読むべき本、見逃していない?

日本で発行、世界一の歴史を誇る美術雑誌とは?

  • 書名 國華 1469号
  • サブタイトル特輯 日本原始美術 縄文IV 土偶と土面
  • 監修・編集・著者名國華社 (著)
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2018年3月20日
  • 定価本体7000円+税
  • 判型・ページ数B4判・64ページ
  • ISBN9784022914699
BOOKウォッチ編集部コメント

 クイズです。この雑誌の名前は?――2018年に創刊130年目を迎えました。世界で最も長い歴史を持つ月刊美術雑誌です。欧米の有名な美術館はたいがい定期購入しています。日本で発行されています。しかし、ほとんどの日本人は見たことがありません。

 答えは「國華」(朝日新聞出版)。すぐに答えられる人は、かなりの美術通だ。「130周年」を記念した特別展が東京・上野の東京国立博物館で始まっている。「名作誕生――つながる日本美術」展だ。

試練に耐え抜いた力強さ

 会場に入ると、大きな仏像が林立している。国宝、重文だらけ。先ごろの「運慶展」並みの迫力だ。ちょっと違うところもある。「運慶」では見慣れた作品が多かった気がするが、こちらの仏像はあまり見る機会がない作品が多い。しかし、迫力は負けない。

 中でもパワーに満ちているのが、平安時代の薬師如来立像だ。関西の有名寺はあちこち回ったことがあるが、この作品は知らなかった。奈良・桜井市の笠という地区にあるものだそうだ。粗末な堂宇を転々とし、時には雨風にもさらされたのかもしれない。少し傷んでいるが、それが逆に試練に耐え抜いた力強さをうかがわせる。

 こうしたちょっと渋みのある作品だけではない。有名な「洛中洛外図屏風」(岩佐又兵衛)、「松林図屏風」(長谷川等伯)、「破墨山水図」(雪舟)など多数の国宝が展示されている。近年大人気の伊藤若冲についても「白鶴図」など4点が出ている。特に「仙人掌群鶏図襖」は長尺の立派なものだ。このほか尾形光琳、葛飾北斎、俵屋宗達、菱川師宣など盛りださんだ。

 「つながる」というタイトルでも分かるように、それぞれの作品の歴史的な背景にこだわっている。若冲と中国の元や明の時代の作品、雪舟と中国の元、南宋、明の時代の水墨画、平安文学と江戸期の作品の関係など丁寧にたどった展観となっている。

黒字になったことがない

 「國華」は1889(明治22)年に創刊された。中心になったのは岡倉天心だ。創刊号の巻頭文で「美術は國の精華なり」と宣言している。創刊号には初代帝室博物館総長の九鬼隆一や有名なフェノロサも書いている。

 当時最高の印刷技術を使うなど、金をかけて品質の高さを誇っていたこともあり、早々に経営危機に陥る。それを手助けしたのが、朝日新聞を創刊して間もない村山龍平と上野理一だった。二人とも、古美術に造詣が深く、後年は「数寄者」として知られた。村山家の収集物は「香雪美術館」に収められている。上野家のコレクションは京大や京都国立博物館に寄贈されている。雑誌は長く両家の支援で発行を続け、途中から朝日新聞社本体がサポートしている。

 現在は主幹以下10人の編輯委員のもとで発行を続けている。顧問も含め、日本美術の泰斗、専門家の集まりだ。「國華賞」も設けられ、日本・東洋の美術に関する卓越した研究に贈られている。

 すぐれた研究論文を載せる、名作を美しい図版で見せる、というのが「國華」の二本柱。最新号は「日本原始美術 縄文IV 土偶と土面」をテーマに、縄文時代の土偶総論を文化庁の原田昌幸氏が執筆し、多数の土偶類の写真が掲載されている。

 「國華」は創刊以来一度も黒字になったことがないという。今号も定価7000円。発行部数は1000部ぐらいらしい。だから一般の眼に触れる機会は少ない。しかしながら朝日新聞がサポートしているというのは、購読料の一部が回っているということでもある。新聞の購読者も無意識のうちに、日本美術の精華を連綿と伝える雑誌の刊行に協力しているということになる。朝日の購読者なら会場に足を運び、自らのドネーションの結果を確認すると、いちだんと気分がよくなること請け合いだ。

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