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「28歳」が現代女性のターニングポイントのわけ

働き女子が輝くために28歳までに身につけたいこと

 かつては「適齢期」という言葉が普通に使われていたり、〇〇の曲がり角として具体的な年齢を指したりと、女性にはターニングポイントがあることが暗黙の了解化していたものだ。時代の流れに応じてそれらは使われなくなったが、女性を取り巻く環境が様変わりした現代でもそれなりの転換点があるという。

 『働き女子が輝くために28歳までに身につけたいこと』(かんき出版)が訴える、女性がとりあえず目安とすべき年齢は、タイトルにある通り「28歳」。著者が自らの経験などから女性、その年齢までに、人生の基礎を学んでおくべきという。

結婚や出産などを選択

 著者は、東京都内にある私立の中高一貫校、品川女子学院の理事長・校長。同校は著者の曾祖母が1925年(大正14年)に創立し、仕事と家庭を両立できるビジョンを持った女性を育てることをミッションにしていることで知られる。だが同校は著者の父親が校長を務めていたころの一時期に少子化の影響で廃校危険リスト入り。立て直しが急務となったが、前後して、母親ががんであることが分かり、余命半年と宣告されたという。

 著者は当時、別の私立校の教壇に立っていたが、父親の「座して死を待つよりは...」という学校改革への決意を聞き、考え抜いた末に父親を助けることを決める。勤めていた学校をやめ品川女子学院に転任。このとき28歳だった。

 同校で教員として勤務する一方、学校改革にも参画。以降の7年の間に、偏差値を20ポイント以上アップさせるなどの成果を挙げ、入学希望者は60倍に跳ねあがったという。その後に校長に就任し、学校のミッションの推進ツールとして「28プロジェクト」を導入。28歳をゴールにして、それを目標にさまざま経験を積み重ね、同年齢のころを結婚や出産などを選択するターニングポイントとしてライフデザインをしようという学習指導だ。

寿命の3分の1を過ごしたころ

 女性の平均寿命は80代後半。日数にすると3万日ほどで、生まれてから約1万日を過ごした28歳のときは寿命の3分の1。「それまでが人生の基礎を学ぶステージだとすると、それを社会に還元するステージが28歳から始まるとも言える」と著者。50代半ばを迎え、自らの経験を合わせて、28歳を一生のうちの重要な転換点にすえたものだ。

 本書では、著者の経験のほか、学校に招いた講演者や卒業生、知人らの話など紹介し、それぞれを28歳を過ぎるとこんなことがある、あるいは、28歳までにはこんなことをしておいた方がいいという味付けのエッセイにしてまとめている。著者の経験談をぬきだしてみると、実家の学校への転任を境目に、それが母親の介護を伴うものでもあり、どれもが劇的で、28歳のときが著者には印象深いに違いないことが分かる。

 自らが校長になることが決まり、教育に加え経営を考えねばならなくなった。著者は「自分の軸がブレないようにするにはどうすればいいか」と考え続けるようになる。そして悟りが得られるかもしれないと瞑想を試し、富士山への登山を連日繰り返したほか、滝行にも挑んだほど。それらの結果発見できたことはなく、17~18年ほど迷ったすえに自分の役割がみえたという。

 信頼していた人からの裏切りに遭い、気持ちを抑えられなかったとき、友人から「よりプレッシャーの強い別の目標」を目指すことをアドバイスされ、なんと「トライアスロン世界選手権」にチャンレンジ。幸運にも制限時間10時間に達する1分前にゴールできた。この数年後には、生徒たち説いている「失敗を恐れず挑戦を...」という教えの手本となるため、アイアンマンレースへの出場を申し込んだという。

その後すぐに老眼、更年期障害...

 トライアスロンへの挑戦と前後して、著者は30代後半から老眼が始まる。また、下半身に肉が付きやすくなって中年太りを自覚。40代半ばで出産を経験する友人がいる一方、免疫力が衰えたのか風邪を引くと治りにくくなり、小さな病気が繰り返されるようになった。のちに更年期障害のせいとわかる症状が出はじめたのもこのころだった。こうした経験をした女性たちはしばしば「女性の体に起きることや、こういう未来が待っていることを、誰かが教えてくれていたら、もう少し計画的な人生設計ができたのに」というようなことを口にするという。若い女性らに将来、同じ後悔をしてほしくない思いもあり本書の出版となったものだ。

 「歳を重ねて得ることも少なくないと気付いた」と著者。「歳をとるにつれ、できないことが増えていく。しかし、それだけではなく、できることもまた増えていく。50歳を超えてから、それを実感している」。本書の後半では、こうした加齢をめぐってのテーマが並ぶ。「女性の体に、将来、起きること」「親との別れが来る前に、そして来たあとに」「いざというときのための、心と体の『ゆるめ方』」――など。

 28歳までに人生の基礎をしっかり学んで、その後にうかうかしていると、すぐに「プレ終活」ともいえる時期を迎えてしまう。

  • 書名 働き女子が輝くために28歳までに身につけたいこと
  • 監修・編集・著者名漆紫穂子 著
  • 出版社名かんき出版
  • 出版年月日2017年11月15日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数B6判・234ページ
  • ISBN9784761272968

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