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やっと本当の観光地になった熱海...再生できたワケ

  • 書名 熱海の奇跡
  • サブタイトルいかにして活気を取り戻したのか
  • 監修・編集・著者名市来 広一郎 著
  • 出版社名東洋経済新報社
  • 出版年月日2018年6月 1日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数B6判・221ページ
  • ISBN9784492503010
BOOKウォッチ編集部コメント

 伊豆半島の付け根の東部にある静岡県熱海市は、有数の温泉地として知られるが、近年に注目度が高まっているのは、再生ぶりの見事さからだろう。1990年代の、いわゆるバブル崩壊後からしばらくは見る影もなくなっていたが、2010年代半ばには客足が戻りはじめ、そのV字回復はメディアでもしばしば取り上げられている。

 本書『熱海の奇跡』(東洋経済新報社)は、コンサルティング会社勤務を経て、生まれ故郷の熱海で街づくりの企業を立ち上げた著者が、街再生の軌跡をつづったもの。ビジネスの手法を用いた「民間主導」による街づくりが、成功のカギだったいう。

バブル崩壊、宿泊客数半減

 ビーチ沿いにホテルや旅館が立ち並ぶ風景は「東洋のナポリ」と評されたこともあるが、バブル崩壊後には、偉容を誇った建物群のなかに営業をやめたものが目立つようになり、街全体を廃墟のムードが覆っていた。かつては、別荘地、新婚旅行の聖地、企業の慰安旅行のメッカなど、さまざまに顔を変えながらにぎわいが絶えなかったものだが、その面影など感じられない衰退ぶりだった。

 熱海の宿泊客数は1960年代半ばには530万人あったが、2011年には246万人と半減。しかし、著者らの働きの効果もあって15年には308万人と、短期間に20%以上も急増。V字回復が取りざたされるようになったものだ。著者によれば、その原動力になったものは「ビジネスの手法を用いて街を活性化させること」。具体的には「税金に頼るのではなく、自ら稼ぎ、街に再投資し事業を生み育てることで、街に外貨を呼び込んだり、経済循環を生み出すことを目指す事業」という。

 バブル崩壊前までの、温泉地・熱海のビジネスモデルといえば、企業の慰安旅行など団体客を相手にしたもの。その行程といえば、熱海に到着すればそのまま旅館に運ばれ入浴、食事・宴会などで過ごし、なかには夜に街を散策して娯楽施設を利用するものもあるが、一晩過ごして朝食をとって帰路にというパターンだ。せっかく来たのだから観光をと思って、旅館で、あるいは土産物店で、名所を尋ねてみても「何もない」というのが、おきまりの答え。あきれた観光客が、観光協会にクレームをいれてきたほどだ。バブル崩壊後に経済が回復して、旅行などのレジャーは個人のテイストを重視したものがトレンドになってからも、熱海はそれから取り残された存在になっていた。

地元の人が知らなかった観光資源

 著者らはまず、地元の人たちに熱海を知ってもらうことから取り組みをスタート。街で一番の繁華街ながら、シャッターを下ろしたままの店が増えていた「熱海銀座」を拠点にして、忘れられていた観光資源の発掘などに努める。そのなかで、88歳の名物マスターがいる路地裏の喫茶店、90代のお母さんがやっているジャズ喫茶などが注目されるようになり、数々のメディアで紹介もされている。また、かつて遊郭だった建物があるなど、長くブームが続いている「昭和」を楽しめる街並みは、実は格好の観光アトラクションであることが地元で再認識されるようになった。

 地元では根強い反対があったイベントを、説得を続けながら回を重ねて賑いが拡大し、街の構造改革に消極的だった人たちの態度にも変化がみられ、自ら稼ぐことに対する理解が広まってきた手応えを感じているという。

 バブル崩壊後の2000年代にはネット上で「熱海のサービスはひどい」という書き込みにあふれ、宿泊施設ばかりかタクシーの接客態度がよくないという評判が多かった。いまは、ホテルや旅館も団体客相手から家族、グループらを顧客にした、サービスに重点を置く宿泊施設への転換が進んでいる。リゾート地として再生した熱海をけん引する著者らは、さらに自立をすすめ、全国各地の街の手本になることを目指すという。

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