読むべき本、見逃していない?

広島カープが強くなったのはコレのおかげだった

  • 書名 プロ野球と鉄道
  • サブタイトル新幹線開業で大きく変わったプロ野球
  • 監修・編集・著者名田中 正恭 著
  • 出版社名交通新聞社
  • 出版年月日2018年2月15日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書・255ページ
  • ISBN9784330863184
BOOKウォッチ編集部コメント

 プロ野球は10月にはいよいよポストシーズンの戦いが始まる。セ・リーグは広島が早々とマジックを点灯、パ・リーグは西武が快走中だ。西武の前身は、やはり鉄道会社の西鉄だったように、プロ野球は古くから鉄道と深い関係を持っている。ところが、意外なことに、球団史で鉄道会社とのかかわりなどなかった広島が、鉄道と最も密接な関係を持ち続けているという。

マツダスタジアム左翼後方の新幹線が象徴

 広島は2009年のシーズンからMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島を本拠地にしている。かつての東広島貨物駅の跡地に建設されたもので、それまでの広島市民球場より広島駅に近く、左翼外野席の向こうに山陽新幹線の列車が走るのが見える。以前は、新幹線との組み合わせではナゴヤ球場が知られていたが、いまは野球場と新幹線といえば、このマツダスタジアムの風景がおなじみだ。広島の鉄道との縁を象徴するビジュアルともいえそうだ。

 『プロ野球と鉄道』(交通新聞社)は、プロ野球のこれまでの成長が鉄道の発達を抜きには語れないことを示したプロ野球史外伝。7章建てのうちの1章を割いて「広島東洋カープと鉄道との密接な関係」が詳述されている。

 マツダスタジアムの左翼席後方に新幹線の列車が見えることを、チームと鉄道の関係の象徴と述べたが、まず、広島が球団創設以来の初めてのリーグ優勝を果たしたのが、山陽新幹線が博多まで全通した1975年(昭和50年)のことだった。

3等車の通路に新聞紙敷いて...

 この全線開業から40周年を迎えた2015年3月、広島駅で記念式典が行われ、広島初優勝時の監督だった古葉竹識さんのほか当時のナインらが参加。本書で引用されている報道によると、エースだった外木場義郎さんは式典で「カープの優勝は山陽新幹線のおかげだと思っています。これがなかったら、優勝できなかったんじゃないか、それぐらい楽になりました」と語ったものだ。

 広島の創設は、プロ野球が2リーグ制になった1950年(昭和25年)。設立当初の東京や名古屋、兵庫の甲子園に遠征するのは大変なことだった。長距離列車はかつて1~3等のクラス分けがあり、巨人など資金に余裕がある球団は1等車あるいは2等車を利用していたが、資金難の広島の移動は3等車。しかも、超満員なことが多く選手らは通路に新聞紙を敷いて座るなどして遠征先に向かったという。またリーグ6球団のなかで広島だけが遠隔地にあり、移動の際は、今からは信じられないような劣悪な環境だったようだ。

 元監督の古葉さんは著者のインタビューに答えて、現役時代には、ナイターを終えてユニホームのまま駅に直行し夜行列車に飛び乗ることもあったことを明かしている。

ダブルヘッダーが減少

 東海道新幹線の開業は1964年(昭和39年)10月1日。プロ野球各チームが遠征の移動で利用するようになるのは翌65年からだが、その年から巨人の9連覇が始まる。新大阪以西の山陽新幹線は72年に岡山まで部分開業。広島球団の遠征も、設立当初のころと比べるとラクにはなっていたが、関東や関西圏のチームと比べると便がいいといえる状況ではなかった。

 その当時の遠征となると、広島から在来線で岡山に行き新幹線に乗り継ぐか、夜行列車を利用するか。航空便もあったが便数も定員も限られていた。岡山乗り換えの新幹線「ひかり」で新大阪まで約3時間半、名古屋まで約4時間40分、東京までは約6時間40分かかった。それが博多までの開通が成ると、乗り換えが不要になり、それぞれ1時間56分、3時間5分、5時間8分に短縮された。

 移動時間の短縮で移動日の必要がなくなり、移動日を設けるためにしばしば組まれていたダブルヘッダーが減少。そのため、疲労度を心配しなくてよくなり、肉体的にも精神的にも負担が軽減された。それは、外木場さんが「優勝は山陽新幹線のおかげ」と思い返すほどプレーに良い影響があったのだ。

野球と鉄道、同じ年に日本に伝来

 著者の田中正恭さんは、国内鉄道全線走破のほか海外27か国を鉄道で旅行し、鉄道を中心として執筆活動を行っている。熱心なプロ野球ファンでもあり、鉄道会社が親会社だった、かつての阪急ブレーブスを熱烈に応援していたという。新橋―横浜間に鉄道が開通した1872年(明治5年)に、米国人教師が日本人に初めて野球を教えたと伝えられており、鉄道と野球が同じ年に日本に伝来したことを知り、そのかかわりを掘り下げ、本書にまとめた。

 パ・リーグではかつて6球団中4球団が鉄道会社を親会社にもっていた時代もあったほど、プロ野球は鉄道と縁が深い。セ・リーグでも、現在もある阪神のほか、JRの前身である国鉄が球団を持っていたこともあった。現在の阪神と西武、それに国鉄を合わせると、プロ野球にはこれまで計8社の鉄道会社が資本参加した歴史がある。

 広島はいまではすっかり強豪チームとなり、鉄道とのかかわりも様変わり。かつては、鉄道の進化で増した利便性に依存してチームが強化されたが、JR西日本広島支社や地元の広島電鉄との関係を深め、ラッピング車両の運行や記念乗車券、コラボICカードなど、鉄道系の球団に勝るとも劣らないような連携ぶりで地元を盛り上げている。

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