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同じアホなら...アウェ―感あってもやらにゃソン

祭りさんぽ

 4月末~5月初めのゴールデンウイークを過ぎると日本列島は祭りの季節。近年は、散歩ブームの後押しもあってか、どの催しもどっと見物客が押し寄せる。イラストレーターの上大岡トメさんと、上大岡さん率いる「ふくもの隊」によるイラストエッセイ集『祭りさんぽ』(藝術学舎)は、そのガイドにと出版された。「一生に一度は行きたい」祭り9つを訪ねて踊りや神輿担ぎを体験しイラスト化。上大岡さん独特のタッチで、アクションのキレや、山車や神輿の迫力がリアルに再現され、確かにコレは一度はみておきたいと思わせる。

踊って、神輿担いた体験をイラストエッセイに

 ピックアップされた9つの祭りは北から...青森ねぶた祭、山形花笠まつり、富山・おわら風の盆、東京・三社祭、広島・管絃祭、山口・裸坊祭、徳島・阿波おどり、高知・よさこい祭り、福岡・博多祇園山笠。

 「さんぽ」や「散歩」は、しばらく前からテレビやムックなどの書籍でトレンドになっている。いずれも街歩きなど、それほど広くはないエリアをめぐって、名所や名物的な飲食店を紹介する構成だ。祭りのガイド本もこれまでに数々あったが、少なくない開催場所を多数めぐって実際に参加したうえ、それらをイラストエッセイにして、一つの書籍にまとめたのは初の試みではなかろうか。踊り、掛け声、山車などの違いもビビッドに分かって興味深い。

 本書で「トメさん」は、参加できる祭りには積極的に参加する。まずその一つは、青森ねぶた祭。青森県内では、青森市のねぶた祭をはじめ、夏の季節には各地でねぶた祭、あるいは、ねぷた祭が行われるが、市民が踊り手として参加する「ハネト(跳人)」がいるのは青森市だけという。トメさんは貸し衣装を予約して現地に赴き着付けをしてもらい花笠をかぶり鈴を腰つけるフル装備にヘンシン。いざ参戦...となった際には「アウェー感満載」でややシオシオになったものの、踊りの群れに入ってケンケンを踏むうち「すごい解放感」で満たされることに。

 四国へ飛んで、徳島・阿波おどりでも現場に参戦。「女踊り」の衣装をまとい、だれでも踊れる「にわか連」ではなく「本家大名連」に加わる。見ているだけでは分からないゲタの高さをイラストで紹介。油断するとすべってひっくり返りそうになるという。なるほど、ゲタなのにつま先立ちで踊るわけが分かる...。

 東京・浅草神社の三社祭では神輿担ぎに挑戦。トメさんは、和気あいあいのなか、秩序だって担ぎ棒を譲り合うことを想像してのぞんだのだが...。実際は、担ぎ棒は奪い合いで、中に割って入ることができても上下に振られるだけ。圧死するのではないかという危機感から、人の流に逆らってなんとか脱出しヘロヘロになっていた。そのあとで振る舞われたビールをごくごくと流し込む様子に、見ている方もホッとする。

 もちろん「体験ルポ」だけではなく、各祭りの歴史や由来、土地の名物料理などの紹介のほか、それぞれに「10倍楽しむ情報」をプラス。ビジュアルとテキスト情報で立体的に、しかも臨場感を感じながら祭りを味わえるナイスな企画本。知らなかった祭りにも親しみがわく。

  • 書名 祭りさんぽ
  • 監修・編集・著者名上大岡トメ+ふくもの隊
  • 出版社名藝術学舎
  • 出版年月日2017年5月31日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数A5判・142ページ
  • ISBN9784344953222
 

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