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中邑真輔、米国修行で「何でも見てやろう」

  • 書名 SHINSUKE NAKAMURA USA DAYS
  • 監修・編集・著者名中邑真輔
  • 出版社名イースト・プレス
  • 出版年月日2017年9月 7日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数B6判・218ページ
  • ISBN9784781615530
BOOKウォッチ編集部コメント

 1990年代の初めのバブル崩壊期を経てIT時代を迎え、どんどんと度合を強めているのは「若者の○○離れ」。ネットワーク化、バーチャル時代の副作用か、行かなくても行った気になれるようになれることから「海外旅行離れ」「留学離れ」は特に顕著という。お金や言葉の壁の問題もあるらしい。

 バブルのころには書店で目立っていた「留学案内」ムックや「海外生活体験」書籍もいまは希少なカテゴリーのようだが、その中で異彩を放っていたのが、本書『USA DAYS(ユーエスエーデイズ)』(イースト・プレス)だ。旅行や留学のためのものではないが、予算や英語のことさておき、とりあえずは飛び出してみようかという気にさせてくれる。

プロレスラーのアメリカ滞在記

 著者の中邑真輔さんはプロレスラー。本書の表紙には、米国で撮影したと思われる著者の写真を背景に書名がアルファベットで、著者の名前がアルファベットと漢字でレイアウトされ、プロレス、プロレスラーを思わせる言葉やイメージはない。わずかに米国プロレス団体のロゴマークが添えられているが、ひと目にはアーチストか何かの「米国体験記」にみえる。

 中邑さんは2016年1月、それまで13年間在籍していた新日本プロレスを離れて米団体のWWE(World Wrestling Entertainment)に移籍。住まいも同国に移して、フロリダ州オーランドに居を構えている。本書は、根強いプロレス人気が維持されている、本場米国でのレスラーとしての体験ばかりではなく、市民としての米国での日常も詳しく述べられ、バーチャル体験では得られない「なんでもみてやろう」的な、米国アドベンチャー記でもある。プロレスに興味などなくても、米国旅行や留学、生活することを考えている人にも本書は参考になりそうだ。

 著者が暮らすオーランドは日本人には旅行するにも生活するにもおススメのようだ。そのココロはというと「テーマパーク銀座」だから。「アメリカの代表的な都市はニューヨークですけど、フロリダも一大観光都市で、中でもオーランドはテーマパークに事欠かない街」という。

 「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」「ユニバーサル・オーランド・リゾート」「ケネディ宇宙センター」「シーワールド・オーランド」のほか、小規模なものはまだまだあるそうだ。オーランドの街の様子を説明するパートではワニが水辺で「日向ぼっこ」をする様子の写真が添えられている。これも同地の日常という。

 米国各地の都市では、中国人、韓国人が大規模なコミュニティーを構成して互助会的な機能を果たしているが、それらと比べると、日本人によるコミュニティーはサイズも活動規模も下回る。それでも、え!? こんなところにも!? というような小さな街にも「日本人会」があったりしてほっとすることがある。著者はオーランドで、直接のかかわりはなかったものの、その存在は知っており「そこから得られる、こっちで生活する上での情報というのはありがたかったりしますね」と述べている。

英語は「ぶっちゃけ意味が通じればいい」

 著者はレスラーとして米国内各地を転戦する毎日。体験記はオーランドにとどまらない。そのパートの一つを成すのは「ラ―メン探訪」。職業が職業だけに「メシ」のはなしは多くなる。日本食がもてはやされている米国では「Sushi」や「すし」などの看板を掲げながら、提供される品々が看板のものとは異なる店が少なからずある。著者も米国内でのラーメン屋探しで、その類の経験があるらしく「見た目が怪しかったりすると『これじゃないよ』ってなる確率が高いから行かないようにしています」。そうした用心深さがアンテナの感度を上げ、インディアナポリスで北海道から直送の味噌ラーメンを味わえるという「思ってもみなかった」体験もできたものだ。

 米国の日本食事情についてはほかに、シアトルの寿司激戦区ぶり、西海岸に点在する牛丼屋案内も。米国のプロレスラーの間では日本の食べ物はあこがれだそうで、こちらへの遠征は「夢の国」への旅とも考えられておりテンションの高まりは相当という。

 米国を旅する、米国で暮らすとなれば、ほとんどの人の最大関心事は英語だろうが、著者は「ぶっちゃけ意味が通じればいい」というのが生活の実感という。相手が自分の言うことを分からなければ「もう1回言って」と聞きなおしてくれるし、自分が分からない単語に接したときは「それはなんていう意味?って聞けば分かること」なのだ。

 「英語が拙いからという理由で海外に苦手意識を持つ日本人も少なからずいると思いますけど、そんなのは時間の問題だし、発音がネイティブじゃないからといってまったく気にすることはないんですよね、じつは」

 このあたりではとくに、本書とはまったく異なるものだが、のちに作家、政治運動家となった小田実さんが1959年に出発した世界旅行について書いた体験記で、当時ベストセラーになった「何でもみてやろう」を連想させた。同書には、まったく英語ができない小田さんが難関とされる「フルブライト留学試験」に挑戦するくだりがある。わからなくてもどうにかなる、と臨んで合格を勝ち取ったという。こうした無鉄砲さも受けて、当時、この本に触発された多くの若者が海外に出かけるようになったといわれる。中邑さんはおそらく、意識せざる「何でも見てやろう・チルドレン」なのだろう。

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