上のグループは40.6ということで大差がついた。

 もちろんテレビを長時間見るグループも成績が低下している。そこで、意外な結果も出た。「テレビを全く見ない」グループも成績が低下していること。こればなぜかといえば、実はテレビを見ない代わりにスマホにハマっている層だからだ。

 今や高校生の9割以上がスマホを持ち、東大生でも毎日4時間以上スマホを使う学生が13.8%、LINEを4時間以上が5.2%。「彼らの脳がスマホで低下してしまったら、日本の将来は大丈夫なんだろうか」と先生は憂える。そして、5年後にはスマホなどが学力低下させるメカニズムを、仮説ではなく、エビデンスで示すことができるようにしたい、と新たに着手した研究の見通しを語る。

「前頭前野」が働かなくなる

 本書で、へぇーと思ったのは、文章を書くとき、パソコンと手書きでは脳の働きが違うというくだりだ。手書きだと、字を思い出すために脳の中の「前頭前野」という部分がたくさん働くが、パソコンでは全く働かない。これはパソコンの場合、漢字を思いだし、それを文字として表現する行為が不要だからだ。キーボードでひらがなを叩いて出てきた漢字が正しいかどうかの判断をするだけ。ヒトの脳がやっていた行為を、IT装置が肩代わりしてくれる。思考の中枢である前頭前野が働かないということでは、ゲーム、テレビ、スマホにも共通するという。

 パソコンで書くようになって漢字を忘れた、という文筆関係者は多い。それには上記のような「脳」の働きが関係していることを知った。毎日、漢字の書き取りでもやった方がいいのかもしれない。

 本書では非常に多くのグラフが掲載されている。また海外の文献も参考資料としてまとめられている。ふだん川島先生は、忙しいこともあり、原稿を脱稿したらそれで終わり、ということが多いそうだが、今回は何度も編集者とやりとりを重ねた。「学術論文でも、ここまではやらないかも」と振り返っている。

 最後に、「示唆的な話」が紹介されている。ビル・ゲイツもスティ-ブ・ジョブズも、自分の子どもにはスマホをはじめとするデジタル機器を持たせていないそうだ。スマホが一般化してまだ10年足らず。眼への影響なども含め、長時間使用に伴う人体への影響については、まだまだ分からいことが多いということだけは間違いないだろう。

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