読むべき本、見逃していない?

富裕層がますます富裕になる理由

  • 書名 プライベートバンカー驚異の資産運用砲
  • 監修・編集・著者名杉山智一 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年3月15日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書・186ページ
  • ISBN9784062884679

 マンションなどの不動産販売では「富裕層向け」などとという物件がある。IT長者が現われはじめたころからだろうか、いまや「富裕層」という言葉もすっかり定着した。半端ではない資産を持つ人たちのことを指すものだが、そうしたお金もちだけを顧客に、運用の手伝いをするのがプライベートバンカーだ。

 本書『プライベートバンカー 驚異の資産運用砲』(講談社)は、日本では数少ないプライベートバンカーの一人である著者が初めて、その仕事の内幕や運用テクニックを明かしたもの。それによると富裕層の運用の舞台は海外であり、日本では多くを望めないからという。著者は今後も国内での運用については悲観的だ。

自ら筆をとった主人公

 「プライベートバンカー」を世に広める後押しをしたのは、2年前に出版された清武英利さんのノンフィクション「プライベートバンカー カネ守りと新富裕層」(講談社)だという。本書の著者、杉山智一さんは、同作品に「海外で活躍する凄腕バンカー」である主人公として実名で登場。出版後に数々の反響が寄せられ、その多くが、仕事の内容や運用についてもっと知りたいというものだったことから、初めて自ら筆をとることにしたという。

 「富裕層」について厳密な定義はない。著者によると、金融資産の合計額から負債を差し引いたものが純金融資産の額が1億円以上の人。「日本の場合なら、年収にして2000万~3000万以上を稼ぐ人を指すことが多いのは確かだ」といい、著者の顧客はこうした人たちに限定される。国際的にみた「富裕層」は「純金融資産100万ドル以上」とされ、スイスの銀行の2016年版レポートによると、日本には282万6000人がおり、米国(1355万4000人)に次いで、世界2位の規模。

 著者は数年前からは独立したプライベートバンカーとして富裕層を顧客に、その資産の運用・管理に当たっている。それまでは国内外で数々の金融機関をめぐって転職を重ねキャリアアップを図り、経験を積みスキルを磨いてきたものだ。

 1992年に大学卒業して野村証券に入社。同社で株式投資をしてくれそうな「富裕層」を見つける嗅覚を身に着けた。2005年に三井住友銀行に転職。顧客の資産運用などを担当したが「銀行の仕事は証券より『ラク』」とつくづく思ったという。なにしろ野村証券では「顧客の資金を『狩りに行く』」と称して、獲物を目指した「狩猟民族」として過ごす毎日だったが、銀行では「企業という畑に融資という名の種をまきをし、その会社が大きく成長したところで実りを得る」という「農耕民族」のような業務だったからだ。

証券マンから銀行マン、そして...

 証券会社で顧客の懐に入って付き合うことが仕事だった著者は、一生の仕事として担当した顧客の役に立ちたいと考えるようになる。その点、銀行は証券会社よりも自分には向いていた。証券会社では、株購入を顧客に勧めても「金がない」といわれればそれまでだったが、銀行では自行に口座があれば預かり資産の調べは容易で、定期預金を投資信託に回してもらう際などにも書面に署名捺印をもらえば買い付けができるなどの「アドバンテージ」があったものだ。

 証券マン時代に培ったトークなどの営業センスで著者は銀行マン時代に多くの顧客を獲得。「自分のなかにプライベートバンカーの資質があると気付いた最初に時期だった」と振り返る。だが三井住友はメガバンク。メーンの業務は法人融資であり、個人相手のリテールには力が入っていなかった。そしてもたらされたのが、仏メガバンクの日本部門からのヘッドハンティングの話。これに乗りプライベートバンカーとして船出。07年のことで、三井住友に籍を置いたのは2年足らずだった。

 三井住友で担当した「富裕層」の顧客は150人ほどおり、転職に際し根回しして、このうち15人、金額にして合計35億円を転職先に引っ張ってくることに成功。最終的に35人が著者の提案に応じてついてきてくれたという。これだけの数の富裕層顧客が自分を信頼して資産を移してくれたことに感激した著者は「プライベートバンカーにしか味わえないやりがいをさらに再確認することができた」。その後、リーマン・ショックなどでブレーキがかかったものの、情熱は衰えることなく、日本国内での運用に限界を感じシンガポールにその場を求めることになる。

 シンガポールでは、日本国内ではできない、いわゆる「レバレッジを効かせた運用」が可能。元手の何倍かの金額での投資をして配当を得られる環境がある。清武さんの作品を受けてリクエストが多かった運用法紹介では、プライベートバンカーを使えばこうできる、として独自に考えた「スギヤマスペシャル」を丁寧に説明している。

 著者のキャリアアップの過程、証券会社と銀行を内部から見た比較のコントラストのほか、各金融機関での顧客とのやりとりの再現や、ヘッドハンティングをめぐっての、当事者ならではのなまなましさなど、ノンフィクションとしても読みごたえがある。

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