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すべての「強制」から解放されよ! アナキスト列伝

  • 書名 何ものにも縛られないための政治学
  • サブタイトル権力の脱構成
  • 監修・編集・著者名栗原康 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2018年7月20日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・366ページ
  • ISBN9784041061251

 「政治学」という硬いタイトルがついているけれど、アナキズムの理論、歴史を講談のようなテンポいい語り口で書いたのが本書『何ものにも縛られないための政治学』(株式会社KADOKAWA)だ。

 「何ものにも縛られない」とは、カネにも、人間関係にも、国家にも縛られないということだ。そんなことができるのか。多くのアナキストの生涯を紹介しつつ、社会による「強制」の理屈に「ノン」を突きつける。

 著者の栗原康さんは東北芸術工科大学非常勤講師のアナキズム研究者。『大杉栄伝 永遠のアナキズム』、『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』などの著書で注目されている。日本の窃盗団を描いたマンガ『ギャングース』(講談社)の話から、19世紀ドイツのアナキスト、マックス・シュティルナーへと飛び、彼が分析した自由主義の3つのタイプを紹介する。

 ○政治的自由主義......カネによる支配 ○社会的自由主義......社会による支配 ○人道的自由主義......人間的なものによる支配。シュティルナーは新しい体制をつくっても縛られるばかりだとして、これらの自由主義を否定すると、栗原さんは説明する。そして「クソしてねやがれ、それが不法占拠の精神だ」とアジる。

 1970、80年代にドイツ、イタリアの若者の間で「スクウォティング」といって、空きビルを不法占拠して共同生活することが流行した。ところが90年代になると「アートだ、クリエイティブだ」とこれらの若者をビジネスに取り込む資本の動きが出てきた。栗原さんはこうした観点から日本でも見られる地域アートを批判する。「アーティストがはいって街を活性化させようとしているわけだが、これ慈善事業っぽいし、文化的なよそおいをしているんだけれども、やっていることは排除だっていうのはわかるだろうか」と大阪・釜ヶ崎の例をひきあいに書いている。この指摘は新鮮だ。

 本書はさらに、フランスのブランキ、ルイズ・ミシェルを紹介しつつパリ・コミューンとその敗北、ロシアのアナキストとレーニンらがひきいるボルシェビキとの革命をめぐる対立について記述し、「革命とは魔界転生である なんどでも、なんどでも化けてみやがれ」と締めくくる。

 歴史研究を踏まえた上で、ときにそこから逸脱しそうな著書の伝法な書きっぷりが魅力だ。かつての平岡正明を思い起こさせるが、その平岡からの引用もある。

 日本のアナキスト、アナキズムというと大逆事件で虐殺された大杉栄のイメージが強すぎて長く思考停止状態だったというのが正直なところではなかっただろうか。それらの伝記的研究を背景に「政治学」のレベルまで検討を加えた本である。    

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