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年に6日しか売り出されない特製羊羹がある

日本百銘菓

 類書は多数あるだろうが、本書『日本百銘菓』(NHK出版新書)はなかなかよくできていると思う。まずサイズが新書なので持ち運びに便利。オールカラーなので、お菓子の姿を確かめやすい。写真が美しくて見ているだけで食べたくなる。そして何よりも適切・妥当な選定がされている。

「全国お土産銘菓通選手権」で見事優勝

 著者の中尾隆之さんは1942年生まれ。旅行作家で、土産銘菓研究家だという。出版社勤めの後、旅をテーマに取材執筆するようになって40年になる。年に100日余り、一回2~3泊で各地を回ってきた。全国の市町村のほとんどに足を踏み入れ、JRも9割ほどは乗ったという。無類の甘党なので、この間に食べた和菓子は5000種近くになる。

 そうした中からえりすぐったのが本書の100点だ。やみくもに過去の記憶をたぐったのではない。「歴史・風土など地域性がある」「老舗ならではの風格・品格がある」「日保ちが3~4日ある」「個包装で風味と清潔感が保全されている」など7項目の基準をもとにしている。「TVチャンピオン」の「全国お土産銘菓通選手権」で見事優勝したこともあり、選定眼は折り紙つきだ。

 単に県ごとに銘菓を並べたのでは面白くない。ということで、本書では「死ぬまでに食べたい絶品銘菓15」「知る人ぞ知る実力派銘菓10」「本当は教えたくない我が偏愛銘菓10」などいくつかの章に分けて紹介されている。自分はある程度詳しいと自負している人も、思いがけない銘菓を発見して楽しむことができる。

 年に6日しか売り出されない特製羊羹や、支店がない店など、こだわりの逸品や名店が紹介されている。

「迷わず選びたい出張土産10」はコレ

 和菓子というのはなかなか面倒だ。どれを選ぶか、お土産にするときは迷ってしまう。いただいたときは、それがどれくらいすごいのか、わからないと返礼にも困る。銘菓についての基礎知識がないと、常識に欠けた人間のように思われかねないのだ。食べるのも買うのも贈るのにも苦労する。

 ちなみに、「迷わず選びたい出張土産10」では「博多通りもん(福岡県福岡市・明月堂)」「山田屋まんじゅう(愛媛県松山市・山田屋)」「もみじまんじゅう(広島県廿日市市・藤い屋)」「百楽(大阪府大阪市・鶴屋八幡)」「阿闍梨餅(京都府京都市・満月)」「ゆかり(愛知県東海市・坂角総本舗)」「きんつば(石川県金沢市・中田屋)」「東京ばな奈『見ぃつけたっ』(東京都杉並区・グレープストーン)」「萩の月(宮城県仙台市・菓匠三全)」「白い恋人(北海道札幌市・石屋製菓)」の名が挙がっている。大方の読者におなじみの「定番」の名前が多い。このあたりを入り口に、「銘菓」の奥深い世界を探索してみてはいかがだろう。

  • 書名 日本百銘菓
  • 監修・編集・著者名中尾 隆之 著
  • 出版社名NHK出版
  • 出版年月日2018年7月 6日
  • 定価本体1000円+税
  • 判型・ページ数新書・224ページ
  • ISBN9784140885550
 

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