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「日大アメフト」...著者の卓見が立証された

  • 書名 スキャンダル除染請負人
  • 監修・編集・著者名田中優介(著)、田中辰巳(監修)
  • 出版社名プレジデント社
  • 出版年月日2018年6月14日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・300ページ
  • ISBN9784833422697
BOOKウォッチ編集部コメント

 父子鷹で生まれた意欲作である。本書『スキャンダル除染請負人』(プレジデント社)監修役の田中辰巳氏は1985年にリクルートの広報課長に就き、政財界を揺るがす「リクルート事件」に巻き込まれる。トップが震源となり、会社の存続にかかわりかねない疑獄事件に向き合い、厳しい取材攻勢にもまれるなかで危機管理の重要さを痛感した。

主人公は女性の元キャリア警官

 97年にコンサルティング会社を立ち上げた。前後して証券会社や銀行による総会屋への利益供与事件が発覚。さらに東芝によるクレーマー事件、雪印乳業の集団食中毒、三菱自動車のリコール隠しと危機管理のプロを必要とする企業スキャンダルが相次ぐ。

 ともすれば、事実の公表から逃げたがる会社のトップを叱咤し、いまはやりの「忖度」から真相を上部にあげたがらない中間管理職を説き伏せ、動揺する広報部門に会社を守る重要な役割を認識させ、それぞれ行動に移させる。黒衣として困難な仕事に取り組んできた。

 4年前に子息の優介氏が父親の後継として入社し、すでに代表取締役を継いでいる。積みあがったノウハウをどうやって承継するのか、思わぬ形で成果の一端を見せてくれた。それがこの小説である。

 主人公は、将来は女性警視総監の第一号とまで嘱望された腕利きの元警察キャリア。訳あって退官し、危機管理コンサル会社のチーフコンサルタントに転身した美貌の女性である。

 彼女が遭遇する事件は、企業トップの不倫、自動ブレーキの誤作動、退職した社員による内部告発など、多岐にわたる。起きたことをもみ消すことなどできない。とはいえ、どうやって依頼者が被る損害を最小に抑えるか。そのための数々の対応策がフィクションの形で提供されている。

編集者からダメ出しの山

 一章を割いて主人公が学生時代に遭遇したストーカー事件を取り上げ、彼女の人物像をさりげなく伝えるなど、読み手を意識した書きぶりは、これが「処女作」とは思わせない。

 著者は優介氏となっているが、これには説明が要る。辰巳氏によれば、10年ほど前に小説化を思いつき、いくつかを書き上げたが、知り合いの編集者に見せたところダメ出しの山。再挑戦ではまず小説好きの優介氏に見せたものの、天から神様が見ているような「神視点で、説明調だから面白くない。素人が書く典型的な悪い書き方」と散々の言われよう。「なら、お前が書いてみろ」と自らは原案の出し手に徹することになり、今回の共作になったという。

 主人公が警察のコネを生かし、ここぞという時に重要な情報や協力を得るなど、まだまだ状況設定が甘い部分は残るものの、主人公が警察OBから脱皮し、危機管理コンサルとして自立していく過程を第2作で楽しみたい。

 辰巳氏は「日本における危機管理は、いとも簡単であると同時に極めて難しい」と語っている。的確に対応し、誠実な謝罪をすれば嘘のように許されるどころか人気が高まることもある。逆に逃げ隠れしたり、謝罪が足りなかったりすると徹底的に叩かれる。初動と覚悟が極めて重要ということである。本書にもその例がいくつも紹介されているが、それよりも危険タックルをした日大アメフトの選手と監督・コーチへの世間の評価が辰巳氏の卓見を立証している。

BOOKウォッチ編集部 コポガバ)

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